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第27話 開戦

「ドレイク様!!敵の中に勇者と思わしき人物とその横にはあの女王がおります!!」

監視塔から聞こえてくる部下の声に耳を傾けると、ドレイクの眉はへの字に曲がった。


「ルクレティア女王が戦場に……?それだけ本気という訳か。全軍に通達!敵は今までのような半端な戦い方はせんと心得よ!全力で迎え討て!」

「「「了解です!!」」」


ドレイクは背負った大剣の柄を握ると険しい表情で迫りくる敵を見つめる。

恐らくこの戦い、勝てはしないだろう。

数も質も敵国に劣るミストルティン辺境伯領の私設部隊で片が付く相手ではない。

ただの雑兵であれば正直ここまで焦燥感に駆られる事はなかったが、女王と勇者がいるとなれば話は別である。


士気も高く敵兵の質も女王の直属部隊がいる以上低く見積もっても上級騎士レベル。

対してドレイクの私設部隊であるミストルティン騎士団は50名だけ。

万の敵を相手取るにはあまりにも少なかった。

本来は数百の騎士がいるのだが、娘と息子の遠征の為そちらに殆どの騎士団を預けていた。

今残っているのはドレイクを守る為だけの少数の騎士であった。



「全軍合わせて五万、国境沿いに配置完了いたしました!」

五万もの軍隊を保有している貴族というのも珍しいが、敵は六倍にものぼり今回に限っては安心感はない。


「接敵までおよそ一刻です!」

いよいよ敵兵が肉眼で確認できる距離まで近付くと、兵達にも緊張感が走る。

ドレイクも大剣の柄を握る手に力が入った。


ドレイクが剛剣と呼ばれ王国内でも屈指の実力者といえども六倍の差は埋められない。

ましてや今回は勇者までいる始末。

敗北は必至であり、ドレイクは心の中で子供達に謝罪する。

自分が討たれれば次期当主は息子に移る。

40代で出来た子供という事もありまだ息子は二十歳と少し。

まだ当主として学ばなければならない事は多く、それを全て教えきれなかったのが残念に思っていた。


「ドレイク様、そろそろ弓の射程圏内に入りますが、敵軍から少数の団体が先行してこちらへと向かってきております」

「ふん、恐らく降伏せよと言ってくるだけだろう。儂が相手をする。拡声石の用意を」

国同士でかつ、総大将を務める者がそれなりの立場であれば、戦争を始める前に第一声で降伏勧告をする。

お互い命がある以上、出来る限り無血開城したいのだ。

しかしドレイクは引くわけにはいかなかった。


国境を任されるという事は、絶対に引いてはならない。

国王を裏切る事になってしまう。

その為どれだけ戦力差があろうと、降伏は出来なかった。




敵軍の中から数名を供につけ、戦場の真ん中まで出てきたのはルクレティア女王と勇者であった。


「妾はルクレティア・ルオール女王である!こちらは30万の軍勢を引き連れており、貴殿らに勝ち目はないだろう!妾とて無意味な殺生は好まん!故に!降伏する事を勧める!」

まだかなりの距離があるが、ハッキリとした声量でドレイク達の所まで声が届いてきた。

拡声石を使っているようで、ドレイクも部下に用意させた拡声石を口元に当てた。


「国境守護を任せれておるドレイク・ミストルティンだ。悪いがそちらの提案は拒否させて頂こう。儂らとて王国の騎士。無血開城はせんとここに誓う!」

「ドレイク殿か……やはり剛剣が出てきたか。こちらは勇者を連れ立っている。いくら貴殿が強かろうと勇者相手に善戦はできるかな?」

「ふん、つまらん挑発だ。30万の軍勢がいようと我らミストルティン騎士団を超えられるか……見せてみるがいい!」

お互い数秒の無言の後、ルクレティアの集団は自軍の元へと引き返していく。

ドレイクも拡声石を部下に手渡すと、配置へとついた。


敵もどうせ降伏するなどと思ってはいない。

これはあくまで形式上のものだ。

ただ、正々堂々戦おうという意味合いが強い。


「今なら弓を射かける事ができますが……」

「ならんぞ。背後から射るなど騎士の名折れ。女王が自軍に戻るまで待機だ」

ルクレティアは射程圏内にいる。

矢を射れば殺せるだろう。

その代わり王国は卑怯者というレッテルが貼られる事となる。

すなわち国王からの信頼を裏切る行為だ。

ドレイクはそんな事、容認できるはずもなかった。



――――――

自陣に戻ったルクレティアは背後から矢を射る事がなかったドレイクに感心していた。

剛剣と聞けば誰もが震え上がる。

騎士の中の騎士とも言われる彼が、卑怯な手を使うはずが無いと信じていた。


「剛剣か。まあ出てくるだろうとは思っていたが……」

「剛剣というのは二つ名でしょうか?」

横にいるエミリアから質問が飛んでくると、ルクレティアは彼女は知らなかったと思い出し返答する。


「ああ、剛剣は大剣を扱いその一撃は大岩をも砕く事からそう呼ばれるようになったらしい。王国では今や剣聖ランスロットが台当していてあまり目立たなくなったが、少し前までは剛剣の名を聞かぬ時はなかったほどだ」

「なるほど……苦戦を強いられそうな相手ですね」

剛剣の名は他国であるルオール法国にも届く程だが、勇者より強いとは思えずルクレティアはクツクツとわらう。


「安心せよ。エミリアの相手ではないだろう。勇者の力は別格。剛剣がいくら腕利きの剣士といえども勇者には一歩劣る」

「ですが油断はできません。元の世界でも二つ名をつけられた騎士と戦った事はありますが、強敵でした」

「だが勝ったのだろう?」

ルクレティアがそう言うとエミリアは頷く。

戦いは勝てばいい。

勝者こそ全て。

エミリアはとても慎重なタイプのようだが、ルクレティアはあまり心配していなかった。


天嵐の勇者と呼ばれる程の実力者であり、実際に驚異的な力を目にしている。

剛剣がどれほど腕利きでもエミリアには敵わないと考えていた。


まだ剛剣が若ければ結果は違うかもしれないが、既に今の剛剣は衰えている。

過去には何千という兵士をたった1人で倒したという逸話もあるが、今の年老いた彼では無理だろう。


もはやこの戦いは勝ち戦。

そう考えていたルクレティアは自陣に戻るや否や、王族に伝わる秘剣を天高く掲げた。


「敵は降伏勧告を受け入れなかった!お前達は強い!勇者もこちらにはいる!我らがルオール法国の力を見せつけよ!進軍開始!」

ルクレティアの合図と共に騎馬隊が先行して駆け出し、その後ろを重騎士や魔導士達が駆けてゆく。


「戦争というものはどんな時代にも……どんな世界でもあるのですね」

「悲しい事に、それが人間の業とやらだ。行くぞエミリア。我々も出る」

エミリアは一瞬寂しそうな表情を浮かべたが、すぐに覚悟の決まった表情を見せる。



ルオール法国はいよいよアルトバイゼン王国へと進軍を開始した。



――――――

ドレイク達はというと敵の本隊が動き出したのを見て、迎撃の準備に取り掛かる。


「弓兵は矢を番えよ!魔法師達は範囲魔法の詠唱始め!盾持ちは敵からの反撃に備え、ミストルティン騎士団は儂と共にファランクスの陣を敷く!」

ドレイクの指示通り部下はテキパキと動き出す。

敵は砂埃を上げながら徐々に距離を詰めてきていた。


「先頭の騎馬隊を討て!」

ドレイクが手を大きく振ると、空を覆う無数の矢が放たれた。

弧を描きながら騎馬隊を次々に射抜いていくのが見えると、ドレイクは更に指示を飛ばす。


「次!第二射放てぇぇ!」

矢を射た兵士が即座に後方へ移り矢を番えた次の兵士達が前に出ると、また雨のように矢を放つ。


騎馬隊は雨あられと射掛けられる矢に次々と落馬していく。


「最後だ!第三射放て!」

三列目にいた兵士達が前に出ると、またも無数の矢が騎馬隊を穿っていく。


三度に渡る弓兵の攻撃にルオール法国の騎馬隊は半壊まで追い込まれていた。


「儂らを舐めてもらっては困る。これでも何十年と国境を守り続けてきたのだからな!」


ドレイクが得意とする戦法、矢継ぎ早の攻撃がルオール法国に大打撃を与えていた。

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