病院
「ノイルさん、早退していいそうなので、今から病院でちゃんと見てもらう事にしましょう。お話はその後で大丈夫ですか?」
「は、はい……」
幸い主要な施設は王宮の周囲に配置されているおかげで図書館と病院との距離は近い。
車イスでもあればさらに移動が楽なのだがそんなものは無い。
「包帯である程度固定はしましたけど、歩けそうですか?」
ノイルさんは靴を履き直し、座ったままで少し足踏みをした。
「……ちょっと、まだ痛いかもしれません……」
「そうですか、じゃあ病院までまた背負って……」
「そ、それはちょっと……」
なら横抱き……いわゆるお姫様抱っことか……の方が多分余計恥ずかしいよな……。
「あの……、その、……肩を貸していただけると……」
「ああ、肩車があったか!」
「ち、ちがいます……っ!」
「ははは、冗談ですよ」
なんて揶揄いつつも左手を差し出す。
ノイルさんはやや遠慮気味に手を取り立ち上がった。
肩へと腕を回し、二人三脚のような状態になる。
なるべく患部の右足に負担を掛けないように、少しだけ歩いてみた。
「大丈夫そうですか?」
「はい……、一応歩けます……」
「じゃあこれで、病院まで行きましょうか」
「あの……、ゆ、ゆっくり……お願いします……」
そんな感じで、ニナさんたちに挨拶をし、ノイルさんに合わせてゆっくりと病院へ向かった。
カノンであれば3分もかからなそうな道を、およそ30分以上かけて病院へと到着した。
この間にノイルさんの言っていた話というのを済ませようかと思ったのだが、どうやら人のいない場所がいいらしく、予定通り後に回した。
「ふむ、捻挫だろうね。あと軽い突指。応急処置はしてくれてるみたいだからこのまま患部を冷やしておくといいよ。念のため3日は安静に。それでも痛みが引かないようだったらまたここに来るといい。3日分の痛み止めと足首固定用のベルトを出しておくから帰りに受け取ってね」
そう述べた後、小太りで白い髭を生やしたお医者さんは氷水を入れた袋のような容器を渡してくれた。
流れで話を聞いたが、どうやら病院には氷を作る魔術でずっと氷を作り続けるだけの役職があるらしい。
たしかに保存がきかないものだから作り続けるしかないんだろうけど、使われなかった氷は溶けて無くなることを考えると賽の河原のような作業だ……。
診察も終わり、しばらく足首を冷やした後、帰りに請求された金額は銀貨6枚。
結構値段高いなぁ……。
ノイルさんの持ち合わせでは足りなかったので、足りない分は僕が立て替えておいた。
ノイルさんはおっとりしてるようで、慌てると結構仕草に出るから見てて意外と楽しかった。
支払いを終え、荷物も受け取ったので、ノイルさんを家に帰すため先程と同じように肩を組み、ゆっくりとした足取りで僕たちは病院を出た。
ヤクルト1000が気になります。