EP19.5「新たなぬ日常(後半)」
「国際信州学院大学附属佐久高校から転校してきました 函南飛々樹です。よろしくお願いします」
透き通った赤い目に、耳のあたりで整えられた白い髪、男であろうと、女であろうと一目見てしまえば見とれてしまう、まるで天使の様な子が黒板に名前を書いて自己紹介をしている。ウチの学校は男子でも女子でもズボンかスカートかを選んで登校できるので、制服を見ただけでは性別が分からない。そんな不思議な魅力を持った生徒が、1月という珍しい時期に転校してきた。
「えー、それでは質問があるやつは挙手するように、一人一問まで、もちろん質問内容は常識のあるものを考えるように」
転入生が入ってくると必然のように始まる質問タイム。なぜこの時期に転校してきたの?と言ったみんなが考えるような当たり前の質問から、趣味、好きな食べ物まで、普段一緒に過ごしていれば分かるような事を中心に質問が続いた。
ちなみに回答はそれぞれ、親の仕事の都合、RPF施設巡り、三色団子であった。その中でも最後の質問、これが一番聞きたかった事。
「選択学科は何ですか?」
このクラスでも一人だけの選択である情報表現を選んだ宮原が少しわくわくしながら聞いている。その瞬間クラスのざわつきが消えて飛々樹の声に注目する。
「選択科目は交通経済学で、専攻は都市計画における導線開発、以上です」
うん?交通経済学と言えばミナセが選択してたやつだな、経営とか政治を学ぶならとっておきたい授業だけど、人生の役に立つと言われると微妙なやつだな。確かに月川で学べる学校はここしか無いから必然的にここに転校するしかないな。
「席は・・・平石の隣のスペースに後で机と椅子を持って来て座るように、平石、昼休みの時間でもいいから学園の中を案内してやれ」
担任の知内先生が、教卓の隣に用意された新しい机と椅子を持ってきて隣においていく。後をついてきた函南さんがカバンを左側に掛けると、こちらに向かって一言。
それをもって朝のショートホームルームが終わり、みんなが一気に次の授業の準備を始める。授業が始まるまでの間に質問責めにあるだろうから、その間に教務準備室へ机と椅子を取りに行く。
――1――
12:40 月川総合学園
4F 学生食堂「ダイニングテスト」
時季外れの転校生は全校生徒の注目の的であり、学生食堂でも落ち着いてくれないと言う事で、ミナセにお願いしてクラスメイトを同行してもらって角席で食べることとした。
「と言う訳で学食ね、食券制で購入するときはTukiCa残高でしか買えないからチャージは忘れずに」
一番人気のメニュー、三色ハンバーグ定食(550円)を注文して、柱の陰になるように座る。チーズ・ケチャップ・ソースの三種類のハンバーグと味噌汁、ご飯がついたこのメニューはまさに学生の夢を体現したものであり、昼休みになると同時にネットオーダーで先に予約処理しておかないと注文すらできないぐらいである。
「それでは、これも何かの縁だし、改めて自己紹介しようか」
ミナセが会話の主導権を握る。別に異論はないし、一緒にいるクラスメイトの話も気になるので、そのままミナセに任せる事にする。
「では、言い出しっぺのボクからだね、高等部1年、上牧水無瀬。選択科目は交通経済学。部活動、委員会等は特にやっていない、これから宜しく」
そうミナセがいうと隣に座っている人物のヒジをツンツンする。
「では、俺の番だな。同じく高等部1年、横川浅磨、選択科目は電子工学、公安委員会所属、部活動はやっていなけどね、学校内で何か困り事があったら公安室に来てくれれば大体解決できるからよろしく」
あぁ学校内公安員の子か、確かに関係性は持っておいても悪くはないな。いじめ対策・・・とまでは行かないけど、こういう専門家の意見が聞けるのはありがたい。と考えていたらこっちに向かって目線を送ってくる。そうか僕の番か。
「では、初めての顔もあるので改めて平石唯之、高等部2年だ、選択科目は現代デジタル文学、部活、委員会ともに所属なし、とりあえずよろしく」
後は函南だけだな。
「函南飛々樹です。同じく高等二年、選択は交通経済学、部活委員会とかは、新年度からやれたなぁって思ってます。宜しくお願いします」
さて、自己紹介も済んだ事だし、次は何を聞くつもりだ?




