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紅茶

 僕はノイルさんをゆっくりと下ろす。



「あ、ありがとうございました……」

「いえいえ」



 ノイルさんの家は二階建てではあるが、他の民家とあまり変わらないような佇まいだった。


 さすがにハインリーネ様の屋敷までとは言わないが、もっといい場所に住んでると思っていた。



「へへ……、ボロ家ですよね……」

「いえ、そんな……。でもオーフェンさん、お金ありそうなのに引っ越さないんですか?」



 ノイルさんも働いてる上に、オーフェンさんは部長なんて役職なんだから、ちょっと倹約すれば引っ越すお金くらい貯まるんじゃないかと思うのだが、この世界での転居って難しい事だったりするんだろうか?



「引っ越す予定は無いです……。私はこの暮らしで満足してますし、兄はここを離れたくないそうなので……」

「そうなんですか」

「私は小さかったので覚えてませんが……、兄にとっては両親と暮らした思い出が残ってる場所なんです……。あ、すみません、どうぞあがってください……。お金も返さなきゃですし、お礼にお茶でも淹れますので……」



 ノイルさんに促され、僕は家にお邪魔することにした。


 入る前に魔法陣の描かれた板を渡されたが、これが無いと入れないらしい。


 いわゆる鍵のような役割だ。


 魔術によってそういうシステムになってるらしいが、本当に魔術って便利なもんだな……。


 家は温かみのある木造だ。


 本当ならここに、娘の帰りを待っている両親が居たはずなんだろう。


 しかし中は暗く、何の物音もしない。


 さっきの話を聞いた後だと余計哀愁を感じてしまう。



「私の部屋で待っててください……。飲み物は紅茶で大丈夫ですか……?」

「は、はい、何でも大丈夫です」



 何でもとは言ったが、タルタロスさんの時のようなお茶は勘弁してほしいが。


 さすがにあんなのが出てくる方が稀だろう。


 僕は二階のノイルさんの部屋で、ノイルさんが戻って来るのを座って待つ。


 ベッド、机、クローゼット、書棚、カーペット、一通りの家具は揃っていて、内装だけ見ると普通に裕福そうだ。


 しばらくするとノイルさんがティーカップを持って戻って来た。



「お待たせしました……」

「ありがとうございます」



 白いティーカップに文字通り紅い紅茶が注がれている。


 湯気が立ち、茶葉のいい香りが充満する。



「美味しそうですね、いただきます」

「はい、兄が紅茶好きなので、良いものを揃えてるんです……」



 紅茶と一緒に茶菓子と貸した分のお金も出される。


 もてなされてるのにお金も貰ってる感じになって、なんか複雑な気分だな……。


 そんな風に思いながらも、少し遅めのティータイムを楽しんでいると……。


 バンッ!と扉を開く音と共に。



「ノイルうううっ!!!!!帰ってるか!!!!?」



 と叫び声がこだまするのもつかの間、ドタドタと家の中を走る音が聞こえてくる。


 オーフェンさんが帰ってきたようだ。


 ……これ、僕見つかったらヤバくね?

お酒好きなんですが、最近全然飲んでない気がします。

なので思い立ったが吉日という事で、今から晩酌します。

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