②前半戦での失言
筆者:
ここからは選挙公示後の発言についてみていこうと思います。
4 神谷参政党代表 「高齢女性は産めない」
参院選公示日の7月3日、参政党の神谷宗幣代表は街頭演説で少子化問題に触れ、
「子どもを産めるのは若い女性しかいない。これを言うと『差別だ』と言う人がいるが違う。現実です」
と語ったことが炎上しました。
質問者:
現実的には40歳過ぎても子供を産まれる方はいらっしゃいますよね?
世界には60歳過ぎても産まれた方もいるとか……。
筆者:
僕は実はそこまで酷い失言とは思いませんけどね。
確かに「不可能ではない」とは思うのですが、現実問題として不妊治療などはやりにくくなりますよ。
また、たとえ40歳ごろに産まれたとしても、なかなか育てるのは一苦労だと思いますよ。成人するころには60歳ですからね。初産では1人が精一杯でしょうし、肉体的にも精神的にも厳しい方が多いのではないでしょうか?
※神谷氏について擁護したり叩いたり忙しいと思われるかもしれませんが、
是々非々で物事を分析していますので悪しからず。
質問者:
確かに少子化を考えた時には結婚と初産は早い方が良いですよね……。
筆者:
ただ、このように「補完しなくてはいけない段階」で失言と捉える人がいても仕方ないかなとも思いますけどね。
5 吉村日本維新の会共同代表 「病床削減と処方薬の保険適用外に」
これも公示日の7月3日のお話なのですが、
日本維新の会の吉村共同代表は、
『現役世代1人あたり年間6万円の負担を軽減すると訴え、その財源として、全国で11万床の病床削減や、市販薬と効果が類似する処方薬(OTC類似薬)の保険適用除外などにより、年間4兆円以上の医療費を削減する案を提示した。』
と大胆な提言をしました。
質問者:
病床はコロナ渦で足りないと言われていましたし、
薬を保険適用外にして大丈夫なんでしょうか……。
筆者:
僕は日本維新の会の主要推進政策(将来も含めて)万博、カジノ、ベーシックインカム、ライドシェア、教育無償化、大阪都構想など枯れ果てるまで叩きまくっているわけですが、
これについては実は珍しく評価できる内容です。
実を言うと病床は人口1000人当たりでは世界でもトップの水準で13となっています。2位ドイツは8なので1.5倍以上です。
コロナの際に病床が足りなかったのはベッド総数ではなく「医療従事者不足」でした。
緊急病棟では病床数と医師の数の均衡を取らなくてはいけないので、全体のベッド数が多くても緊急病床は増やせなかったのです。
ベッドばかり無駄に多いのは「入院させることでお金が入る」ということで積極的に入院させたいという民間医療機関の思惑が透けて見えます。
質問者:
なるほど、無意味な入院は減らして家で過ごした方が良い気もしますからね……。
筆者:
次にOTC類似薬ですが、これは市販の薬局で売られているような薬を病院で処方してもらえることから高齢者であれば1割負担で買うことが出来るのです。
カロナールなどが代表的ですね。
病院で安く売れる(保険料で賄わさせる)のは製薬会社のある種の「利権化」の要素であり、さらにこれが「高齢者や生活保護の病院通い」の一因にもなっているのです。
吉村共同代表がここまで述べたかは分かりませんが、一定の合理性と実行できれば医療費削減には繋がります。
こういった解説を加えるのであれば問題はあまり無かったのではないかと思います
質問者:
なるほど。少なくとも議論の余地ありなので国民と政治家が一緒に考えて妥協天祖見つけ出すべき論点の気がしますね……。
筆者:
流石に何も話し合うことなく突然やるのは問題だと思いますね。
6 小泉進次郎農水相 「自民党が一番マシ」
小泉農水大臣は7月5日、滋賀県彦根市彦根駅前の応援演説で
「あらゆる政策分野を全部舵取りをするのが政権の責任なんです。
それが今の野党で出来るところがあると思いますか?
今の野党から総理大臣を出しましょうといった時に、どこから総理が出るんですか。立憲ですか。国民ですか。維新ですか。まさか共産党ですか。考えられないと思います。
我々も変わらなきゃいけない。反省しなきゃいけない。だけどこれだけは言えます。少なくとも我々が一番マシです。それだけは言えます」
と呼びかけたことがまた炎上しました。
質問者:
でも、筆者さんは日ごろから選挙は
「相対的に良いと思う人や政党を選ぶに過ぎない」
とおっしゃっているような気も……。
筆者:
ですが、「その相対的に良い政党が今の自民党であるとは限らない」ということです。
30年間GDPゼロ成長の国は世界広しと言えど、日本と紛争をずっとやってる国ぐらいしかありません。
僕はGDPが豊かさの指標だとは思っていないですが、それでも可処分所得は数十万単位で減少し国民負担率は10%以上増えました。
これが自民党政治であり、これが「相対的に本当にいいのか?」どうかを有権者の皆さんはもう一度考えていただければと思います。
質問者:
確かに、野党には大きな不安はありますけど、自民党に任せ続けるのも不安が残りますよね……。
筆者:
この状況下で政権交代ができない野党は「だらしない」と言え、非常に残念な状況だと思いますね。
7 鶴保前予算委員長 「運のいいことに能登で地震があったでしょ」
鶴保予算委員長(当時)は7月8日、和歌山市内で行われた参議院選挙の自民党候補を応援する集会で、地方の人口減少対策につながる「二拠点居住」について触れる中で、
「運のいいことに能登で地震があったでしょ」
などと発言しました。
恐らくはこの参議院選挙で最も炎上したメッセージだと思います。
質問者:
一体どういう流れでこんな発言が出てしまったのでしょうか……。
筆者:
地震をきっかけに、被災者が居住地以外でも住民票を取得できるようになった行政の対応を称賛したかったようですけど、
「能登半島地震で二拠点生活や行政の対応が見直される契機となった」
で問題なかったはずです。
何百人単位で亡くなった上に、今も政府が適当にしか復興支援をしないせいで能登の人達は苦しんでいるわけです。
鶴保氏は当選5回で東京大学法学部で元内閣府特命担当大臣だそうですが、あまりにも配慮が無さすぎる致命的な発言ですね。
恐らくはこの発言だけで自民党の議席は5~10は減るほどの選挙の流れを決定付けるものだったと僕は思います。
質問者:
今はSNSですぐに発言が切り取られるので、発信者は前後の発言も含めて注意する必要があると思いますね……。
筆者:
言うに事欠くととんでもないことを言っちゃうんでしょうかね?
8 石破茂首相 「なめられてたまるか」
石破茂首相は7月9日、千葉県船橋市で街頭演説し、トランプ米政権との関税交渉について
「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない。守るべきものは守る」
随分と勇ましい発言ですが、
3カ月一度も自分では交渉しに行っておらず赤沢大臣を矢面に立たせているだけの状況です。
2月の日米首脳会談で関税の話題をしなかったのは石破氏本人です。
更には中国に対してはそんな強気では無く、「国益をかけた戦い」をしているように思えません。
短期滞在のビザ免除の枠を増やしたりしています。
尖閣諸島に自衛隊を駐留させると答えたインタビューも過去にあったようです。
中国の領海・領空侵犯に対しては甘い「親中政権」なんだなと言う印象を受けますね。
質問者:
確かに石破政権はアメリカに対しては妙に強気の交渉をしている気がしますね……。
筆者:
“同盟国だから配慮してくれるだろう”と甘えているのではないかと思います。
でも、トランプ氏に限ってそう言う“配慮”みたいなことは無く、容赦はない状況だと思いますよ。
日本よりも親密な同盟国で対貿易黒字のイギリスにだって関税を課している感じですからね。
ある記事では上半期のアメリカの関税収入は法人税に続く2位で安定財源として政権が変わった後も続くのではないか? と言った考察もありました。
質問者:
ある程度のラインで妥協しないと厳しいということですね……。
筆者
一番舐められているのは日本国民だと思いますよ。先ほど言った経済成長しないこともそうですが、
ガソリン税の「暫定税率」とか言って半永久的に続いている。
昔は最低賃金に連動していた所得控除は渋ってほとんど上げない。
国際法上は移民なのに「移民ではない」と言って外国人労働者をどんどん受け入れて、さらに外国人労働者の賃金は低い。
このような状況をどのように評価するのか? 野党ではどの党が一番マシそうか? もう一度考えて投票に行くべきだと思います。