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彼に勇者は似合わない!  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


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第15話 戦闘開始

日が昇り辺りが明るくなってくるとざわめきが広がっていく。

無名の予測通り肉眼で遠くの方から近づいてくる邪龍の姿が見えたからだ。


「総員戦闘準備!!邪龍が来るぞぉぉ!!」

誰かの声が防壁の上から響き渡る。

夜のうちに邪龍が来た時に備えて事前に持ち場についていた兵士たちはみな立ち上がり武器を片手に空を眺める。


無名も真剣な顔つきでリヴァリアの方へ視線を送る。

リヴァリアも同じように無名をジッと見つめて小さく頷いた。


「ガンツさん、そろそろ」

「おう。絶対に死ぬんじゃねぇぞ」

ガンツは拳を作り無名の胸を軽く叩く。


駆ける空への一歩(スカイステップ)

無名が空へと飛び上がるとリヴァリアが無名のそばまで飛んでくる。


「空中戦は初めてか?」

「そうですね、今まで空飛ぶ相手と戦ったことはありませんから」

「ふむ、ならば妾の前には出るな。初撃で最高火力のブレスを吐く」

軽くリヴァリアと打ち合わせを交わし各々配置へとつく。


ゆっくりと脅威が迫る様は緊張感が高まってくる。

暗雲と共に迫りくる邪龍の姿は凶悪そのものだった。


黒紫色の鱗にキラリと光る鋭い牙。

リヴァリアのように人間の姿はとっておらず、本来の龍の姿である。


眼つきも鋭く、近づくだけで殺されそうな雰囲気まで纏っていた。


「あれが……邪龍……」

「あんなのに勝てるのか……?」

「む、無理だ!バリスタ程度でどうにかなる相手じゃねぇよ!」

防壁の上に立つ兵士たちは明らかに動揺していた。

邪龍の巨大な体躯が余計に恐怖を駆り立てる。


近づけば近づくほど、兵士たちはそのサイズ感に恐れを抱いていた。



「魔族と戦った時のほうがよほど楽だったかもしれないねこれは」

獣王国の兵士たちと同じく防壁の上で邪龍を眺める"静かなる裁き"の面々はため息をついていた。

日頃から魔物と戦っている冒険者からしてみれば邪龍はボスクラスの魔物といった印象である。

彼らの役割は邪龍が地上に落とされてからだ。


飛行魔法を使える冒険者は何人かいるが、使いこなせているかと問われるとそうではないからである。


「アタイ……役に立てるかなぁ」

リコは自信なさげに呟く。

レベル4であるリコでは鱗に傷すらつけられないだろう。

それを理解しているため、今回は戦闘に参加せず支援に徹する役割を与えられていた。


「安心しろ、俺も役に立てそうにない」

「リックは情報収集専門じゃん。アタイは戦闘専門だよ?戦闘支援なんてやったことないよ」

「その足を活かせばいい」

リコは獣人であり素早さだけならレベル5にも比肩する。

リックは完全に裏方の冒険者で、戦闘面では殆ど役に立たない。


「怪我した人達にポーションを届けて回るのも立派な役割じゃないかい?アタシだって今回は戦闘面では役に立たないからねぇ」

シェリーは大剣を携えている冒険者らしい風貌ではあるが、邪龍の鱗に傷をつけられるか否か怪しいところだ。


「ま、リーダーと副リーダーに期待するしかないねぇ」

"静かなる裁き"で戦力として数えられるのはカイトとセニアだけだった。

シェリーもそれは理解している。

頭では理解していてももどかしい思いでいっぱいだった。


今回はレベル5以上の冒険者のみ戦闘に参加することを許されているのだ。

獣王からの指示で、それに逆らうことは自由人の代名詞でもある冒険者であれど流石にできなかった。



「みんな、とにかく死なないように立ち回ってくれ。死ななければ何とでもなる。地上に落ちてきたら俺とセニアが全力で攻撃するから」

「リーダーこそ死なないでおくれよ?アタシらが路頭に迷っちまうよ」

「シェリーならどこに行っても引く手数多だろ。レベル4は十分ベテラン冒険者さ」

邪龍が相手でなければシェリーも戦力として数えられたはずだ。

カイトは暗にそう言っていた。


「慰めはいらないよ。セニアも気をつけておくれよ。アンタが死んだらリコが泣いちまう」

「そうだよ!セニア死なないでね!」

二人からの激励を受けてセニアはニコッと微笑む。


「とりあえず無名とリヴァリア様が邪龍の翼をもいでからが本番さ。みんな、そろそろ始まると思うから位置に――」

『オォォォォッッッ!!』

カイトが言い終わるより先に耳を劈くほどの声が響き渡った。


空が一瞬光り、すぐに発光は収まる。

すると空には巨大な龍が浮かんでいた。



「あれがリヴァリア様の本当のお姿……なんて神々しいのか」

リックは小さく独りごつ。


巨大な翼を広げ口を開けるその様に、みな圧倒されていた。


『我が力、とくと見せてやろう』

腹に響くような低い声が響き渡るとリヴァリアの口元の空間が歪んでいく。

空気が圧縮され高熱を発生させているせいで、空間が歪んでみえる。


無名に放ったブレスとは桁違いの魔力が徐々に集束されていく。


リヴァリアが大きく身体を後ろに反らせ、口を上空へと向ける。

全力のブレスがいよいよ放たれる。

地上にいる者たちは固唾をのんで見守っていた。



破滅の一撃(ギガブレス)!!」

超高密度のブレスが邪龍に向けて一直線に放たれた。

空気が消滅し音を置き去りにして、衝撃波を生み出す。


「うおあああ!」

「きゃぁぁあ!」

「うわぁぁ!」

防壁の上にいる者たちは吹き飛ばされそうになりながらも辛うじて踏みとどまった。


リヴァリアの斜め後ろに控えていた無名も強烈な衝撃波をその身に受けたが、飛行魔法を駆使し辛うじてその場に留まる。


邪龍を飲み込むほど太い破壊光線は遥か彼方へと伸びていき、やがて細くなり消失した。


「チィッ……奴め、たんまりと力を溜め込んでいたらしい……」

リヴァリアが龍の姿のまま愚痴をこぼした。

目線の先には翼を広げて速度を上げる邪龍の姿があった。


「今のでも無理ですか……」

「すまん、妾が想定していた以上に力を取り戻しておる。後は任せた」

リヴァリアが後方に下がり今度は無名が前に出る。


二人で行った打ち合わせ通りの動きだ。

最初にリヴァリアが最高火力で攻撃する。

それで地上に落とせればよし、落とせなければ次は無名が入れ替わりで攻撃する手筈だった。


「万能の勇者、少なくとも奴は妾以上に力を蓄えておる。肉体すらをも残さぬほどの威力を叩き出せ」

「はい」


邪龍が迫ってくるにつれて兵士たちのどよめきが広がる。

圧倒的な龍王の火力があっても邪龍は落ちなかった。

それが余計に不安を募らせていた。



「多重魔法陣展開」

無名が両手を広げると数十もの魔法陣が背後に、頭上に、壁のように生み出されていく。


フランから教わった複数の魔法の同時詠唱だ。

中級魔法が殆どだが、中にはいくつか上級魔法も紛れ込ませている。


リヴァリアがブレスを放つ時も驚きの声が沢山あがっていたが、それ以上に驚愕している者が多い。


人間でありながらほぼ人外の領域に足を踏み入れた無名の全力をその目で見られるのだ。

戦うことこそ獣人の生き様。

だからか余計に無名への期待が膨らんでいく。


「おいおい……噂には聞いていたがこれほどとな」

「あれが……万能の勇者」

ガンツとソウリュウは既に五十を超える魔法陣が浮かび上がっている様を見て呆れかえっていた。


「およそ人間とは思えねぇな。魔力量だって尋常じゃねぇ」

「ええ、そうね。不死鳥である私よりも遥かに多いわ」

不死鳥族のソウリュウは長生きしていることも相まって魔力量はかなり多い方だ。

しかしそれでも無名と比べれば見劣りが激しい。


そんな会話をしている間にも無名の背後にいくつもの魔法陣が浮かんでいく。


「展開……完了。僕のもてる最大火力を放ちます」

「クククッ……無名、やはり妾と戦った時、本気を出していなかったではないか」

高位魔族すらも退けた時よりも更に強くなっている無名。

ゆっくりと両手を前へともってくる。


「|百の魔法は天をも落とす《フォールンダウン》」

目を覆うほどの光と共に邪龍へと様々な属性の魔法が放たれた。

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