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EP12.「違和感」

「違う、まずい、全員伏せろ!」

学術員の人が異変に気付きすぐ様に叫ぶ。

その声を聴き、部屋にいた全員が机の下に隠れると同時に部屋全体が真っ白く明るくなる。



遅れて何かが爆発して壊れる音がする。



ナニか壊れてはいけない、言葉に表せないとても大事なモノが。





暫くして部屋の明るさが元に戻り周囲の様子が分かるようになる。


しかし部屋に入る前から何も変わっていない。では、何が壊れたのか、一緒に来ていた同学生も自身の手回り品を確認し、学術員の人も設備の点検をするが、何も異常が見当たらない。



とりあえずケガ人等が居ないことが良いことであるが、この一件により、試験体としていた正二十面体の物質は消滅してしまった。



いやまて、物質が完全に消滅するなんてありえない。カバンの中からゴーグルを取り出して多次元的物質観測機能を起動する。


<未確認エネルギー体を検出、範囲を強調表示します>

一つのシステムメッセージが表示された後、目の前に紫色のモヤが広がる。


<インターネット上で類似性質の現象を検索しています...該当するデーターが見つかりません。観測情報を報告中です...>

どうやらARグラス標準搭載の AIシステム"AoI"では正解が見つからなかったようであり、逆に未確認減少として解析依頼を行っているようである。




情報がないのであれば、かけていても仕方ないのでグラスを外す。しかし、紫色のモヤが消えない。影送りにしては妙である。

「これ実際に存在しているか?」


モヤに手を出してみる。すると手袋越しになにやら冷たく小さい物体の感触がする。

そもまま引き出してみると、銀色のカギのような物体が手のひらにあった。



「芦沢学術員さん、これ・・・」

一連の事態を見ていた学術員の人に、手のひらにある物体をそのまま手渡す。



「何かのカギかな・・・でも物質検査機に掛けてみない以上は、何もわからないしとりあえず、これは預かるよ」

そう言うと、学術員の人は白衣のポケットから白い布を取り出すと、カギの様なモノを包み込み、そのまま奥に行ってしまった。




「えーーー、予想外のトラブルがありましたし、当初の予定であった正二十面体の観察ができない以上は、予定を変更して地学的な神緋田湖の観測レポートを行いましょうか。ARゴーグルあるい人は持ってきて、地学員の人により分かりやすい解説をしてもらいますので。準備もありますし、皆さんとりあえず地質資料室に移動しましょうか」


引率担当の資料館事務員さんの一声で、みんなで一斉に荷物をもって学術研究室をでる。でもあのカギの形といい、色合いといいどこかで見たことがあるような・・・。






  ───1───

  月川市霜峠国立公園内

  神緋田湖資料館地質資料室


「では、ARグラスを持っている皆さんは、装着の上kamihida_chisitu__01って表記のある一番上かな・・・にあるイベントグリーティングに参加して下しさい」


地質学者の人は、ARグラスと長い棒を持ちながらモニターの前に立つ。


「準備はいいですかね。それでは始めます。皆さんが今いる神緋田湖は元々炭鉱であったということはみなさんご存じだと思います。当時の地層を再現するとこんな感じで、石炭が埋蔵されている地層が、比較的浅い位置に存在していたので地表から掘り返すだけで簡単に石炭が採掘できました。

しかし、石炭が埋蔵されている地層の更に深いところには地下水が大量に溜まってできた地底湖が存在していました」


説明と連動してモニター画面には地層の断面図が表示され、されにARグラス上には各地層を構成する主な岩石に関する解説が表示されていた。説明を聞いては、その内容をメモにして書き残す。


「三日月流星群によって石炭が埋蔵されたい地層を貫通して地底湖が存在する地層まで穴が開きました。地下水の圧力と周辺にある川の流れなどによって水が溜まり、現在の神緋田湖が形成されました」



画面が変わり炭鉱が存在した場所に水が溜まっていくイラストが表示される。


「こうしてできた神緋田湖の湖底地層にあたる部分には一応は石炭が埋蔵されている地層も存在していはしますが、埋蔵量的にも現在は採掘してもあまり意味がないのでそのまま放置されています。と、ここまでは皆さん学校で習っていると思いますので、さらに進んだ話を、炭鉱を採掘する際に作業小屋が存在していた湖底部分には、現在は何も残されていません。なぜなのか、それは流星群衝突時の摩擦熱を帯びた爆風によって蒸発してしまいました」


ARグラス上に衝突する瞬間のイメージ映像が表示されるが、少し熱く感じる。

「まぁ、ただイラストと資料を見ただけでは詰らないですし、実際に水中観察室で湖底を覗いてみることにしましょうか」



地質学者の人がそう言うとモニターを押して壁が動き、通路が広がる。

「この設計は、私のお気に入りなんですよね、説明を聞かないと物理的に先に進めないので、意地でも話を聞いてもらえますから」



そう言うと奥へと歩き始める。どうやら水中観測室はこのモニターを活用した隠し扉の奥にあるらしい。


メモを簡単にまとめ、ほかの同学生に続いて通路の奥へと進んでいく。


でも、なんだ、この違和感は。今までになかった、リアルな感触は・・・。


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