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第19話 勇者の慟哭

おびただしい血飛沫をあげ大輝はその場にうずくまる。

「大輝!しっかりしなさい大輝!」

すぐに莉奈が駆け寄り回復魔法をかけるが、腕を斬り落とされた痛みは想像を絶する。

大輝は痛みに悶絶しながら叫び声を上げ続けた。


「アアアアアアア!痛い痛い痛い痛い痛い!」

「黙って!今治療してるから!動かないで!」

莉奈も勇者としての力を身に着けてきているとはいえ、まだ欠損部位の修復までは出来ない。

つまり大輝の片腕は失われたままである事を示していた。


「貴様ぁぁぁ!!」

動きを封じられたランスロットが激怒すると黒峰が動いた。


「俺の仲間に手を出すなッッッ!」

感情に揺さぶられた黒峰は冷静ではなく、剣も大振りになり黒いローブの男はなんなく躱す。


「クソックソックソッ!これならどうだ!栄光の閃き(シャインセイバー)!」

黒峰が渾身の一撃を放つが、転移魔法を行使する黒いローブの男に当たるはずがなく、空を切った。


「アタシだっているのを忘れないでよね!烈風の弾丸(エアーズバレット)!」

茜が放つ魔法も魔法障壁で防ぐと黒いローブの男は後ろへと跳び距離を取った。


「命まで取れなかったか……チッ。咄嗟に心臓を庇ったのは褒めてやるぞ勇者」

大輝は黒いローブの男が背後に転移してきた瞬間、咄嗟に腕を前に出し首と心臓を守っていた。

そのお陰かその場で殺される事無く腕を切り落とされる程度で済んでいた。


遂に封じられていたランスロットが動くと黒いローブの男は再度距離を取った。


「もう動けるか……やはり剣聖を相手取るのは割に合わん」

「逃げられると思うのか?ここでお前は殺す」

ランスロットの殺意は辺りにいる者を威圧する。

怒りの感情を露わにするランスロットを初めて見た黒峰も体が震えるほどであった。


「いや、それは不可能だ。俺を殺せるのは魔法使いでなければ無理だからな」

「ほう?随分と自信があるようだな。しかし私の剣は視界に入る全てを斬り刻むぞ」

「知っている……だからこうしていつでも逃げられるようにしているだろう?……これ以上の会話は無駄だな。せめて名くらいは名乗ってやる。俺の名はゼン。リンネ教第五席次だ、覚えておけ」

「覚える必要はない。お前は此処で殺すか――」

ランスロットが言い終わるより先にゼンはその姿をくらました。

何の音もなく突然だった。


あまりに一瞬過ぎたからか、ランスロットも目を見開く。


「音もなく……か。これが転移魔法の真髄。恐ろしい程の腕だな……」

既にこの場から去ったゼンを明確に脅威だと決めつけていた。

転移魔法を使える者がリンネ教にいるとなれば対策を取らねば危険すぎる。

そう考えランスロットは剣を鞘へとしまった。



リンネ教の気配が無くなるとランスロットは負傷した大輝へと駆け寄った。


「どうだ?彼の腕は治るか?」

「いえ……私では部位欠損を治すことはできません」

莉奈の辛そうな物言いから、ランスロットもそれ以上突っ込むことはしない。

彼女自身、力さえあればと嘆いていることだろう。


「大輝、大丈夫だ!血は止まったぞ!しっかりしろ!」

「く、黒峰さん……オレの腕は……」

息も絶え絶えに大輝は黒峰にそう問いかける。

黒峰は言葉を詰まらせ、少しだけ目を逸らした。


「大輝、腕は失った……だが良く頑張ったな。咄嗟に腕を犠牲に自分の命を守ったんだ。なかなか出来ることじゃない」

「へ、へへ……死んだら、元も子もないっすから」

空元気であろう大輝は少しだけ笑顔を浮かべる。

痛いだろう、辛いだろう、何せもう腕は元に戻らないのだ。

命があっただけマシといえばそうだが、まだ未成年である彼にとってはとても辛いはずだ。


黒峰は大輝の肩に手を置く。


「大輝の仇は俺が討ってやる。安心しろ、次は確実に殺る」

「黒峰さん……ありがとうございます……」

正直言えばゼンと名乗った男に傷を負わせられるか分からないくらいには実力に差があった。

だがここで弱音は吐けない。

勇者の中でも一番年上である黒峰は少しでも大輝を安心させるつもりで仇を討つと伝えた。



「済まない……ゼンを逃してしまった。大輝、必ず仇は取ってやる。安心するといい」

「あ、ランスロットさん……オレ、役立たずになっちゃったっすね……」

「そんな事はないぞ。お前は知らないだろうが世の中には隻眼隻腕の魔法使いもいる。当然世界でも有数の実力者だ。だから片腕を失ったからといって悲観することは無い」

ランスロットは優しい嘘を述べた訳では無い。

実際にこの世界には隻眼隻腕の魔法使いが存在する。

レベル7の冒険者だ。

ランスロットも出会ったことはないが、噂には聞いたことがあった。


「ありがとうございます……じゃあオレもっとガイラさんに鍛えてもらわねーと……」

「鍛えるのもいいが、まずは体を治す事を優先しろ。腕は元通りにこそならないが失った血の量は多い。当分は王城で養生に徹するといい」

出血量は多く、意識を失わなかったのが不思議なくらいには血溜まりが出来ている。

当分血量が元の状態に戻るまで安静にしなければならず、鍛え直したいとやる気を見せる大輝は残念そうにしていた。




王城に戻ったランスロットはすぐに国王へと謁見を求めた。

当然勇者が負傷した事についてであった。



「……斎藤大輝殿が片腕を失くした、か。かなりの痛手だな」

「申し訳ございません。私が付いていながら……遅れを取りました」

「いや、気にするな。相手は転移魔法の使い手だったのだろう?そんな奴を相手に剣聖ではあまりに不利だ」

国王のクライスもゼンを明確な脅威と捉えていた。

ランスロットは王国にとって大きな戦力だが、有利不利というものは存在する。

今回ばかりは運が悪かったとしかいえなかった。


「大輝殿は何と言っている?」

「またガイラに鍛えてもらいたいとやる気を見せておりました」

「そうかそうか……心が折れてはおらんか。出来る限り彼の心身を癒すつもりだ。王城のメイドを介抱に充てがい治療師は最高峰の者を雇う」

大輝の心が折れていないのは有り難かった。

万が一心が折れれば魔国との戦いで立ち上がって欲しいなどとは言いにくい。


「それにしてもリンネ教はなかなか厄介な幹部がいるのだな……転移魔法など王国内でも使える者はほぼおらんぞ」

「はい。それに私の動きを数秒とはいえ封じた技は楽観視できません」

ランスロットの実力は世界でも上から数えたほうが早い。

そんな彼ですら数秒動きを封じられるというのは由々しき事態であった。


「恐ろしい技だな……数秒の隙は戦場では死に直結するだろう。リンネ教の事はもっと調べておこう」

「それと別件ですが、彼はどうなりましたか?そろそろ謹慎処分も終わる頃ですよね?」

ランスロットの言う彼とは無名の事である。

もうじき半年間の謹慎処分が明け、王城へと姿を見せる頃合いだった。


「無名殿か。そういえば最近フラン殿も王城に姿を見せておらんな。まあそれだけ指南が順調だと言うことだろう」

「彼が戻って来ればどうしますか?時間が経ったおかげである程度彼へのヘイトが減ったとは完全に無くなったわけではありません」

無名の行った味方諸共魔法で消し飛ばすという愚行は騎士達の苦い思い出となっている。

手助けしてくれたというのは理解していても、同期や仲の良かった騎士や兵士が何人もなくなったせいで無名の事をあまりよく思ってはいない。



「出来る限り騎士達と顔を合わせないよう取り計らう。まあおらんとは思うが無名殿に喧嘩を売る阿呆がいれば悲惨な事になりかねんからな」

無名の実力は恐らく既に王国内でも数えるほどになっているだろう事は容易に想像できる。

悠久の魔女が付きっきりで指南しているのだから当然だ。


無名が戻ってきた時、諍いが起きなければよいがとクライスは頭を悩ませるのであった。

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