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元気

 それにしても僕はあんまり説法は得意じゃないし、こう間ができてしまうとどうも気恥ずかしくなってきてしまうな……。


 カノンを余計落ち込ませちゃったんじゃないかと心配になってくる……。


 いっそテイだけでも父親代わりになってあげた方がよかったんじゃないか、その後に徐々に父親離れをさせて行った方がよかったんじゃないかと色々な事を考えてしまう。


 カノンは一見一人でもなんだかんだやっていけるように見えて、実際のところはまだ13歳の子供だし、精神的にはまだ家出した頃のままなんじゃないかと、これまでの話を通して思う。


 そんなカノンのお願いを無下にしてしまってよかったのだろうか……。


 そうやってうだうだと考えてしまう。



「レイ……」



 ようやくカノンが静寂を破る。



「なんだ?」

「レイは私の事好きか?」

「えっ、……あぁ、そうだな。一緒に冒険者やってられるくらいには好きだな」



 唐突な質問でびっくりしてしまったが、多分親愛的な意味だろう。


 そういう事なら答えは是だ。


 カノンと居るのはなんだかんだ楽しい。


 戦いのときは頼りになるし、自分でできない事はちゃんと僕に頼ってくるのも良い所だ。


 時々暴走気味になるけど、その点も踏まえてカノンと一緒に居て飽きる事は無い。



「パパじゃなくても、パパみたいに一緒に冒険してくれるか?」

「今までそうしてきてたじゃんか、これからも変わんないよ。そもそもそういうのは家族かどうかなんて関係ないだろ?なんならずっと一緒じゃなくても、宿屋のライアンさんたちとか、ギルドのリッテさんとか、ぶっきらぼうだけどバーのマスターとかも皆カノンの事好きだと思うぞ。淋しかったらそういう人たちにも甘えればいい。パパにしか甘えちゃいけない訳じゃないんだぞ?」

「そっか……」



 ようやく自分の中で落としどころを見つける事が出来たのだろう。


 カノンはようやく背中から頭をどけた。



「……わかった!ちょっと元気出てきた!」

「そりゃよかった」

「じゃあこれからも一緒にお風呂入るぞ!」

「そりゃよくないかな」

「ええ~っ!?」



 カノンは僕の背中をベシベシ叩いてくる。


 普通に痛い。


 だが何はともあれいつもの元気を取り戻してくれたようで良かった。




 その後、小さいメイドさんたちに一緒に風呂に入ってたのがバレて騒ぎになったり、ハインリーネ様も来て茶化されたりと、朝から大賑わいになってしまった。


 だが風呂場で見せた弱気なカノンはもうそこには無く、朝ご飯を食べ終わった後庭で小さいメイドさんたちとワイワイ遊んでいる。


 アイラちゃんもカノンに結構懐いていたが、多分カノンは小さい子に好かれやすいんだろうな。


 僕は魔族の件の細かい決め事をハインリーネ様と相談し、ヴェルトラーデ邸を出る事になった。



「おーい!帰るぞカノン!」

「え~、私ここに住みたいぞ!毎日あのベッドで寝たい!!」

「はっはっは、満足してもらえて何よりだけど、ここは色んな要人も訪ねてきたりするから毎日は難しいかな」

「たまになら泊まれるのか!?」

「やんわり断ってんだよ。察せ」

「それを口に出すのもどうかと思うけどねぇ……」



 色々あったが、カノンの気持ちを知ることができて、結果的には良かったんじゃないかと思う。


 僕たちはハインリーネ様に感謝を述べ、いつもより少し遅めに冒険者ギルドに顔を出したのだった。

気持ちを言葉にするのって難しいですよね。

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