逃走
「レ……レイさん……、出てきて大丈夫ですよ……」
ノイルさんが小声でクローゼットの中の僕に声をかける。
僕もなるべくひっそりとクローゼットから出た。
さて、次はこの家からどう脱出するかだ。
窓から飛び降りるのが手っ取り早そうだが、どうしても着地時に音は鳴る。
他の家が隣接しているわけでもないし、そんな音が鳴るのは不自然だろう。
だが1階から脱出しようにも、1階にはオーフェンさんが居て、距離が近くなる分気付かれる確率も上がる。
「ここからどうするか……、さすがに外に出るための秘密の通路なんて無いですよね」
「さ、さすがにただの家なのでそういった仕掛けはないです……」
他に策は無いかと頭を捻っていると、1階からガシャンと音が響いた。
「お、お兄ちゃん……!?」
「食器か何かを落とした音が聞こえましたけど……大丈夫ですかね?」
「私……ちょっと様子を見てきます……。そうだ、私がお兄ちゃんの気を引いておくので……、その間になんとか逃げてください……」
「わ、分かりました、頑張ります……」
「では……、今日は本当にありがとうございました……。足が治ったらお仕事に復帰するので……、またその時に……」
そう言い残してノイルさんは部屋を出た。
ゆっくりと階段を下りる音が聞こえ、しばらくすると「ノイル!安静にしててって……」とオーフェンさんの声が聞こえた。
声量の問題でノイルさんの声は聞こえないが、何か喋ってるみたいだし逃げるなら今のうちだ。
僕はノイルさんの部屋の窓から飛び降りる。
多少物音が聞こえてもノイルさんが時間稼ぎをしてくれるだろう。
ドザッと着地し、一目散に来た道を駆けた。
足跡が分かりにくいようなるべく草道を踏んで駆けた。
ノイルさんとオーフェンさんがどうなっているかは分からないが、とりあえず王宮付近の区画に到着するまでは走り続けたのだった。
どうしてこんな事しなきゃいけないのかはいまだに腑に落ちないがまあよかろう。
後ろからオーフェンさんが追って来るなんてことも無いし、なんとか脱出は成功したようだ。
さて、軽く走って小腹も空いたし、夕食を食べて宿に戻るとしよう。
明朝、いつものようにカノンと冒険者ギルドの依頼を受け、昼にギルドへ戻って来ると、リッテさんに受付裏の待合室に来るように言われた。
中へ入ってみるとそこにはオーフェンさんが座っていたのだった。
「レイ、だれだこの人?」
「カノンさんは呼ばれてないのであっちでミルク飲んでましょうね~」
と、リッテさんがカノンを引っ張って行ってしまったので、この個室に二人きりになってしまった。
僕とオーフェンさんの間に緊張した空気が漂う。
「ど、どうしてオーフェンさんがここに……?」
「お前、昨日うちの家に上がっただろ」
バ……バレてる~!
Unrailed!ワンプレイで数時間吹き飛ぶのヤバすぎ……。