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第一章 エピローグ

国境での防衛戦が終わってから二日後。

高速馬車に乗ってやってきた[静かなる裁き]の面々は呆気に取られてしまった。


想像していたのは領内が法国軍に占領され厳しい戦いを強いられるというものだったが、セニアの目に飛び込んできたのは至って平和なミストルティン領であった。


「これは一体……」

「なんだか本当に戦争してたのかなってくらい穏やかじゃない?」

リコも馬車から降りて辺りを見回すと不思議そうに首を傾げる。


平穏そのものであるミストルティン領内では、いつも通りの日常が送られていた。


「とにかくミストルティン辺境伯の屋敷へと向かいましょう。それに……先行したはずの無名さんも探さねばなりません」

セニアの部隊は真っ先にドレイクの屋敷へと向かう事にした。

聞いていた話ではミストルティン領は確実に占領されてもおかしくはなかったのだ。

それがこうして平穏に今まで通りの生活を送っている様子を見れば、早く理由を知りたかった。



ドレイクの屋敷に到着すると、何ら変わりがなく門兵も暇そうに欠伸をする始末だった。


「失礼、王都から救援に参りました[静かなる裁き]のセニアと申します。ミストルティン伯はおられますか?」

「セニア様ですか!わざわざこんな辺境までありがとうございます!すぐに取り次ぎますので少々お待ち下さい!」

門兵はセニアの美貌に鼻を伸ばし狼狽えながら屋敷の中へと走って行った。


しばらく待つと執事らしき人物が現れ敷地内へと案内される。

ドレイクは中で待っていると、部屋の前まで案内すると執事はその場を後にした。


「失礼します」

ノックし扉を開けるとそこにはベットに横たわるドレイクの姿があった。

腕や足には包帯が巻かれ、痛々しい様相になっている。


「[静かなる裁き]のセニアです」

「む……セニア殿か。久しいな」

ドレイクとセニアは旧知の仲だ。

冒険者であれば各地に赴く事も多くドレイクと共闘した事も何度かあった。


「その様子は……激戦だったのですか?それにしては領内が平和でしたが」

「それなのだがな……貴殿は知っておるか?万能の勇者を」

そんな二つ名が付くのは一人しかいない。

セニアは静かに頷いた。


「あれは……化け物だぞ。儂が完全に敗北した法国の勇者を一蹴し、あの女王まで手にかけた」

「いまいち話の流れが分からないのですが」

「簡潔に言うと万能の勇者がたった一人で何十万もの法国軍を退けたぞ」

セニアは信じられないと言わんばかりに目を見開く。

何十万の兵を相手にできるなど常人の域ではない。


ドレイク・ミストルティンは誰もが認める強者であり、そんな彼が勝てなかった勇者を倒しあまつさえ女王の首を獲る。

そしてその後何十万の軍を相手取るなど正気の沙汰ではなかった。


「その勇者は今どこにいるか分かりますか?」

「儂も気を失っていたからの、聞いた話になるが――」

ドレイクは法国軍の数人だけ逃がし他は全て勇者が殺した事、その際も平然としており大量の命を奪った認識がなさそうだった事、悠久の魔女フランによって勇者が何処かへと連れて行かれた事を話した。


「儂も聞いたときは同じ反応したぞ。あれは……我々人間と同じと思うべきではないな」

「……そうでしたか。分かりました、では私達はこれで引き揚げます。恐らく他の冒険者もここに来られるとは思いますが」

「それに関しては良きに計らおう。わざわざ王都から駆け付けて来てくれたのだからな」


ドレイクとの話も終わり屋敷の外に出るとクランマスターも到着したらしく馬車に寄りかかりながらセニアが出て来るのを待っていた。


「話は終わったかい?」

「はい、全て終わった後のようですね」

「なるほどなるほど……じゃあ帰りの馬車で聞かせて貰おうかな」




――――――

セニア達と入れ違いで黒峰ら勇者パーティーがミストルティン領内へと到着した。


彼らも想像していた光景と違い絶句していた。


「なんだこれ?法国軍が攻めてきたって話じゃなかったのか?」

どこも煙など上がっておらず争いがあった形跡一つない光景に黒峰は辺りを見回す。

到着次第すぐに戦闘が待っているだろうと気合を入れていたのにあまりののどかさにやり場のない気持ちに襲われた。


「何があったのか知る必要があるな……とりあえず全員ドレイク殿の所へと向かおう。あの方なら何か知っているだろう」

ランスロットの言葉に全員頷くと再度馬車に乗り込む。


ミストルティン辺境伯の屋敷へ向かう為、街を馬車で駆けて行くがどこもかしこも平和な日常が送られていた。


「冒険者が間に合ったとかかな?」

「もしくは早馬で情報を伝えに来た方がパニックから攻めてきた法国軍を過大評価した可能性もあるのではないでしょうか?」

茜と莉奈も首を傾げてああでもこうでもないと言い合う。



ドレイクの屋敷へと辿り着いた一行は、セニアの時と同じく執事に部屋まで案内される。


そこで事の顛末を聞かされた一行はセニアと同じ反応を見せた。


「無名が先に来ていた?俺達もかなり急いで来たんだ、そんなはずはない」

「しかし実際に無名が暴れた結果だろう。彼以外に何十万の法国軍を退ける奴はいない」

黒峰達は王家専用の高速馬車でここまで来ていた。

当然早馬から齎された伝令は真っ先に国王へと伝えられる。

つまり王城にいた黒峰達は情報を手に入れるのも早かったのだ。


なのにも関わらず無名が先に着いているというのが信じられなかった。


「で?暴れるだけ暴れてどっかへ消えた?意味わかんない」

茜は相変わらず自由気ままに行動する無名が気に食わなかった。

救援に駆け付けたまでは理解できる。

しかしわざわざ敵国とはいえ、勇者と女王まで殺し挙句の果てに攻めてきた軍隊をほぼ全滅させているのが理解できなかった。


いくら敵国の人間でも同じ人間であることは変わらない。

もしも自分だったら平静でいられないだろうと思うと無名の心は壊れているのではないかと考えていた。


「貴殿らも勇者と言うことはあの怪物と同じような力を持っているのか?」

「いえ、それは違いますドレイク様。俺達も勇者ですが彼は別格のようですので」

「ふうむ……それにしてもあまりに他の勇者と力の差が乖離しているように思うな」

五人の勇者でここまで力に差ができるのかと思うと、黒峰は本来召喚されるはずの人間は無名だけだったのではないかと思わずにいられなかった。


「それで結局無名は行方知れず……か。謹慎処分が終われば今度は姿をくらますとか、もっと落ち着けないもんなのかアイツは」

茜のように嫌ってはいないがあまりに自由気ままな無名に黒峰も呆れ果てていた。


「しかしこれは他国も黙っていないかもしれません。ルオール法国が全力を挙げて我が国へと攻め入るという情報は手に入れている筈ですから」

「うむ……それを殆ど被害を出さずに撃退したと分かればレブスフィア帝国が黙っていないかもしれんぞ」

ランスロットとドレイクは別の問題が出てくる事を危惧していた。

レブスフィア帝国といえば大国であり、軍事力も経済力も王国と比べれば完全に上位互換であった。


今までは不干渉を貫いていたが、今回の一件で見て見ぬふりはできなくなっただろうと二人は考えていた。


「この件は王都に持ち帰り協議にかける必要があるでしょう。しかし、こう言ってはなんですが……貴方が無事で何よりです」

「儂もなかなか死ねんものよ。剣聖の称号をお前に取られてからはあまり剣を振るっていなかったのだがな」

「国境の守りが万全なのは貴方がいるからです」

「高く評価してくれるのは有り難いが、勇者の力をその目で見てしまえば高みを目指すのも馬鹿らしく感じるぞランスロット」

「確かに……ここにいる四人の勇者もいずれ私を超えるでしょう。四人の勇者が育ち切る前に帝国が我ら王国に対して牙を剥かぬことを祈るばかりですね」



ドレイクとランスロットはこれからの王国で巻き起こるであろう帝国からの横槍について夜遅くまで話し合うのであった。

ブックマーク、評価お願いいたします!

誤字脱字等あればご報告お願いします。


今回で第一章が終わりとなりました。

一章は王国内が舞台となっておりましたが、これから舞台は大きく広がっていきますので、引き続き第二章も楽しんで頂ければ幸いです

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