森の人
感想の方にとち狂って書きなぐったものの再掲載。
いやテレビでやってたし。
「うう、右も左も蟲蟲ですよぉ。なんでまた胞子の海なんですかぁ~!!」
鬱蒼と茂る巨大菌類の森の中にスイレンさんの半ば悲鳴と化した叫びが木霊する。
その声に返事を返すのは、空を飛ぶ大王ヤ○マみたいなトンボのお化けや、ヘビ○ラみたいな空飛ぶムカデの発する、ギギギとかギョギョギョとかといった声ともつかない異音ばかり。
「ヤエのお姉さんの話だと、このクエストの報酬でゾゾ君パワーアップなのです。これはやるしか!なのです!」
「ゾゾ君はあれで結構かわいい奴なのです。スイレンのお姉さんもそろそろ慣れても良い頃なのです」
「ううう、いつもお世話にはなってるですけど・・・やっぱり可愛くはないですよぅ・・・」
「なんて言うか、僕達この双子に振り回されっぱなしなような・・・」
僕達は現在、もうお馴染みとなってしまったいつものメンバーでテンプルサイドの森の4つのゾーンの一つ、胞子の海を再び探索中。
理由はまあ、ミダリーちゃんのセリフの通り。〈従者召喚〉モンスターの能力アップが目的だ。
普段僕達の移動手段として大いに役立ってくれているゾゾ君の為ということもあって渋々ながら同行してくれたスイレンさんだったけれど、実際この場に足を踏み入れてからはトラウマが再発してしまったのか、ご覧のとおりの終始涙目である。
彼女の事は本当に不憫だとは思うのだけれど、ここまで来てしまったからにはしょうがない。むしろとっとと用事を済ませて一刻も早くこの場を立ち去るのが、スイレンさんの為というものだろう。
いつのまにかに近場の巨大なダンゴムシのようなモンスターの背後に回り込み、攻撃の機会を窺っているヒギーちゃんのマントを引っ張って、方向修正を試みる。
「こら、寄り道はナシで。で、この後はどうするんだっけ?」
「ぐ、百眼のお兄さんはけちいのです。ヤエのお姉さんの話だと、ここらへんに地下への入り口がある筈なのです。あ、あれです!」
ヒギーちゃんの指さした先に見えるのは、苔に覆われてはいるものの、明らかに人の手が入っているであろう石積みの祠。よく観察してみれば周囲には人が行き来した痕跡も見られる。
「じゃあとっとと行きましょうか。中のモンスターは蟲じゃないかもしれないですしね。スイレンさん、明かりお願いします」
「は、はい! 光の虫さん、私達を照らして!〈バグズライト〉! ってこの子も虫じゃないですかぁ!!」
◆
「わあ、胞子の海の地下がこんなになってるなんてすごいのです!」
「なんだか、上よりも空気が綺麗な気がしますね~」
「うわ、上のも大概だと思うけど、下までこれじゃあまんまナウ○カじゃないか。大丈夫なのかF.O.E? 主に著作権とか・・・」
「禁止! メタ発言は厳禁なのです!!」
祠の奥の隠し扉から続く長い階段を下りた僕達の目の前に広がるのは、上のうにゃうにゃどろどろ蟲蟲な世界とはかけ離れた静寂の世界。
どこに光源があるのかはわからないのだけれど、まるで春の日差しのようなやわらかい光があふれていて、足元には白い砂がしきつめられている。まあお察しください。あれのああいった風景です。
「足跡はあっちに続いてるですよ、きっと目的地もそこなのです!」
僕達の下りてきた階段から続く足跡の先に見えるのは大きな岩のように見える大木の化石。その隙間に幾つか人工的な穴が作られているのが見える。
あれが今回のクエストの交渉相手だっていう「森の人」の住居なのだろうか。
まるで南国の海岸のような白い砂のような地面に足跡を残しつつ、僕達は慎重にその大木の化石に向かって足をすすめる。
「あ、何か話し声がきこえます。人がいるみたいですよ!」
地下に入って蟲が居なくなってから俄然元気をとりもどしたスイレンさんが、頭上のきつね耳をぴくぴくとさせながらそんな事を言う。見た目だけでなく〈狐尾族〉の聴覚というのは人間の僕よりも良いらしい。
「うーん、でも何を言ってるのかさっぱりわかりません。言語が違うんでしょうか・・・」
そういってスイレンさんは首をかしげる。
言葉が通じないとなるとそれはちょっと厄介だ。まあ、テンプレとしては多分一人くらいは僕達と同じ言葉を喋れる人物が居るとかっていうご都合主義でどうにかなるとは思うのだけれど。
「あ、ヒギーにも聞こえてきたのです。なんだか随分盛んに議論してるみたいですけど・・・」
『<五月革命>以降、もうアキバの街の観察が堪りませんわね!腹グロメガネの無双っぷりときたらもう!』
『シロ×直、にゃん×シロ、シロ×ソウ、シロ×クラ、シロ×カラもうよりどりみどりでどうしていいやら!』
『シロ×ソウとシロ×クラが思い付かないけど誘い受けかしら? 特にソウ様は誘い受けが似合う気がするのですけど・・・ 』
『シロ×アイを忘れてますわよ !』
森の人ェ・・・
「あー、これはあれですか。イケブクロにも居た類の人種なのです」
「え、なに?これなんですか? 私にはさっぱり理解できないですよぅ」
「スイレンのお姉さん、そう言いながら顔が赤いのです」
「駄目だ。腐ってやがる。早すぎたんだ・・・・」
オチなし。
最後のが言いたかっただけという。