第4話 龍の魔窟②
久しぶりの投稿となり読んで頂いている方には申し訳ないです。
また不定期ですが続きを書いていきますのでよろしくお願いいたします。
ミルコが爪を出してファイティングポーズを取った。
龍王リヴァリアも寝転がっていた姿から今は起き上がり見下ろす形で二人を見つめている。
その巨体は十メートルを超える。
あまりの巨体に無名は勝てる気がしなかった。
一撃与えれば龍玉をくれる。
確かに龍王はそう言った。
とはいえそれは簡単なことではない。
異様な威圧感が無名の足を竦ませる。
「ミルコ、前衛を頼みます」
「任された!」
小手先の技術では恐らく毛先ほどの傷も付けられないだろう。
そう判断した無名は大魔法に頼ることにした。
しかしそれにはどうしても隙が生まれる。
龍王はそんな隙を見逃さない。
ミルコが縦横無尽に駆け回ると龍王はそれを目だけで追う。
無名は即座に魔力を練り始めた。
大魔法の行使には時間がかかる。
少なくとも三十秒はミルコに時間を稼いでもらわなければならなかった。
ミルコは凄まじい速度で駆け抜けながら龍王の身体に爪をたてるが小さな傷一つ付かなかった。
「かたっ!」
ミルコの爪とて柔いわけではない。
純粋に龍王の鱗が硬すぎるのだ。
「無名!硬すぎて爪が通らない!」
「僕が魔法を発動するまでなんとか耐えてください!」
「がんばる!連爪斬!」
ミルコが技を繰り出すがやはり傷一つ付かなかった。
「児戯に等しいぞ獣王の娘。その程度では妾に一撃与えるなど不可能だ」
「むむむ!本気出す!」
ミルコの身体から闘気のオーラが立ち込めると目に赤い光が灯る。
「ガァァァァッッ!」
もはや言葉とも言えない叫び声を上げ爪を振るう。
本当に小さいほんの少しの傷が龍王の鱗に付いた。
「ほぉ?」
龍王の目が細まり暴れまわるミルコを見る。
「獣王の血は確かに引いておるようだな。しかしまだ足らぬ!」
龍王がひとたび尻尾を振るうとミルコに直撃した。
ミルコはまるで人形のように吹き飛ばされ壁に激突する。
「ウグッ――」
うめき声を漏らしミルコはグッタリと横たわる。
ここまでで二十秒が経過していた。
「他愛もない……その程度では――ムッ!貴様その魔力……何をするのか知らんが、発動させるものか!」
龍王は溜息をつきかけたが無名の身体から迸る魔力を脅威とみなし口を大きく開く。
「龍王の息吹!」
暴力的なまでの業火が龍王の口から放たれると無名も魔法を発動させる。
「破滅の雷光!」
どちらも上級魔法に相応しい威力ではあるが、無名は魔力を全開まで流し込めなかった為想定より威力は落ちていた。
業火と雷光がぶつかり合うとダンジョンが崩れ落ちるのではないかと思えるほどの衝撃波が部屋全体を揺らす。
壁に亀裂が走り無名の顔には大粒の汗が浮かんでいた。
「ほぅ……なかなかやるではないか。そこの人間、名を名乗るといい」
「あの……最初に名乗ったのですが……」
「もう一度言え……む、いかん!今の攻防で天井が崩れ落ちるぞ!」
龍王が何か言いかけたがパラパラと小石が落ちてくると、龍王は上を見上げて叫ぶ。
「ど、どうすれば!」
無名も様々な魔法を使えるがダンジョンから脱出する魔法は知らなかった。
ミルコは倒れていて気絶中、無名もいい方法が浮かばない。
絶体絶命かと思われたが龍王が翼を大きく広げて手を差し出した。
「乗れ!このままでは生き埋めになろうぞ!」
「あ、ありがとうございます!」
無名はミルコを抱えて龍王の掌の上に飛び乗った。
「ゆくぞ!揺れに備えよ!龍王の息吹!」
龍王は崩れかかっている天井に向かってブレスを吐いた。
それは無名へと向けられたものと比較しても威力が段違いであった。
無名に放たれたブレスはかなり手を抜いていたのだと痛いほど分かる。
強烈なブレスが天井を吹き飛ばし地上へと大穴が開くと、龍王が一気に飛び立つ。
身体を押し潰しそうな重力がかかっているのは無名の表情が物語っていた。
歯を食いしばり嫌な汗を流しながら龍王の掌の上で踏ん張る無名は気を失いそうになりながらもなんとか堪えていた。
突風が無名の肌を撫でる。
ものの数秒でダンジョンを抜けたのだとすぐに分かった。
数時間をかけて最奥まで行ったあの苦労はなんだったのかと無名の顔には呆れの色が見えた。
「ムムッ!わ、妾の家が……」
空高い上空から見下ろすと龍の魔窟は見るも無惨な光景へと変貌を遂げていた。
瓦礫の山を見て龍王の目からホロリと涙が零れ落ちる。
「妾の家がぁぁぁぁッ!」
「す、すみませんでした」
とりあえずここは謝っておいたほうがよさそうだと龍王の掌の上で無名は頭を下げた。
正直ここまで完全に龍の魔窟が壊れてしまったのは龍王のせいとしかいいようがない。
「貴様らが来たからこうなったのだぞ!」
「その……大変言いづらいですが、ブレスが決め手になったのでは――」
「なに!妾が悪いと申すか!」
「いえ、僕らが来たせいです」
厳しい顔を近づけられて凄まれると無名も黙るしかなかった。
龍の魔窟から少し離れた場所へ降り立つと無名はミルコを抱えたまま龍王の掌から降りた。
「名を無名と言ったか?口だけではないようだな」
「それは認めて頂けたということでしょうか?」
「……ムム。上級魔法の威力はなかなかのものだった。しかしながら妾のブレスと相殺できたのはあくまで妾が手を抜いたからに過ぎん」
「ご尤もです。先程天井をぶち抜いたブレスを見たので理解しております」
「ふむ……まあでも妾に挑める最低ラインの実力は兼ね備えているようだな」
龍王は少し考える素振りを見せたあと身体が光に包まれた。
無名は目を覆い光が収まるのを待つ。
やがて光は消え無名が目を開くと、そこには絶世の美人がいた。
白く長い髪が風に揺れ、容姿は女神と言わんばかりの綺麗な姿。
「どうした、人化の魔法は初めて見たか?」
「その声は……龍王リヴァリア様ですか?」
絶世の美女の口から出てくる声は先程まで聞いていた声とそっくりであり、人化の魔法という言葉も相まって無名は同一人物なのだと結論づけた。
「そうだ。妾は龍王リヴァリア、この姿を見せてやるのは貴様が相応の力を身に着けていると分かったからだ」
「それは……ありがとうございます?いえ、それよりもどうしてそのお姿を僕に見せてくれたのでしょうか?」
「人が住まう街へ行くのにあの姿で行けと?」
いまいち話が噛み合っておらず無名は困惑した表情を見せる。
「人が住まう街へ行くというのはどういう意味ですか?」
「そのままの意味だ。見よ、妾の家を」
リヴァリアは瓦礫の山と化した龍の魔窟を指差した。
無名も釣られてそちらへ視線を送る。
「あそこに住めというのか?」
「いえ、そうは言ってませんが……」
「貴様は妾が認めた人間。ならば妾に住処を用意する事を許す」
とんでもない上から目線に無名は開いた口が塞がらなかった。
「どうしたその顔は。貴様の家へ案内せよ」
「僕は持ち家がありません。というのも――」
無名はここから一番近い獣王国に身を寄せてはいるが、元々アルトバイゼン王国の人間なのだと説明する。
理解しているのかいないのか、リヴァリアはウンウンと頷いていた。
「――というわけでして、今はガルスという方の家を間借りしている状況なんです」
「ふむ。ならば家を作ればよいだろう」
「あの……作るというのは?」
「人間が住まう家くらい片手間で建てられるだろう?」
龍王の常識を当てはめようとするなと言いたかったが、無名はグッと堪える。
「まあよい。道すがら説明してやる。とにかくその獣王国へと案内せよ」
「わ、分かりました」
リヴァリアの有無を言わせぬ重圧に押し負けた無名はミルコを抱えたまま獣王国へと帰ることになった。
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