映像
山の上に設置されたカメラが西の山々を映している。
山の向こう側に太陽が沈んだ直後なのか、山の上に浮かぶ雲が夕焼けで染まっていた。
カメラがズームアップして山の下十数キロのところに広がる街を映す。
南北に伸びる鉄道の駅のホームは、帰宅途中の会社員や学生で埋まっている。
鉄道を挟み込むようにして南北に伸びている国道と県道は、家路を急ぐ人たちの車でギッシリと詰まっていた。
カメラは自動的にズームアップとズームバックを繰り返しているのか、またカメラが闇に包まれつつある西の山々を映す。
その時、画面が眩い光で覆われる。
数秒後、カメラがガタガタと大きく揺れ動いた。
揺れが治まった頃、またカメラはズームアップになる。
街があった場所に、巨大なキノコ雲が立ち上がって行く。
キノコ雲を映したあとカメラの電源が落ちたのか画面が真っ暗になった。
カメラが設置されている山の直ぐ下にある町に、倒壊を免れたテレビ局の建物がある。
テレビ局の中の無人のスタジオ、屋上に設置されている太陽光発電のシステムが生きているのかスタジオ内の電灯は明るく灯り、モニターはカメラから送られた最後の映像を繰り返し映し出していた。