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EP25「ティーパーティー(前編)」

side:ユイノ

17時30分 月川市

喫茶 幻想の縁側 和田道店


決闘(PvP)終了の後、その場で条件であった道具の指名奪取を行おうとした所、下の月川急送の中継フロアからスピーカーでの怒号が聞こえてきたので、取りあえず落ち着いて会話が出来る喫茶店へと移動することとした。



奥の半個室席で全員分の注文をタブレットで入力したから、本題へと入る。

「さてと、試合前の条件に基づき、道具の指名抜きを・・・まぁ、全員から同じアイテムを一つ貰おうとするか」


自分のタブレットの未行使タスク"勝利報酬 道具指名奪取を実施"を選択して、アイテム名を"MPポーションメガ"単独指名する。レイド報酬でしか手に入らないこれはMP(魔道力)を全回復できるアイテム。



「・・・。まぁ良いだろう」

渋そうな顔をして同意ボタンを押す。それと同時に相手ストレージに持っていた人分のMPポーションメガが追加される。僕が終わったのであれば、次はヒビキの番か。

隣に座っているヒビキの顔を伺うが、すでに考えはまとまっている様で、入力できるタイミングが来るとフリック入力をすぐさまに行い送信をする。

「それじゃユイノくんがMPポーションメガであれば、ウチはHPポーションメガ・・・は恐らく今日使っているであろうから、HPポーション55をいただこうとするかな」


成る程、相手の懐事情を鑑みての選択か。先の決闘(PvP)で消費済であろうから、鍛冶士の上位スキルでしから生成できないHP(ヒットポイント)ポーション55(文字通り55%回復するアイテム。当然ながら市場取引価格は高く、素材の入手だけでもリアルマネーで入場料四桁とられるダンジョンに複数回入り込む必要があり、完成品を直接買おうとすると"諭吉"なる存在をゲームに通貨に交換しても買えるかというレベルである。現金を直接取引できない以上、みかじめ料として最高級アイテムを要求とは、考えることはえげつないな・・・。


「・・・。まぁ実際に所持しているわけがないとは思っていたし、持っていたとしても使ったであろうとは思っていたが、一つだけ手に入るって事は、使うまでも無かった事かな?マルス君?」


今回の決闘(PvP)の原因でありグループのまとめ役であるマルスは向かいの席に座りながら少し考えてから、口を開く。


「誠に遺憾ながら、おっしゃるとおり、私、緑河光は攻撃から逃げることしか出来ませんでした。願い行くわ、私を、貴方の弟子にしてただけませでしょうか?平石様」

机に両手を付け深々と頭を下げる。予想外の発言であったが、答えは一つにしか決まっていなかった。


「ごめん、申し訳ないけど、僕は弟子はとれない。使っているスキルもユニークアイテムも一品ものばっかりだからね。仮に弟子になれたとしても僕と同じ様に戦えるとは思えない。でももし真似をしたいと思うのであれば、まずは相手の動きを学ぶために原作をプレイしてみるのが一番近道かもしれない」

それ以外にも君では、僕のいる上位ランクににはどうやっても追いつけない。状況を的確に判断して行動するための状況判断力も足りないし、何よりそれを実行するための決断力も足りていない。


「そう・・・ですか。では弟子として認めてくれないのであれば見て学ばせていただきます」

勝手にしてくれ。席に着いたときに出されたお茶を飲みきるのと同時に注文していた料理が配達用ロボットに乗せられて届く。手前に向かって通路側に座っていたみのこと、藤川みのぶが全員に注文の品を配る。

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