表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/24

ざ・らいとすたっふ(3)

 大規模オンラインRPG〈エルダー・テイル〉日本サーバー最大の戦闘系ギルド、〈D.D.D〉。

 大災害直後の混乱時に多くの中小ギルドを吸収し、現在ではその構成人数は1500名を超える、アキバの街でも随一の戦闘系ギルド。

 現在ではギルドマスターのクラスティが〈円卓会議〉の議長を務めていることもあり、アキバの街の住人達にとっても身近な存在となりつつある。

 だがゲーム時代、大規模コンテンツを半独占に近い状況でクリアしていたその戦闘能力と組織力、それを支えるきわめて高い情報管理能力は健在であり、昔から〈エルダー・テイル〉をプレイしているプレイヤー達にとっては依然、畏怖の対象であることに変わりはない。


 そんな、ゲーム時代に〈D.D.D〉を畏怖の象徴とたらしめたギルドの中核メンバー達は、この大災害後の〈セルデシア〉の大地に於いても人知れず暗躍していた。


「ザ・ライトスタッフ」


 これは、外部に漏れることの非常に少ない、そんな彼らの貴重な資料映像である。

 大分話は最初と変わってきたものの、私達は現在夕暮れが差し迫るザントリーフ半島の山間部にて、眼下の渓谷に展開する〈緑子鬼の将軍〉(ゴブリン・ジェネラル)の率いる中規模軍隊に対する殲滅作戦のブリーフィングを継続中だ。


「近くに〈大地人〉の集落があるっていうんだったら、どっちにしても頭だけ落として、ゴブリン達がばらけちゃったんじゃあ危険なのは変わらないじゃん? まあ、将軍が〈レイド〉ランク、側近が〈パーティー〉ランクだとしても、所詮はレベル60前後な訳だし、半数以上は40以下の一般モンスター。一人50匹倒せば良いんだから、完全に囲まれちゃったりしなければイケルと思うんだよね。山ちゃん参謀、そこんとこどう?」


「うふふふ、たのしい。何せ久々ですからね、先輩と一緒にパーティーで行動なんて。無茶な行動は相変わらずですけど、やっぱりこれがないと面白くないですよね。やはりここは上手く話をまとめてもう一度うちに復帰してもらう算段を進めなくちゃいけませんね。ふふふ」


 山ちゃん、おまえもか。


 おでこに「ずびし!」とチョップ一閃。


「あいたっ」


「で、山ちゃん参謀、そこんとこどう?」


 私は冷静(な筈)な真面目っ子(だった筈)かつ、〈D.D.D〉の戦域哨戒(フィールドモニター)班の統括を一手に担う(多分)優秀な後輩に戦力の詳細な分析を促す。


「はっ! すみません! ゴブリンの軍団の数は300匹強。レベル構成から考えると、適性70レベル弱の〈中規模戦闘〉(フルレイド)規模と予想されます。比べて私達は1パーティーのみとはいえ全員が90レベル以上で、ギルド内でも戦闘能力的には高位のメンバーです。性格的にはアレですが。勝算は十分あるかと思います」


〈中規模戦闘〉(フルレイド)に1パーティーで〈突貫〉とか実際萌えるもとい燃えるでゴザルな!」


「逝けます! 全俺会議も肯定多数、むしろ満場一致で大勝利ですから! むしろピンチ発生の吊り橋効果でムフフとか嬉しい議題の提示すら!」


「歓喜に震えるのは解るが今はまだ大人しくしていろ、俺の右腕! あと少しだ。少し待てば嫌ってほど開放してやるぜ・・・」


「厨二妄想MAJIDE!?」


 さすが〈D.D.D〉の古参メンバー、怖じけるどころかノリノリのやる気まんまんである。

 性格がアレで、言っていることが一部イマイチ意味不明ではあるが。


「問題点は2つ、一つは長時間の戦闘後に最後に控えるのがレイドレベルの将軍とその取り巻きであるという事。どれだけ消耗していない状態でそこまで辿りつけるかどうかが鍵になると愚考します」


 確かに。通常〈レイド〉ランクのモンスターといえば、同レベルの〈冒険者〉24人(フルレイド)規模で挑む相手。今回の場合、将軍のレベルは62と私達とのレベル差が30近くあることと、メンバーが〈秘伝〉持っててあたりまえ、装備にしても(幻想級)がちらほらなんていう廃集団なので、十分すぎるほど勝機はあるとは思うのだが、それもコンディション次第だ。

 将軍にたどり着くまでにボロボロの状態になってしまっていては、勝てるものも勝てなくなってしまう。


「もう一つは戦域哨戒が出来ないという事。戦闘の経過によってはターゲットであるゴブリン将軍が、仲間を見捨てて逃亡する可能性がありますが、戦闘行動を行なっている最中では、それを補足するのが困難です。高レベルではなくて構わないのですが、せめてもう1パーティー同行していれば戦場の監視ができるのですが、その人手が・・・」


 そう言いながら、山ちゃんは狙撃用の妖精軟膏(フェアリーバーム)を使用した後、周囲の山に視線を泳がす。


「居そうな気がしますね・・・」


「うん、こっちにも心当たりがある気がする・・・」


 私と山ちゃんはフレンド・リストから、それぞれその「心当たりがある人物」を選択し、念話機能を立ち上げる。


『ユズコ! 山の中腹に貴方の姿を確認しました。速やかにこちらに合流してください』

『ダル太!どうせ野次馬で来てるでしょ、シゴトあるからこっち来い』


『げ、見つかった。ユズコさんがそうやってゴソゴソ動くから、見つかっちゃったんスよ! だから大人しくって言ったじゃないッスか!』

『うぐ、しまった。でもさ、ダル太郎だってちゃんと隠れられてるとは思えないんだけど、それ。頭に枝つけてとか、コントじゃないんだし』


『『いいから、さっさと駆け足!』』


『『あ、アイ・マム!!』』



 〈D.D.D〉の戦域哨戒(フィールドモニター)班。

 班長を務める三佐(さんさ)さんこと高山三佐(ミサ)は、その淡々とした口調と「怖い人オーラ」で、場合によってはギルドマスターのクラスティよりも恐れられている存在である。

 優秀な情報分析能力を持つメンバーを多く配下に従えるその戦域哨戒班は、〈D.D.D〉の頭脳と比喩されることもあり、一種独特の地位を獲得している。

 ユズコと呼ばれる彼女もまた、戦域哨戒班の一員だ。


 そんな彼女たちのコレも、またある意味、平常運転だった。

前書きに一番時間がかかったというなんという本末転倒。

そろそろキビシイ。

そして我ながらヒドイ。


ゴブりん編成変更による修正と、ほんのちょっとだけ加筆。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ