危険クエスト4
読んでくださってありがとうございます!
メルアの転移魔法で
目的の場所の目の前に辿り着いた4人は、
辺りを見回す。
「ここが、トアチの洞窟か〜。」
ライルが上を見上げる。
トアチの洞窟は、直径20mくらいある
大きな洞窟だ。
大きい以外には、特に特徴の無い洞窟だそうで
魔物もいなければ財宝もないらしい。
以前にこの前を通ったことがあったので
メルアの転移魔法が使えた。
もしギルドから歩いて行くなら1日半くらいは
かかる。そうなると2組の応援に
行くこともできない。
バサッバサッバサッ!
どうやらミルアの鳩も
トアチの洞窟に着いたらしい。
危険クエストを行う時のみ
ミルアの鳩がクエスト先の場所に
来るようになっている。
全部のクエストに鳩を送りたいが
あり得ない量の鳩を使用しなければならないので
管理が大変ということで危険クエストのみ
鳩が同行する。
クエスト完了の報告と応援要請
そして全滅したときの連絡用として
鳩が来るようになっている。
「とりあえず、入る前に作戦立てましょうか。」
ナティカの指示で作戦を立てることにする。
作戦を立ててから、クエストに当たるか
作戦を立てずにクエストに当たるかでは、
生存率が大きく違う。
「基本は、いつも通り4人で行動。
ジェイクとライルは近接武器や
素手の敵の対応、杖を持っている相手だったら
メルアと私が対応するわ。
敵は、かなり多いから基本的には
お互いの背中を守るような形で戦う感じで
行きたいけど、みんなは他に何か意見ある?」
「杖とかを持ってるのは私だけでもいいわ。
ナティカには、回復に専念して欲しいかも。」
「それだったら、一旦メルアの魔法を
ぶち込んで数を一気に減らすのはどうだ?」
みんなそれぞれ、作戦の意見を出し合う。
こういう時本当にこのパーティーでよかったと
思える。みんなが意見をしっかり言えるのは
信頼の表れだ。
ただ・・・
「ところでジェイクは何かある?」
ナティカから聞かれる。
この質問のに弱い。
話を聞いて言った通りのことはできるし
思ったこともあるが小心者のジェイクは
すぐには言えない。
「・・・・・・・・・・あ゛の゛
分゛かれ゛道゛は・・・・どう゛する?」
(やっと言えた!やっと言えたぞ!)
ジェイクは、この一言を言えただけだが
内心喜んだ。
「あ~分かれ道か。」
「そうね〜。」
「まぁ、その時はうん。」
「「「その時に考えればいいんじゃない?」」」
3人が同じ言葉を全く同じタイミングで言った。
「・・・・・わ゛、わ゛かった。」
こうしてジェイクの勇気を持って発言したことは、雑に扱われた。
作戦は、近接武器と素手の敵の対応を
ジェイクとライル
杖を持っている敵の対応をメルア
ナティカが基本的に回復を務める。
集団がいた場合は、メルアの魔法で
敵の数を減らす。
全員が背中を守るような陣形で戦うことに
決まり、洞窟の中に入っていくことにした。
〜トアチの洞窟内〜
洞窟の中に入り、10分が経過した。
「ねぇ、おかしくない??
なんで、人1人にも会わないのかしら?」
「確かにおかしいわね。」
メルアとナティカが言うようにおかしい。
いくら洞窟が広いと言えど
200人の盗賊集団とSランクパーティ2組が
戦ったはずなのに人にも会わないし
死体すらいない。
さらに言えば、戦った跡がない。
大規模な戦いのはずなのに、
壁には傷らしい傷がない。
「あっ!!」
全員が疑問に思ったその矢先に
1人壁にもたれかり座っている男がいた。
体中がボロボロだ。
「あなた大丈夫?」
ナティカが男に駆け寄り話しかけるが
返事がない。
「回復」
回復魔法を行う。
「・・・・・ゲホッゲホッゲホッ!
・・・あれ・・・ここは。」
意識が戻ったようだ、だがひどい状態だ。
「・・・あっ、〈白の英傑〉の方々・・
よかった。無事にミルアさんの
鳩がギルドに着いて。」
どうやらこの男が、鳩に応援要請を
伝えるようにしたらしい。
「あなた、名前は?一体何があったの?」
男に質問する。
「・・・俺は、〈赤の大鰐〉のカルスだ。
・・・・全員で洞窟に入った瞬間。
1人の男が立っていたんだ。
そこから記憶が無いが・・・
気づいた時には
いつの間にか洞窟の奥にいた・・・
俺は・・・俺は・・・怖くて逃げた・・
みんなを・・・助けるよりも
逃げることを・・・選んでしまった・・・
・・・うぅ」
恐怖なのか後悔なのか情けなさなのか
カルスは、涙を流す。
助けれなかった弱さ
目の前に来た死の恐怖
逃げた己の情けなさ
いろんな感情が涙となって
溢れ出ていた。
「お願いだ・・・みんなを助けてく・・・れ。」
「おい!大丈夫か!?」
「眠りに落ちたみたいね。
ひどく疲れているもの。」
カルスをとりあえず、壁に寝かせて
休ませることにする。
「もう少し待ってて頂戴ね。
すぐ終わらせてくるから。」
ナティカは、寝ているカルスに
そう言い残し、4人は前に進むことにした。
20分後
さらに洞窟の奥へ歩いていくと
4つの分かれ道についた。
中は4つとも下に続いている。
「これ、どうしようか?」
「4人とも別々の道に行くか?」
「いや、4人で固まらないとパーティと
言えないじゃない。4人で行きましょう。」
みんなが困惑するがナティカの発言で
4つの分かれ道から1つを選び
4人で進むことにした。
その瞬間
「運ぶ強風!!」
その声が後ろから聞こえた瞬間
4人が風に飛ばされ
別々の道に入っていく。
「みんな!!」
「マジかよ!!」
「いやぁ〜!!!」
「・・・・・」
(えぇ〜!!!)
〈白の英傑〉のパーティはバラバラになって
行動することになってしまった。
「ようこそ、アジトへ」
強風を起こした犯人の声は
4人に届くことは無かった。