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第33話 異常な男

ドレイクは視界の端で見えた空に浮かぶ無数の魔法陣を見て口角を上げる。

強力な助っ人が来たのだと明らかに分かったからだ。


現時点では誰が救援に来たのか分からなかったが、味方が増えたのは誰であろうと嬉しいものである。


負け戦だと思っていたが、これは少し風向きが変わるぞとドレイクは手に持つ大剣の柄を強く握る。


「どうやら我々の救援が来てくれたらしいぞ勇者殿。どうする?絶対に勝てる戦いではなくなったのではないか?」

「いいえ、結果は変わりません。こちらには私もおりますので」

エミリアの言葉にドレイクは顔を顰める。

確かに勇者の力は別格であり、多少の救援程度意味を成さないかもしれなかった。


「もしかしたら我が国の勇者かもしれんな。そうなれば勇者対勇者の戦いが見られるということだ。クックック、ここで死ぬわけにはいかなくなったではないか」

「あちらの方では甚大な被害が出ているようですが、まだここまで距離があります。もしあそこにいるのが勇者だとしても私が貴方を殺す前に辿り着けますか?」

「さあな?儂には分かりかねる。だが、それくらい保たせてみせようではないか!!来い!勇者殿!儂を倒せるものなら倒してみせよ!」

エミリアと二言三言、言葉を交わすとドレイクは守りの構えを取った。


勇者と長く戦い続けるには守りに徹さなければ不可能だと判断したドレイクは攻勢に出る事を捨てた。


「守った所で私の剣閃は躱せません!風刃斬撃(エアリアルストライク)!」

「いいやそれはどうかのう!金剛の盾アダマンタイトシールド!」

鉄壁とも思える頑丈な盾を地面から生み出すとエミリアの剣技を完全に防ぎ切る。


「ふっはっは!儂が剣だけに生きていると思うたか!」

「……想定外ですね」

エミリアは眉をへの字に曲げると、再度距離を取った。


金剛の盾アダマンタイトシールドは地属性の防御魔法としてはかなり高難度の魔法である。

エミリアの放つ剣技でもそう簡単に貫けぬ程の頑丈さを誇り、ドレイクの使える数少ない魔法だった。


その後何度もエミリアが攻撃を重ねたが、ヒビが入る程度で貫ける様子はない。

ドレイクの魔力が尽きるのが先か破られるのが先か、辺りを取り囲む兵士は固唾を飲んで見守る。



しかし、戦いが長引けばドレイクの出血は増えるばかり。

既に顔色は悪く今にも倒れそうな雰囲気だった。


「もう十分でしょう。これ以上やれば本当に死にます。ドレイク殿、負けを認めて下さい」

エミリアもそろそろ嫌気が差したのか、剣を鞘にしまいドレイクへと提案を持ちかけた。


「砕けん……と思って……負けを認めろと、そう言っておるのか?……儂を倒したくばこの盾を砕いて、見せるが……いい」

息は絶え絶え、喋ることすらキツイのかドレイクの言葉は聞き取りづらかった。

エミリアも煽られているのだと気付き、鞘にしまった剣に手を掛ける。


「この一撃は冗談抜きで貴方を確実に殺してしまうでしょう。貴方ほどの騎士をこの場で討ち取りたくはありません。負けを認めて下さい」

「戦場で散るのが騎士の務め。……貴殿もそう思っているのだろう?儂は……何を言われようと認めんぞ」

エミリアの弱点は優しすぎるところであった。

敵に情けをかけるのは、戦場でのタブー。

エミリアが元の世界で歴史に名を残す誇り高き騎士になれなかったのはそれが起因していた。


「貴殿はまだ……若い。だから分からんのだろう。……しかし、敵に情けをかける事は一種の侮辱!この戦いを終わらせたくばその手で終わらせて見せよ!」

ドレイクは負けを認めない。

彼の言う通りエミリアの手でその命を刈り取らなければいつまでも終わらないだろう。


エミリアは歯軋りをしながら、剣を抜いた。


「いいでしょう!ここで散りたいというのなら!私の手で!」

エミリアの身体が緑の光に包まれていく。

全ての魔力を解放した時だけにしか見られないエミリアの本気。


法国軍の兵士はエミリアが遂に本気を出すのだと、身を震わせた。


「風より疾く、音すら残さぬ刹那の一撃、隔絶たる剣の閃き(エアリアルフラッシュ)!」


エミリアの身体がブレると、次の瞬間にはドレイクの目の前で剣を構える姿があった。


「ッッッ!?」

ドレイクは目をカッと開き、先程までの戦いは本気ではなかったのかと思い知らされる。


エミリアの剣はまるで空を切るかのように滑らかにドレイクの盾ごと斬り裂く。


金剛の盾アダマンタイトシールドは形を維持できる瓦解する。


「クックック……見事……」

ドレイクの胴を斬りつけたエミリアの一閃は痛みすら感じさせぬ程に素早く、少し遅れて血飛沫が舞う。


「ドレイク様!!」

「剛剣が……敗れた……」

「あれが勇者の力なの……?人間じゃないわ」

皆、口々に呟き嘆きドレイクの敗北を受け入れられず、士気は下がっていく。

誰が見てもドレイクは瀕死の状態。

今更回復魔法で手当てを受けた所で意味はないと誰もが理解していた。



そんな時、稲妻が走りエミリアとドレイクの直ぐ側に無名が現れた。


「ああ、少し遅かったか……貴方がこの地域のリーダーですね?」

既に死に体のドレイクにお構いなく無名は話し掛ける。

ドレイクも誰だこいつはと言わんばかりに懐疑的な目を向ける。


「名乗り遅れました、万能の勇者、無名です」

「万能……の、勇者……だと?」

「はい。もう一度聞きます、貴方がこの地域のリーダーですね?」

救援に来てくれたのが勇者だと分かりホッとした顔でドレイクは頷く。


「ではこれより貴方の指揮下に入ります。……と言ってももう長くはないでしょうから、単刀直入に聞きます。法国軍を完膚なきまでに叩き潰しても構いませんか?」

何倍もの大軍を引き連れてきた法国軍を完膚なきまでに叩き潰すと言ってのける無名に、ドレイクは乾いた笑いを溢す。


「クッ……ハハ……やれるもんならやってみせよ……。儂の代わりに、暴れて、やれ……」

「分かりました」

無名はそれだけ言うと今度はエミリアへと顔を向ける。

先程まで余裕そうな表情のエミリアの顔は強張っていた。


強者であればあるほど無名の異常さに気づく。

身体を纏う魔力は常人のソレではなく、魔族と言われても信じてしまう程に膨大だった。


「貴方がこの方を瀕死に追いやったんですか?」

「ッッッ!?」

無名はドレイクを指で差しエミリアへと問いかけた。


無名の目を見たエミリアは肩を震わし動揺する。

彼の目は殺意が籠もっておらず、ただ無感情だけが感じ取られた。


戦場にいながら、敵に殺意を持たず殺せる者がいるだろうか。

否、無名が特殊だからである。



「聞こえていますか?この方を瀕死に追いやったのは貴方かと聞いているんです」

黙ったままのエミリアに無名は問い掛けた。

このまま黙ったままでいるわけにもいかず、エミリアはゆっくりと頷く。


「……なるほど。少なくとも貴方は弱くなさそうだな」

無名は小さく呟くとドレイクを守るように立ち塞がる。

エミリアも彼に習い、剣を抜くと構えを取った。


「確かこういう場合は名乗るんでしたか?」

「……ええ、そうですね。慣例に従うのであれば」

目の前の男は異常。

普通ではない。

そんな男が慣例に従って名乗るとは思えず、今すぐにでも攻撃に打って出られるようエミリアは腰を落とし突きの構えに変えた。



「えー、万能の勇者、神無月無名です」

「…………」

「名乗らないんですか?」

あまりに自然に名乗りを上げたせいでエミリアは不意を突かれたようにだんまりで返答してしまった。


「……天嵐の勇者、エミリア・テンプルトンです」

「ああ、やっぱりそうでしたか。何となくそんな気がしました」

やる気があるのかないのか無名は構えすら取らず、あまりに自然体で返答する。


ふと無名の視線がエミリアの手に移ると、ホッとしたような胸を撫でおろす仕草を取った。


「よかった……赤い紋章で」

無名の呟きはエミリアに聞こえる事はなかった。

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