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悪意の芽生え
炎の大地、焼け落ちる都、そこに私はたったひとりで立ちつくしていた。
ーーーひとり?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「さあ、早くその少女をこちらに渡すんだ!」
視界どころか音も疎らなその世界の中心で誰かがそう叫ぶのを私は確かに聞いた気がする。
「嫌だね、この子はオレの物だ」
それに答える声は、いつも聞いていたあの人の声。
私を何もない地獄のような世界から連れ出してくれた大好きなあの人の声だ。
「———ならば仕方ない、僕のことを恨んでくれるなよ、黒狼」
その声が聞こえたと思った、その刹那
「ーーーーーーぐはっ」
私は、世界から光を失った。
「小次郎!?」
「ーー悪いな、マリー。」
その人は、それだけいい残すと、焔の中に飲み込まれた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ーーーその日から私は考えることを止め、憎しみの大地へと降り立ったのだ。