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EP23.「追いかけっこ(前編)」

side:第三者視点



「成る程・・・。」

試合を見ていたミナセの独り言が漏れる。事前に定めた決闘条件に基づき、今回の決闘(PvP)に参加しないミナセは同行者用の観戦ルームで試合の行く末を見届けるとこにしていた。

しかしながらゲーム内での情景を放送している中継映像を見る限り、ミナセはユイノへの強さに対する信頼よりかは、それに起因する心配事に考えが傾いていた。


「間違えない。あの状態をそのまま続けてしまえば、また暴走状態になる」


天使の役、RFSで実装された裏設定の一つであり、プレイヤーに同行するパーティー全員に対して、天使の役(文字通り、その天使の加護を受けると同時にその天使の使命を受ける)が設定されており、これにより各登場人物の色彩属性や天職が定められている。がしかしながらその魔力(天使の力 )を使い過ぎると自分自身が|天使の役に飲み込まれる《暴走状態》になってしまう。


そんなことを考えながら見ていると一人で過半数を撃破してところで頭の上あたりに白い輪(ヘイロー)と背中から桜色に染まったつばさが出現する。


「・・・。けが人がでなければ良いんだが」



「さて、ヒビキの実力はいかほどに」

安全地帯から高みの見物を行っているミナセの表情にはかすかに焦りが見えた。







───1───

    16時20分 残り人数4/13


「さて、あと何人かな?迷える子ネズミちゃん?」

少し狂気を含んだ笑みを浮かべながら点検用通路に舞い戻るユイノ、その頭上には薄く天使の輪が浮かび上がっていた。自動戦術攻撃制御(ATACS)システムがカミマイツルを利用して次の敵対プレイヤー(獲物)を発見して、自動的に最適な砲弾を選択、狙撃軌道をARゴーグルに支援表示をし、ユイノはその通りに引き金を引く。

まさに、敵を殲滅する目的で動く機械の様である。


それを索敵用の小型ドローンで覗いていた光浜緑(ユーザー名:マルス)は血の気を引くような顔で見ていたのであるが、少し考えてからボイスチャットで指示を飛ばす。

「向こうは頭上から弾丸の雨を降らしてくる。一人はあっちこっち動き回り、もう一人は文字通り天井近くから狙撃してくる。各位はコンテナ内に隠れ込み、敵を誘い込んで撃破するように」

(しかし、これは作戦を初っ端から完全に失敗したな。どうやってもタイムアウトでドローに持ち込んでやる)

そう考えながらコンテナの扉を閉めようとした時であった。




「見ぃつけた」

点検用通路から荷物用のシューターに飛び移り、猛スピードで接近してくるユイノの姿が見えた。本能的にまずいと察したマルスは扉に封印棒を差し込み時間稼ぎ用の悪あがきすると同時に詠唱を始める。


「始まりは大地、恵みの雨が降り、若葉が芽生え、命が実る─」

究極魔法である全反射防御の詠唱をしながら、コンテナを複雑に通り抜け、ベルトコンベア上を走り回り、少しでも距離をとろうとする。


しかしながら、ユイノはコンテナの外壁を垂直に走り回り、コンテナとコンテナの間をクリックワイヤーで飛びながら徐々に距離を詰めてくる。


{経路形成、B-15AからB22-Dまで足場形成}

支援をするために逃げ道としての足場を出す指示がボイスチャットから聞こえてくる。コンテナの上に駆け上がり、点検用通路を走り抜け、少しでも距離を取り時間をと稼ごうとする。


「ハハハ、どこへ行こうと言うのかね」

照明用の支柱や点検用通路の手すりを支点しながらターザンの様に追いかけてくるユイノ、その右目は薄紅く輝いていた。



「追いかけっこは終わりだ、大人しく降参したまえ」

支援形成されていた足場が消えると同時にフィールドの隅へと追いやられ、退路が立たれると同時に詠唱がようやく終わる。

「──その名は水晶鏡 (クリスタルミラー)、その役割は全反射攻撃、歪みねじ曲がった槍をただせよ」


六面体で構成された鏡の様なバリアが出現すると同時に、追いついたユイノの右手に握られたサンダーバレットからレーザー攻撃が掃射される。



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