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第二十八話 鈴崎小春①

 その日の夜、私は夢を見た。

 大切で懐かしくて、でも少しだけ恥ずかしい夢だ。


 私、鈴崎小春は首都郊外の小さな町で生まれた。

 聞いたところによると、幼児期の私は手間のかからない子供だったらしい。

 両親からすれば待望の一子ということもあり、それはもう大切に育てられた。


「小春は我が家のシンデレラだ!」


「小春、困ってることがあったらママに相談してね」


「うん!」


 まぁ……要するに恵まれた子どもだったのよ。

 欲しい物はお父さんが何でも買ってくれてたし、お母さんは私の遊びになんだって付き合ってくれた。

 そうやって甘やかされた五歳の私がどうなったかというと、


「私って可愛いし、何でもできちゃうわ」


 などと自分を物語に登場するお姫様と勘違いする痛い子になってしまったのである。

 いくら子どものコミュニティとはいえ、痛い勘違いした人間を受け入れてくれるはずもない。

 私はすぐにつまはじきにされて、仲が良かった子にも嫌われていった。

 ちょうど幼馴染の氷夜と出会ったのは、私が完全に孤立したそんな時期だった。


「ふぇええ〜」


 あの日のことは今でも覚えてる。

 春なのに妙に肌寒かったあの日。

 近所の子どもたちにハブられて公園のブランコで一人泣いていた私の前にあいつは現れた。


「やぁ。お困りのようだね。お嬢さん?」


「ふぇ? あ、あなたはだれ?」


「だれって……決まってるでしょ。通りすがりのヒーローさ」


 にかっと爽やかな笑みを携えて私の前に立つ一人の少年。

 突然の出来事に呆然とする私に彼は優しく手を差し伸べてくる。


「そんなところでくよくよしてないでさ。僕と一緒に遊ぼうよ。ほら……」 


「だ、だめだよ!」


 でも友達から嫌われたショック人間不信になっていた当時の私は彼の手を振り払ってしまった。


「だって私、ぶりっ子なんだよ? 可愛くもないのに可愛いと思ってたし、我儘ばっかりでみんなを困らせた」


 私はシンデレラなどではなかった。

 物語のお姫様には到底なれない、ただのちっぽけな子ども。 

 そんなごく当たり前の現実は幼すぎた私には重すぎて、

 私のちっぽけな体は今にも押しつぶされてしまいそうで、


「…………遊ぶなら他の子にした方がいいよ」


 一人にしてほしいとは言えずに、代わりに精一杯の虚言を述べたのに。


「関係ないね。僕にはそうは見えないし、例えそうだったとしても僕の知ったことじゃない」


「…………っ!?」


 そうして私の精一杯をいとも簡単に無視してくれるもんだから、私は思わず彼に激情をぶつけてしまった。


「意味が分からない。どうして、どうしてなんか私を助けるの!? 私のことなんて放っておけばいいのに!」


「……放っておけるわけないでしょ」


 半狂乱に叫ぶ私をおもむろに彼は抱きしめる。

 なんてことのない、たったそれだけのことで私はついに誤魔化すことができなくなってしまった。


「ずるいずるいよ。どうして私なんかっ!?」


 感情が溢れ出して、もう止まらない。

 ダダっ子のようにぽろぽろと涙を流しながら問いかけると、


「どうしてかなんて……そんなの決まってるじゃないか」


 その男の子は私の涙を優しく拭いながら言った。


「――目の前に困っている人がいる。誰かを助ける理由なんてそれで充分だよ」


 これが私と氷夜の最初の出会いだった。


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