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 四肢がないというだけでホロは嘘みたいに軽かった。

 ホロの要望で、おんぶとなったが背負うとき絹を羽織ったかのような感覚しかなかった。今着ているワンピースのせいもあるだろうけれど。


 村を出て、森の中を少し歩く。


 その間、俺たちは無言だった。


 話したいことはあったが、彼女の確かな生きているぬくもりとこの静謐な森の道、木漏れ日や木々の葉が風によってこすれる音を感じていたら自然と無言になってしまっていた。


 そして、かつて二人の遊び場だった廃洋館にたどり着いた。


 この洋館の裏手に6メートルはある岩がある。


 俺とホロはその岩を隕石だと幼少の頃本気で思っていたのは、懐かしい記憶だ。 


「ほら、ついたぞ。って寝てるじゃん」


 静かなはずだ。


「ふがっ、え、もう着いたの?」


 奥ゆかしく育ったと思ったが、この間抜けヅラが小さい頃のホロを彷彿とさせる。


「何か見せてくれるんだろ」


「ええ、私の成長をとくとご覧あれ、って感じね」


「背負ったままでいいのか」


「うん、見ててね」


 そう言うとホロはあのでかい岩を見つめた。


「砕けろ」


 それは五感以外の確かな違和感を感じた。

 少し不気味で、電撃が走るような。

 同時に、岩はけたたましい音をたてて砕けちり、破片は全て後方へと吹き飛んでいった。


「…す、すごいな。これがまじゅつってやつか」


「いや、これは魔法だよ。魔術とは少し違うんだ。私が勇者に選ばれたのはこれが理由なんだけど」


「…なんか難しそうだな。魔法の方がすごいのか?」


「えー、どうだろ。確かに魔法は道理を超越してるって言う点では凄いけど、汎用性は大いなるものだよ。大体の人たちは魔術を使っているし、人々の生活を支えているのも魔術で、人間と密接に関わってきたものだから、私はどちらかというと魔術の方がすごいって思っちゃうかも。戦争になった時とかは一番人を殺すけれど、生活の中で一番人を助けているのは魔術なんだ」


「へー、なんか魔術好きなんだな」


 途中ちょっと何言ってるかわからんかったが魔術が好きなのは何となくわかった。


「て言うかやっぱりただの岩だったね。あの頃は隕石だろーってはしゃいでたのに」


 土煙をあげ、破壊され尽くした岩があった場所を見ては懐かしむように彼女は言う。


「そうだな…、ん? あれなんだ」


「あれって?」


 土煙が風にさらわれていき、視界が開けた場所には何やら一本の剣らしきものが刺さっていた。


「ほらあそこだよあそこ。岩があったところ。剣っぽいけど」


「えー? 私あそこの空間をすべて破壊するつもりで魔法はなったのに?」


 なんだ、その物騒な魔法は。あの頃の無垢で、芋虫一匹に泣かされていたホロが懐かしい。


「いや、でも剣刺さってるぜ、ほら」


 俺たちはその場所へと近づく。


 そこにはやはり剣が刺さっていた。ただ剣というにはあまりにも大きい。

 長く太い、それは無骨な大剣だった。


「ふわー、でっかいね! グレートソードだよ!」


 なぜか興奮気味のホロ。

 

「この剣、正直異質だよ。触んない方がいいかも。全くとして私の魔法を寄せ付けない」


「ただの大剣にしか、みえないけどな」

 

 正直鈍感な俺には、安物の大剣にしか見えん。

 

 ただ、すぐにホロの言っていたことは反故にする結果となってしまった。

 先ほどの大きな音によっておびき寄せられた魔物が飛びかかってきていたのだ。


 それは後方から。明らかにホロを狙っていた。俺は咄嗟に大剣の柄を握りしめては抜き取り、グレートソードとして魔物に振りかざした。


 グレートソードの重みのおかげか、魔物は先ほどの砕け散った岩のように爆散し吹き飛ぶ。


 突然のことで、ホロは驚いて口をパクパクさせていた。

 

「マ、マサにい人間の力じゃないよ…」


 いや、引かれても。て言うか、


「ホロの方が人間の力超えてるだろ」


 先ほどの魔法を思い出し口に出す。

 その一言で、ホロはご立腹となってしまった。


 俺はこの不気味な大剣と、ご立腹なホロを抱えて、とぼとぼと帰路に着くのだった。


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