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第11話 勇者の本領

リヴァリアの腹からは剣の刃が突き出ていた。

背後からの一撃。

リヴァリアとて警戒を怠ったわけではない。

気づけば腹に鈍い痛みを感じだのだ。


「無名……どうやった?」

「そこはまあ……秘密ということでどうでしょう」

「ククク……万能の勇者の名は伊達ではなかったか!」

腹を貫かれ血が滲んでいるというのにリヴァリアは高らかに笑っていた。


「無名君……どうやってそんな場所に」

「カイトさん、これが勇者としての力です。レベル6の冒険者とも互角以上に戦える万能の勇者としての力なんです」

無名はいよいよリヴァリアのブレスに押し込まれるその瞬間、背中に浮かべていた魔法を発動した。

その魔法は朧げな現身(アバター)

限りなく実体に近しい分身をその場に残し、無名自身は稲妻よりも疾く(クイックスパーク)を使い目にも留まらぬ速さでリヴァリアの背後を取った。


そしてカイルの技を見て盗んだ鉄剣生成(ソードフォーム)でショートソードを創り出しリヴァリアの腹へと突き刺したのだ。


怒涛の魔法行使により無名の額には汗が浮かび、息も上がっていた。


「これほどの力を持つとは。これならば邪龍相手でも遅れは取らんかもしれぬ」

「そう言って頂けて感謝します」

「だがもう少し持久力が必要ではあるな。ちなみにだが龍王はこの程度の攻撃何の足しにもならん」

そう言うとリヴァリアは突き刺さった剣を片手で掴むと砕いた。


「無名、発想は良いぞ。しかしこれでは致命傷は与えられん」

「これ以上の力がいるのですか?」

「そうだな……さっきのブレスを十発至近距離でぶっ放せ。それなら邪龍といえども無傷では済まん」

リヴァリアはかなり無茶を言っていた。

上級魔法の二重詠唱ですら高難易度だというのにそれを十発放てと言うのだから。

それこそ悠久の魔女フランのような天性の才がなければ不可能だろう。

そもそも十発同時に放てるほどの魔力は無名にはない。


「勇者というのはやはり貴様のような力を持っているのか?」

「いえ……僕は恵まれているだけです。他の勇者は……正直言ってレベル5の冒険者にも達していません」

「ふむ……ならば無名の才能か。とにかくこれで勇者の実力が分かった。今のが本気であったのだろう?」

無名は無言で頷く。

紛うことなき本気だった。

それにも関わらずリヴァリアはピンピンしている。

力の差を見せつけられ無名は悔しそうに歯を食いしばっていた。


「それにしても妾に血を流させるとはのぅ……いつぶりか分からんぞ」

リヴァリアは腹から血を流しているのに何ともないのかケラケラと笑う。

次第に傷が塞がっていき何の傷も無かったかのように綺麗に治っていく。


「それが龍の自然治癒能力なんですか?」

「む?そうだな。だからこの程度では致命傷にならんのだ。妾はだいぶ力を失っていてこれだぞ。邪龍が妾以上に力を蓄えているのならもっと治癒は早い」

確実に致命傷を与えるのならば回復が追いつかない速度で連撃を加えるか、回復を大幅に上回るダメージをいれなければならない。


無名も魔力を全力で練れば高威力の魔法を放てるが、それには溜める時間が必要であった。



「無名君、やはり君は勇者だね。リヴァリア様に一撃でもいれられたのは称賛に値するよ!」

カイトは手放しで喜んでいた。

無名は本気だと言っていたがまだ隠し玉はあるだろうとカイトは考えている。

魔神が復活しても無名がいればなんとかなるのではないか、そう思えるほど期待に満ちた表情だった。



「せっかくの機会だ。邪龍がいかほどの力を持っているか見せてやろう」

リヴァリアが突然そんなことを言い出しその場にいる全員が固まる。


「まさか龍の姿に――」

無名が言い終わるより早くリヴァリアの身体が光り輝き訓練場の半分ほどの龍が出現した。


「今から龍の威圧を出してやる。この姿の威圧は並大抵の者では死に至る。無名、カイト、セニア以外の人間はこの場を立ち去れ」

巨大な龍にそんなことを言われればクランメンバーは我先にと訓練場を後にした。

残された三人は苦笑いを浮かべるしかない。


「もう十分邪龍の強さは理解できましたが……」

「まあいっぺん味わっておけ。貴様らなら死にはせん」

死ななくとも恐ろしい思いなどしたくはないのだ。

リヴァリアには逆らえず無名達は顔を見合わせ嫌々ながら構えを取った。


「ではゆくぞ?」

リヴァリアが咆哮すると空気が震え大地が揺れた。

龍の威圧ではなくもはや龍の咆哮ではないかと無名は結界で自身を覆いながらため息をつく。


数十秒にもわたる強烈な威圧にカイトとセニアは膝をついた。

案の定立っていられたのは無名だけであった。



「ふむ……こんなところか」

満足したのかリヴァリアはまた発光し人間の姿へと戻る。

カイトとセニアは過呼吸のような症状で荒い息を吐いていた。

無名は立っていられたがそれでも若干膝が震えている。


「これが本物の龍の威圧だ。これに耐えれねば即座に死ぬぞ」

「これが……本気の龍の威圧、ですか。邪龍と対峙するのが恐ろしいですね」

カイトの言葉にセニアも頷く。

そもそも人間と龍とでは存在感が違う。

人間の数百倍という年月を生き、体躯も数十倍に及ぶ。

生き物としての格が違うのだから当然の結果といえた。



「妾はこれでも龍王の中で最古参だ。邪龍はどちらかといえば若い。まだまだ力は有り余っておる。この国を守ってやるつもりではおるが、妾だけでは止められんと心得よ」

「わかりました。少なくとも今の威圧で臆するな、ということですね」

「うむ。そうだ!良いことを考えたぞ」

リヴァリアの良いことというのが、不安でならない三人は少し後ずさる。


「なんだ、どこへ行こうというのだ?」

「いえ、その……」

「遠慮しているのか?クックック……妾は寛大なのだぞ?そう遠慮せずとも良い」

「は、はい……」

「良し!今日から一週間妾が面倒見てやろう!貴様らも邪龍討伐の戦力になりたいであろう?」


やっぱりな、そう顔に書いてある無名。

愕然とした表情のカイト。

セニアに至っては顔が青くなっていた。


リヴァリアほどの相手と訓練するなど命がいくつあっても足りない。

できることならこのまま逃げ去りたかったがリヴァリアの無言の圧が足を動かせずにいた。


「無名君は是非とも受けたほうがいい。俺達はほら、足手まといになっても申し訳――」

「安心せよ。たかが一週間で劇的に変わることもあるまい。ただ邪龍を前にした時怯えずとも済むようになるだけだ」

カイトの言葉は途中で遮られ最後まで言わせてもらえなかった。


「では明日から始めるとしよう。今日のうちは身体を休めておけ。休養も大事だというだろう?特に人間は脆弱な生き物だからな」

その脆弱な生き物相手に訓練をつけてやると言っている龍王リヴァリア。

もはや何も言うまいと無名は無言で頷いた。



リヴァリアが先に屋敷へ帰ると訓練場を後にするとカイトとセニアは神妙な顔つきで唸りを上げる。


「どうしようか……正直一週間も龍の威圧を受ければ精神がもたないんじゃないかい?」

「トラウマになりそうです……」

「無名君は平気そうだからいいとしても俺達はただのレベル5だ。人外と一緒にされちゃあ困るね」

シレッと無名を人外扱いしているカイトだが、セニアもおもむろに頷く。

二人も十分強者の部類だが無名はそのまた上をいく。

リヴァリアはもっと高みにいるのだ。


「一応人間ですよ僕は」

「人間?本当かどうかも怪しく感じられるよ。だってさっきの龍の威圧、とんでもなかったよ?よく平気でいられるね」

「結界のおかげですよ」

「俺も結界を薄く張ってたんだけどなぁ」

カイトとセニアなら秒殺される。

それだけリヴァリアと力の差を感じられたのだ。

しかし無名ならば数分とまではいかずとも数十秒は戦えそうであった。


「はぁ……とにかく明日から頑張ろう。龍王様に訓練をつけてもらえるなんて普通できないからね」


それもそうだと半ば無理やり納得してその日は解散となった。

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