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第34話 全てを拒む大結界

王都から煙が立ち昇る。

それも一本や二本ではない。

いくつもの煙が柱のように天に向かって伸びていた。


門前には兵士が数人立っているのが普通だが、もぬけの殻だった。


「これは……中はとんでもない事になっていそうですね」

「私が街を出た時よりも悲惨な状況になっている可能性は考慮した方がよさそうね」

レイラも剣に手を掛け警戒する。

無名も魔法をいつでも発動できるよう魔力を掌に収束させていた。


「血の臭いがするよ」

ミルコの言葉に二人の顔色は険しくなった。

少なくとも平和的な状況ではないだろう。


「警戒しつつ王都に入りましょう」

無名達はそっと門に張り付き扉を強く押す。

すると扉は油の差していない蝶番の音を掻き鳴らしながらゆっくりと開いていく。


王都内が視界に収まると三人共が顔を顰めた。

至る所に人間の遺体が転がり、魔物の死体もそこらに倒れていたからだ。


「凄いねこれ……生きてる人いるかな?」

ミルコが鼻をスンスンと鳴らし顔を左右に動かす。


「いるね。ここから真っすぐ行ったところに人が沢山いるよ」

「まさか……王城の方か!」

レイラが剣を抜くと駆け出した。

無名達も置いていかれないようレイラの後を追う。


街は異様なほど静かで少し不気味に感じるほどだった。


「何故街の人も居ないんでしょうか」

「分からない……私が逃げてくる時はまだ騒ぎの真っ最中だったけど」

何処かに隠れているにしてもあまりに静かすぎた。

小さい物音一つ聞こえず無名の気配察知にも引っ掛からない。


「なっ!?なんだこれは!」

王城まで後少しといった所で無名達の足が止まる。

レイラは驚き無名も目を見開いていた。


「この中から人の匂いがするよ!」

ミルコが中と言ったのは結界の中を意味していた。


王城を中心に白い結界がドーム状に展開されていて、中の様子も探れない状態になっていた。


「この結界は……」

王城どころかその周辺もすっぽり覆ってしまうような大規模結界は無名でも発動できないレベルだった。


「こんな大きな結界、私が街を出る時にはなかった!」

「では誰かが王城を守る為に張ったのでしょう。中に入れない事には調べようがありませんね」

大規模結界になれば無名も全力を出して破れるかどうかだ。

レイラとミルコの協力があってもかなり厳しいかもしれない。

それにこんな状況の王都で魔力が尽きるのはリスクが大きすぎると無名はその選択はしなかった。


「開けてー!誰か中に入れてよー!」

ミルコが大声で叫ぶが、当然中から反応はない。

しかし無名には一つだけ心当たりがあった。


これだけの大規模結界だ。

並大抵の魔法使いでは不可能な領域であり、最優の勇者朝日莉奈の仕業ではないかと考えていた。

もしそれが合っているのならば、勇者は健在で今も尚生きている証明である。


問題はどうやって中の人間と連絡を取り合うかだったが、方法は一つ。

無名の転移魔法でくぐり抜ける方法だった。

これはリスクの大きい賭けでもある。


万が一結界内に飛べなかった場合、一体何処に転移してしまうか分かったものではない。


「うーん、叩き割るのは難しそうー……」

ミルコは大剣を上段に構えたが、無理だと判断したのか剣を下ろす。


「何か手はないか考えてみます」

と言ったはいいものの、無名に残された方法は結界内への転移か全力でぶち破るか、しかなかった。

どちらも相応のリスクがある。

だがこの結界を破ったとして、万が一朝日が張っていたものだとしたら、身体に相当な負担がかかるはずであった。


「決めました。僕が結界内に転移します」

「え!?」

「無名さん、貴方そんな魔法まで使えるの?」

ミルコは驚きレイラは呆れたような表情を浮かべる。

レイラのようなベテラン冒険者からしても転移魔法は殆ど伝説の魔法に近しい。

それを使えると言うのだから勇者は本当に規格外なのだと再認識する。


「失敗すれば僕の身体は千切れ飛びますが、成功すれば中にいる人に声を掛けて二人を入れてもらいます」

「頼んだよ無名ー!」

「お願いします」


二人だけを結界の外に残すのも気が引けたが、仕方ないと割り切り無名は転移魔法の発動準備に取り掛かる。


目標は自身からおよそ三メートル先。

座標がはっきり分からずとも短距離転移なら問題ないはず。

そう自分に言い聞かせながら転移魔法を発動した。



目を開けると周囲には瓦礫と化した建物が散乱しており、先ほどいた地点から数メートル前方に飛べたようであった。


辺りに人はおらず、簡易的なテントのようなものが点在している。


「誰かいますか!?」

無名が大きな声を上げると何処からともなく剣を構えた兵士がゾロゾロと現れた。


「何者だ!」

「魔族か!?」

「そこから動くな!」

みな口々に警告を発する。

無名も彼らを刺激しないように両手を挙げ、敵意がない事を示した。


「僕は神無月無名です。救援に駆けつけました」

「無名?聞いたことがあるぞ……」

「あの黒髪……もしや勇者様か?」

「いや待て。魔族が皮を被っているだけかもしれん」

平兵士では判断できないと思ったのか、一人が何処かへと駆けて行った。


「動くなよ……動けば迷わず全員でたたっ斬る」

「もちろんです。誰か話が通じる方が来るまでジッとしておきます」

彼ら程度の兵士なら数秒で片がつくがそんな事をすれば、王国に敵意ありとみなされてしまう。

できるだけ刺激しないよう、無名は一歩も動かずに指揮官が来るのを待った。


しばらく待っていると鎧を着た騎士が遠くから走って来るのが見えた。

その騎士は無名もよく知っている者であった。


「ランスロットさんですね!?」

「無名か!よく来てくれた……全員武器を下ろせ。彼は正真正銘の勇者だ」

ランスロットが片手を上げると兵士達は武器を下ろす。

剣聖である彼の言葉に反する事は死を意味する。


「来てくれ。他の勇者の所に案内しよう」

ランスロットに着いて王城の中に入っていくと、城の中も戦闘跡が生々しく残っていた。

壁に斬撃の跡や、調度品は砕かれ地面に散らばっている。

激しい戦いが繰り広げられたのだろうと容易に察する事ができた。



「ここだ、入ってくれ」

ランスロットが扉を開けると、中にいた数人が扉の方へと視線を向ける。


「無名!無事だったのか!」

その中の一人、黒峰が無名の姿を確認すると立ち上がり駆け寄った。


「黒峰さん、それに他の方々も。ある程度の話は聞いています。まずこの大結界を解いてもらえませんか?」

「ああ、待ってくれ。いやそうだよな、大結界が張られてあるはずなのにどうして無名は入ってこれたんだ?」


有り得ないはずの事実に気付いた黒峰は不思議そうに首を傾げる。

無名も今は説明している時間がないと話を逸らし、大結界の解除を促した。


「莉奈ちゃん、結界を一時的に解けるか?」

「はい。ですが魔族が入って来るかも知れませんが……」

「それは問題ありません。外には僕と共に来た二人以外に魔族はおろか人影一つありませんでした」

その言葉を聞き安心したのか、莉奈は両手を頭上に掲げた。

すると結界がゆっくりと解かれていくのが、窓の外に見える。


これであの二人も入ってこれる。

無名は一安心すると、ランスロットに後から来る二人もここに案内してもらうよう頼んだ。


「それにしてもお前一体何処にいたんだ……フランさんもお前を探していたんだぞ」

「ええっと……それについては話が長くなると思いますので後で説明します」

「本当だろうな?またいつの間にか消えちまうなんて事はやめてくれよ?」

黒峰は無名に疑いの目を向ける。

この世界に来て既に一年が経過しているのにも関わらず、無名が黒峯達と共にいたのはほんの数日間程度。

また今回も事が収まると何処かへ行ってしまうのではないかと疑っていた。



そんな黒峰と会話を交わしていた無名はある事に気付く。


「あれ?そういえば斎藤大輝はどこにいるんでしょうか?」

部屋の中にいたのは黒峰、茜、莉奈の三人だけ。

大輝の姿はどこにもなかったのだ。


無名がそう口にすると三人とランスロットは一様に顔を俯かせる。

何となく状況を察した無名だったが、先に黒峰が口を開いた。


「死んだよ。アイツの墓は中庭にある」

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