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G.L.O.R.I.A ~DISPOSABLE DOLL~  作者: 氷上 廉


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1/1

1話 始まり

夢と血にまみれた都市――GLORIA。

そこはかつて、ただの廃墟だった。

崩れた建造物、沈黙した機械、

誰にも顧みられない、死んだ世界。


だが――

名を上げる、

富を得る、

力を求める、

夢を見る者たちが、ここへ集まった。


彼らの目的はひとつ。

地下に眠る“遺物”。

それは、旧時代に生み出された高度なテクノロジーの残り香。

完全には理解されず、

けれども、所有者に多くの利益をもたらす。

それを手にした者が――

この街で“上”に立てる。


GLORIAは、無数の亡骸の上に築かれている。

名も残らず消えた者。

帰る場所を失った者。

夢の途中で途切れた者。

そのすべてが、地の底に沈んでいる。


だが――

それでも人は集まる。

わずかな成功。

ほんの一握りの勝者。

その存在が、

次の誰かを地下へと誘う。


ネオンが夜を染める。

紫に、青に、赤に揺れる光は、

この街の繁栄の証。

だがそれは――

夢が燃えた残り火の色だ。


GLORIAは、夢を吸い取る。

希望も、野望も、命さえも。

すべてを喰らい尽くし、

それでもなお、光り続ける。


そして今日もまた、GLORIAに人が吸い込まれる。

夢を見るために。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


機械の触手に吊るされた状態で、私は目を覚ました。


<・・・・・・・・・>


誰かが話しかけている。


極めて機械的な声。

ノイズと区別がつかないほど無機質で、最初はただの雑音かと思った。


ぼやけた視界の先にいるのは、異形の機械。


蜘蛛のような多脚の下半身。

そこから伸びる無数のアーム。

上半身はタコのように歪なシルエットをしている。


金属同士が擦れる音を鳴らしながら、それは静かにこちらを見下ろしていた。


――アシスタントAI【レト】。


見慣れた姿だ。


意識が徐々に鮮明になっていく。


そうだ。

私は今、全身機械化施術の最中だった。


「レト……もう一回言って。」


<ソラエリス様。ヴェルソ様から通信が来ています。>


……あいつか。


「繋いで。」


<現在、お繋ぎします。>


短い電子音。


そして、すぐに男の声が響いた。


『おはよう、Ms.ソラエリス。仕事の時間だ。』


「……まだ施術が終わったばかりなんだけど。わかるでしょ?」


『そうか。予定時間通りだな。』


チッ。


気づかいってものを知らないのか、こいつは。


『今回の仕事は、サイバーウイルスに感染した遺物の回収だ。詳細データはお前のAIに送ってある。すぐに取り掛かれ。』


「……了解。」


『正規の組合員になってから初仕事だ。我々に“支援”されていることを忘れるなよ。』


――通信が切れる。


高圧的な口調。

こちらを人間として見てもいない態度。


どこまでも、“使う側”の目。


本当に気分が悪い。


<後処理が完了しました。接続を解除します。>


機械の触手が、ゆっくりと身体から離れていく。


首。背中。腕。脚。


次々と接続が外れ、私は約二十時間ぶりに床へ降ろされた。


「……ふぅ。」


施術直後だというのに、身体は驚くほど軽かった。


いや、軽いなんてものじゃない。


自分の身体ではないみたいだ。


指先を動かす。

視線を動かす。

呼吸をする。


そのすべてが、以前より遥かに速く、正確で、滑らかだった。


私はふらつきながら鏡の前へ向かった。


そこに映っていたのは――


黒い機械に覆われた身体。


艶のない装甲。

露出したフレーム。

その上から、人間の肌を模した塗装が部分的に施されている。


人間に見せるためだけの、人間の色。


……夢にまで見た、全身機械化。


忌々しいことに、組合の“支援”あってこそ実現したものだが。


それでも。


ここまで来た。


もう戻れない。


だったら――


やってやる。


見返してやる。


あいつも。

この街も。

この世界も。


「レト。詳細情報をまとめて送って。私は外に出る。」


<了解しました。>


自動扉が開く。


その瞬間、あまりの眩しさに視界が焼けるような痛みを覚えた。


けれど――


美しかった。


高層ビルの隙間を縫って差し込む陽光。

ネオンカラー。

空中を流れる広告映像。

空を横切る輸送ドローン。


夢と欲望で作られた都市。


――GLORIA。


その光が、まるで私の行く先を照らしているように見えた。


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主人公ソラエリス

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

レト

挿絵(By みてみん)


組合:地下管理組合のこと。ソラエリスが所属した組合。現代の技術では理解することが出来ない旧時代の遺物が多く眠るGLORIAの地下。それを管理している組合である。サラエリスはその組合の危険性の高い遺物を回収する役割だ。

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