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湯船

 ……どうやら睡眠時間が少なかったのと、お風呂が気持ちよかったのもあり、湯船の中でうたた寝してしまっていたようだ。


 そんな僕の顔面にザバァァンとお湯がぶっ掛けられる。



「ぶはぁ!!?」



 僕は微睡みから一気に引きずり下ろされた。


 今までどれだけ寝坊しても顔に水を掛けられて叩き起こされるなんて経験は無かったが、実際経験してみると一瞬で起きられる画期的な方法かもしれない。


 しかし何故ぶっ掛けられたのか。


 メイドさんたちがそんなことするはずがないだろうし、ハインリーネ様もそんなお茶目じゃないだろう。


 どう考えても犯人はただ一人。


 僕はその答えまでに、顔を拭うその一瞬で辿り着く。


 徐々に鮮明になっていく、波打つ湯船の湯、足に当たる自分以外の何か。


 反射的に足を引いて縮こまる。


 そして顔を拭うこの手を離してはいけないと悟る。



「……おいカノン」

「なんだ?」



 はいアウト!!!


 どうすりゃいいのコレ!?


 カノンも湯船に入ってる時点でどんな格好かは一目無くとも瞭然だろう。


 認知した状態でこの手をどかせば事故じゃ済まないじゃないか!



「どうしてここに居る」

「お風呂使っていいって言われたからだぞ」



 だからって他の人が先に入ってるのに構わず入るか普通?


 いやダメだ、カノンには時々普通が通じないんだった。


 とにかくカノンを視界に入れさえしなければいい。


 ひとまずカノンの声がする方向の反対側を向いて手をどける。


 僕の服は向かって右方向にある。


 そしてカノンの位置は真後ろ。


 服のところまではなんとかたどり着けるだろう。


 この際羞恥心を捨て、大胆に風呂を出て、さっさと服を着て出て行くしかない。



「……じゃあ僕はもう出るから」



 そう言って立ち上がり、風呂から出ようとした。


 だがしかし、その試みはカノンの手によって阻止された。



「待って!」



 ガシッと僕の胴周りを両腕で捕らえる。



「ばっ、バカ!離せ!」



 背中に柔らかい感触が当たる。


 背負ったりなんかで接触することはままあるが、そんな生易しいものじゃない。


 ガチの生なんだが!?


 寝ているカノンのしがみ付きならまだしも、本人の意思でしがみ付かれているとどれだけもがいても振りほどけない。


 僕はカノンのパワーに負け、ずるずると湯船の中に引き戻された。



「さすがに一緒に入るのはマズいって!ってかお前濡れるの嫌なんじゃなかったのか!?」

「お風呂は昔よく入ってたから大丈夫っ!でも誰かと一緒じゃないと怖い!」

「わ、分かった!まだ出ないから!一旦手を離せ!」



 ここは観念して止まるしかない。


 しがみ付かれたままより百倍マシだ。


 僕は視線は背けたまま再び肩まで湯船に浸かった。

初心者なのでどこまで描写したらR-18になるのかの基準が分かりません。

教えてエ□い人……。

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