ざ・らいとすたっふ(1)
〈東の討伐軍〉から1ヶ月。再び不穏な動きを見せ始めるゴブリンの軍団。
それに挑むのは極秘裏に集められた〈D.D.D〉の精鋭メンバー達だった。
津軽 あまに様作「D.D.D日誌」の三次創作的な小話になります。
「D.D.D日誌」をご覧の後にお読み頂かないと意味不明だと思います。
とっても面白いので是非にご一読ください。むしろ嫁ちがった読め。
色々な使用許可を快諾して下さったあまに様に感謝。
「右手前方、1km程先に見えるあの篝火の中心、目標の〈緑子鬼の将軍〉が居る部隊で間違い無いでゴザルな」
偵察から戻った〈D.D.D〉のメンバー、通称ゴザルが報告する。
口調と性格こそアレだが、彼は私が〈D.D.D〉に所属していた頃からのギルドの中心人物の一人で、装備も腕も経験も一流のトップクラスの〈冒険者〉だ。まあ、口調と性格はアレなのだが。
私達は現在、ザントリーフの山間深く、300匹ほどのゴブリンの軍団が駐屯する谷間を眼下に見下ろす山の中腹にて、作戦前のブリーフィング中だ。
事の始まりはクラスティ君から私に届いた出動要請。
ザントリーフ半島掃討戦から1ヶ月ほど過ぎた現在、〈イースタル〉のゴブリン退治は中級レベルの冒険者に対して〈円卓会議〉が討伐クエストを発行するという形で、「完全に殲滅はしていないが、この前のような大規模な進軍は抑える」という状態に落ち着いてきていた。
しかし1週間ほど前にこのザントリーフ山間にて、ゴブリン将軍の姿と中規模の軍団が再び目撃されたことで少々事態が変わる。
ゴブリン将軍はモンスターとしてのレベルはさほど高くはないものの、曲がりなりにもレイドランク。一介の冒険者パーティーにとっては少々やっかいだ。また、〈自由都市同盟イースタル〉との条約調印を間近に控えるこの時期に、ゴブリン達に大規模な戦闘行動を起こされるのも上手くない。
そこで〈円卓会議〉では、これ以上軍団が大きくなる前に頭を潰して脅威を減らそうという意見でまとまったと聞いている。
その結果が何故かこの私を含む〈D.D.D〉の精鋭メンバーによる、いわゆる将軍暗殺計画というわけだ。
「名高い〈突貫黒巫女〉にこんなつまらない仕事をお願いするのも心苦しいのですが。ええ、別に私がアキバの面倒なあれこれを押し付けられているのに、クシさんだけ郊外でのんびり過ごしてるのが恨めしいからとかそういった理由は全然ありませんので、ご心配なく」
とかいつも通りの澄ました口調でさらっと言いやがって。
ちくしょう、陰険サド眼鏡め。私だってあれはあれで結構面倒なことが多いのだ。特にヤエが色々やらかすし。
「ったく、1パーティーでアレ落としてこいとか、クラスティ君も中々に人使いが荒いよねえ、っていうか何で私が駆りだされなくちゃいけないんだか」
「〈D.D.D〉のメンバー多しといえども隠密行動が可能で近接戦闘もこなし、かつ大局をみつつ作戦行動が取れる回復職というのは貴重です。むしろ先輩以上の適任者はいません! 今回のメンバー選出の際に私から隊長に要請を出していただけるよう、おどsもといお願いさせていただきました!」
「・・・山ちゃんェ・・・」
こいつが元凶だったか。
なんなのだろうか、この山ちゃん。
普段は冷静な真面目っ子なのだが、時折こういった変なスイッチが入って奇行に走る。
「皆もさあ、こんな無茶な作戦はボイコットしようよ。別にギルマスや山ちゃんだからって無条件に言うこと聞くことないんだしさ。いつから〈D.D.D〉はブラック企業の仲間入りをしたのさ?」
「いえ! 三佐さんと〈黒姫〉と作戦行動とか全俺会議にて賛成多数、むしろ満場一致ですから!」
「我らギルド内の参加希望者多数の屍を踏み超えて此処に立っている精鋭でゴザルよ! 実際クシ殿に逝けといわれれば拙者、一人でもあの陣中に特攻する所存!」
「特攻MAJIDE!?」
「むしろこの逆境! リアルオレを残して先に行け! とかが期待されるこの逆境! まさに逆境こそ好機!」
「・・・山ちゃん、こいつら大災害後も相変わらずこんななの?」
「ええ、概ねいつも通りです・・・」
今日も〈D.D.D〉は平常運転だった。
やっちまった感が。
4巻のモンスターファイルのデータを受けて、ゴブりん達の数を上方修正。