第三話 御前試合
「さぁいよいよはじまりましたぁ!!
田んぼザリガニ最強決定戦!!」
始まってしまった。
ついに来てしまった、この時が。
俺に目覚めた特殊能力を見せる時間が!
楽しみだぜ、今に見てろよ?なんとかロクサンスイ。
「前回優勝ガニはこのカニ!
この世をすべる最強のザリ神、ガニマタロクサンスイさんです!!」
いやお前が優勝したのかよ。
話し方的に俺に勝てないモブだと思ったらお前、一番強いのかよ。
ほんとになんなんだアイツ、おかしいのは名前だけじゃねぇのかよ。
「そしてぇ、今回の最有力優勝候補の発表です!!
番狂わせなるか!
族長の甲羅の異名を持つこの男、ザリボウダイスケさんです!!!」
いやそれおれじゃねぇか。
なんだよ族長の甲羅って、会ったこともねぇよそんなやつ。
なんだこの大会は、昨日から疑問点ばっかだぞ。
「さぁ、お二人とも!
ステージに上がってください!!」
え?ステージ?どこそれ。
「わぁぁぁぁ!!」
あ、そういう系?
ガニマタロクサンスイってザリガニアイドル的な存在なの?
で、ステージどこだよ。
「どうした?ザリボウダイスケ
怖じ気付いたか?
速く上がってこいよここになぁ!」
だからステージどこだよ。
「なわけないだろ?
俺はここにいるぜぇ?」
「わぁ」
いや歓声小さいなおい。
もしかして俺ファンとかいないの?
ガニマタ野郎となにが違うの?
俺もなった方がいい?ガニマタ。
「速く上がってこいよザリボウ
ほら、ステージはここだぞ?
この族長の甲羅の上だ」
は?族長の甲羅の上?
それ俺の父親じゃねぇか。
なんで勝手に乗ってやがるこのクソガニ。
「あ、あぁ今いくぜ」
「揃いましたぁ!!
それではいきましょう、第一回戦は__」
___
「おいおい、息切れがが酷いんじゃねぇか??」
「は?
そんな事ねぇよ
お前こそ__」
「隙ありぃぃぃ!!!」
「な、貴様ぁぁぁ!!!」
ドスッ
という音と同時にガニマタ野郎が倒れる。
はっ、油断したなガニマタ野郎、ここが貴様の墓場だぜ。
俺が今までどれだけのザリガニを屠ってきたと思ってんだ。
今さらザリガニなんかに負けるわけがねぇんだよ。
「そこまで!
勝者は……
ザリボウダイスケ選手!!!」
「わぁぁわぁわぁ」
いやだから歓声ちっちゃ。
俺そんな人望ないの?
あ、カニ望か。
「ザリボウダイスケ
お前やっぱ強いな」
「当たり前だろ?
でもよ、お前も強かったぜ」
あぁ、確かにこいつは強かった。
前世でいうところの、砂浜にいるモグリカニくらいか。
「そうかよ
まだお前には勝てないか
こんなおれでもいつか勝てるといいな
また戦ってくれよ?次は必ず勝つからよ」
「当たり前だろ?
なんたって俺はお前の相棒だからな」
「あぁ、そうだな
それじゃあ後で、また会おう」
といって負けガニは泡を吹いて歩きだした。
なにそれ、もしかして泡を吐くのが別れの挨拶なの?この業界。
だから死にかけのカニってみんな泡吹いてたの?
ま、そんなことどうでもいいか。
とりあえず俺も今日から晴れて田んぼ最強のザリガニだ。
俺も美ザリガニに囲まれたりするのかな。
嫌だ、そんな生活絶対嫌だ。
よく考えたら田んぼ最強のザリガニって誇れるのか?
あの大会の参カニは確か50匹くらいだよな。
ここって多分小さい田んぼだろ?
ならそんなのただのちょっと強いザリガニじゃないか。
あぁ、そうだ。
大会中もそうだったが、俺はまだ能力がわからないんだった。
そもそも能力があるのかもわからないが。
試してみる価値はあるかもしれない。
特訓でもしてみるか。
まずは田んぼをでて、この世界がどんなものなのかを確認してみよう。
もしかしたらカニが文明をもってるかもしれないからな。
ほしい能力は、そうだな。
まずは陸上で生活するのにこの姿じゃなにかと不便だし、『フォルムチェンジ』といったところか。
某スライムだって人間になれたんだ、おれにだってなれるさ。
あぁ大丈夫だ。
きっとなれる。
なれると信じてればいつかなれるさ。
そうと決まれば訓練だ。
フォルムチェンジでザリガニより強くてかっこいい姿に変えて、俺は世界最強になるんだ。
そうだそうだ、それでこそ転生系だ。
よし、そうだな、ならば宣言をしよう。
「俺はフォルムチェンジで最強になる!!」
いや、なにかが違うな、なんかしっくりこない。
うむ、なにが違うんだ。
はっ、そうか。
「人間にぃ、俺はなる!!!」
こっちだな、うん。
心なしか皮が伸びてきた気がするぜ。
あ、ただの脱皮か。