表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼に勇者は似合わない!  作者: プリン伯爵『虹色魔導師は目立ちたく無い』発売中!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/111

第8話 リベンジマッチ

「今度は上手く連携して動けるかな?」

日が暮れた湖のほとりには三人の男が向かい合っていた。

無名は両手に剣を持ち、レイオールは両手に魔法陣を展開し片方はカイルにもう片方は無名へと向けている。


二度目の挑戦。

無名とレイオールは覚悟が決まった表情で顔を見合わせる。


「いつでもいいよ」

「……求む力は火の如く(ファイアーアップ)

レイオールのバフ魔法は無名の身体を火で覆うものであった。

不思議と熱さを感じないが無名が足元へ視線を落とすと、草木が焦げていた。


「力が漲ってくる……」

無名に与えられた加護は筋力上昇、持久力増加、反応速度強化と三つのバフであった。

本来この魔法は騎士などに掛けると鬼神のごとし力を得る強化魔法だ。

決して魔法を主軸で戦う無名に掛けるバフではない。


「いきます――稲妻よりも疾く(クイックスパーク)!」

レイオールのバフに加えて更に加速する無名はもう目で追えるような速さではなかった。

瞬きする間にカイルへと肉薄した無名は両手の剣をクロスさせるように振り下ろした。


手加減抜きの一撃。

確実に斬った手応えはあった。

しかし無名は追撃を繰り出す。


二撃三撃と何度もカイルを斬りつけると五度目の斬撃で無名の手が止まった。


「斬った……のか?」

手を止めた無名はズタズタに斬り裂かれたカイルと思わしき人間が地面に横たわっている。

手加減抜きの攻撃はやり過ぎたかと思ったのも束の間、レイオールからの激が飛ぶ。


「……無名!後ろだ!」

「ッッッ!」

声が聞こえると同時に振り返りながら剣を振るった無名は目を疑った。


そこには先程斬り刻んだ筈のカイルが口角を上げ剣先を無名へと向けて突っ込んでくる姿があった。


「私も流石に肝が冷えたよ。無名君が斬ったのは私であって私ではない」

「意味がッ分かりませんッ!」

カイルの剣を弾きながら無名は本音を零す。

確かに斬ったのだ。

肉を裂き骨を断つ感覚もあった。

どう考えても幻ではない。


「そうだろう?それが理解できたら錬金術師としてやっていけるよ」

カイルの得意とする錬金術。

その中でも相当な研鑽を積み生み出した術だ。


人造人間生成(ホムンクルスクラフト)、ちなみに命名は私だよ」

「そのまんまッですね!」

喋りながらもカイルの剣戟は止むことはない。

無名はそれを必死に対処しながら言葉を返す。


錬金術師でありながら剣術はあのランスロットをも超えるのではないかと言える程の腕前。

無名はよくて上級騎士程度の実力しかなかった。


「おっと!足元が疎かになっていないかい?」

「……それは対策済みだ」

剣に意識を向いていた無名はハッとした表情で一瞬足元に視線を落とす。

しかしレイオールの魔法が功を成したのか飛び出てきた石柱は炎の壁に阻まれ勢いを落とした。


「ほう……なかなか面白い魔法を使うものだねレイオール。しかし私が言ったのは君になのだよ?」

「……なに?」

突如レイオールの足元から複数の石槍が出現し腕と足を貫かれた。


「ぐあッッ!」

激しい痛みが襲い掛かり無名にかけ続けていたバフ魔法が途切れた。


「強化がなければ急に動きが悪くなったよ無名君」

「立て直しますッ!レイオール!しっかり!」

「……まだ大丈夫だ求む力は火の如く(ファイアーアップ)!」

カイルから距離を取った無名はレイオールのバフ魔法をその身に受けた。

痛みを堪えながら支援を続けるレイオールを見てカイルはニィと笑う。


「連携が悪いねぇ?そら、これはどうかな雷撃裂爪(ブリッツネイル)

初見で防ぎきれなかった攻撃を無名は全身を覆う結界で防いだが、レイオールはバフ魔法に魔力を割いており自身の守りが疎かになっていた。


「ガァァッッッ!」

幾本もの鋭利な爪に貫かれレイオールは悶絶の声を上げた。

これ以上の戦闘は危険と判断した無名は手元の剣をその場に落とした。


「あれ?もう終わりかい?」

「ええ……レイオールが死んでは意味がありませんので」

カイルはその言葉を聞き優しく頷くとポーションを投げて渡す。


「これを使うといいさ。今日はここまでにしようか。また二日後の挑戦を待っているよ」

「明日にでもいけます」

「いいや、身体を休めた方がいい。無名君も目元に隈ができているよ」

実際殆ど寝ていない無名は目を逸らしレイオールへと駆け寄る。

カイルに貰ったポーションを傷口にかけてやると、すぐに血が止まり傷が塞がっていった。


「この回復力は……」

「凄いだろう?上級回復薬を作ったんだ」

カイルは簡単に言うが、上級回復薬を作るには相当量の魔力と高度な知識が求められる。

当然買えばそれなりの価格であり、錬金術師であるカイルだからこそタダでくれたようなものだった。


「じゃあここらでおいとましようかな。二日後楽しみにしているからね」

カイルは満足したのかニコニコとした表情でその場を後にした。



――――――

家に帰らずカイルは洞窟へと向かう。

その奥深くにある魔法陣の上に立つとつま先で地面を叩いた。


カイルが長年かけてあみ出した設置型の転移魔法陣であり、膨大な魔力と引き換えに予め決めておいた地点へと瞬時に移動することができる代物だった。


カイルが向かったのは魔国の中でも寂れた地域である。

何度も訪れているからか足取りは迷う事なく一直線に目的地へと赴く。


やがて一軒の朽ちた廃屋に辿り着くとポッケからタバコを取り出し指先で火をつけた。


煙を口の中でくゆらせ美味しそうな表情で息を吹き出す。


「チッ、またお前か。今度は何だ」

廃屋で待つこと数分、一人の魔族がやって来て開口一番舌打ちをした。


「やぁ、久しぶりに会いたくなってね」

カイルは短くなったタバコの吸い殻を地面に投げ捨てると足で踏みにじりながら、魔族の男に片手を上げる。

まるで旧知の仲かのように。


「用件はなんだ。お前が私にまともな用事を持ってきたためしがない」

「まあまあそう言うなよハルファス」

待ち合わせに現れた魔族は、リンネ教と懇意にしているハルファスであった。


「今回はお前にも利がある話を持ってきたんだ」

「さっさと言え」

もったいぶるカイルに苛立ちを覚えたのかハルファスは険しい表情で続きを催促する。



魔族と関わりを持つ人間は少ない。

リンネ教が特殊なだけで普通は魔族と関わりを持つ機会などないのだ。

しかしカイルは違った。

錬金術の深淵を覗く為魔族をも利用したのだ。



カイルはニヤッと笑い肩を竦めて話を続けた。


「魔族にとって勇者は脅威だろう?丁度良く王国に匿われていない勇者が身近にいるんだけど」

「何だと?」

聞き捨てならない言葉にハルファスは目を見開く。


「それを私に伝えてお前に利があるというのか?」

「さあ?おじさんは昔の知り合いにちょっとした世間話を振っただけだよ」

「あくまでシラを切るつもりか。……まあいい、それでそいつはどこにいる」

「エルフの森さ。集落からはかなり離れているからお前も近づける場所だよ」


エルフの集落には結界が施されており、魔に連なる者は近づく事も容易ではない。

しかし集落から遠ざかれば遠ざかるほど結界の効果は弱まり魔族であっても近づけるのだ。



「お前が何を考えているか知らんが本当によいのだな?」

「いいも何も私はただ教えてあげただけだからね。ああ、気をつけた方がいいよ。彼には仲間がいる。それもエルフの中でもトップクラスの魔力量を持つ奴さ」

「私は決して弱い魔族ではない。貴様が異常なだけだ」

ハルファスは過去を思い出し苦い表情でカイルから顔を背けた。

人間と魔族が関わりを持つという事は何らかの諍いがあっという事を意味する。

カイルとハルファスは過去に出会い、そこで当然のように戦いがあった。

結果はハルファスの表情が物語っていた。


「まあいい、お前の情報感謝するぞ」

「感謝されてもねぇ」

苦笑するカイルを不気味に感じたハルファスは踵を返しその場を後にする。

残されたカイルはどことも言えない空を眺めて呟く。


「さぁ、荒療治の始まりだよ無名君。よぅく学ぶといい。命の大切さというものを。ね」

ブックマーク、評価お願いいたします!


誤字脱字等あればご報告お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ