保険
「なんていうか、噂以上に子供っぽい子だねカノンちゃんは。いやまあ13歳ってのも十分子供だとは思うけれど。ほとんどの時期を一人で活動していたと聞いていたからもっとしっかりしているものだと思っていたよ」
後ろからハインリーネ様に声を掛けられる。
「ギルドの受付をやってるリッテさんも赤ちゃんみたいって言ってましたね。暗くなったらすぐ寝ちゃうんですけど、でも外敵の接近にはいち早く気付いて飛び起きるんで、冒険者としては結構ちゃんとしてるんですよ」
「なるほど、じゃあゆっくり休める時はちゃんと休んでもらわないとね」
ジニーさんはベッド脇のテーブルに水差しとコップを置き、明かりを消して僕たちは部屋を出た。
「それじゃあ料理が冷めないうちに食堂へ戻ろうか」
「そうですね」
とは言っても僕ももう割とお腹いっぱいだが、もう少しくらいは豪華な夕食を楽しむとしよう。
食堂に戻るとスープから湯気が立っていた。
僕たちが居ない間に使用人さんが温め直してくれたのだろう、気配りがハンパない。
「さて、改めて聞くけど、本当に騎士団入りはしなくていいのかい?」
ハインリーネ様も食事を再開しながらそう聞いてくる。
「すみませんがカノンが断った以上は僕も同じ答えです……。それに、なんだかんだ僕も最終目的は魔王を倒すことですし、自由に動きにくくなるのはあんまり好ましくないですね……」
「そうか。でも冒険者だからと言って自由に魔界に出入りできるというわけでもないぞ。出入口をグランブルク王国が管轄している以上、あの国との衝突は避けて通れない。あるいは転移魔法を習得して一か八か不法侵入をするくらいだ」
不法侵入って……、だがたしかに転移魔法なら侵入できるか。
ただ問題はどこに出るか分からないっていうのと、複数人で転移することができるのかってところだな。
出所が悪ければ即座に魔族に袋叩きにされるだろうし、転移魔法が1人ずつしか飛ばせないものだったら上手くコントロールしないと離れ離れになってしまう可能性もある。
その方法はあまり現実的ではないだろう。
「方法は後々考えます。今は僕もカノンももっと強くなるために修行するのがメインですし。……そこで、さっきの示談の話なんですが」
「おや、要求は決まったのかい?」
「はい、魔族との戦闘を経験しておきたくて……。騎士団としてではなく、冒険者として魔族討伐に参加したりできませんかね……?」
騎士団の人と一緒なら多少は安全だろうし、魔族がどんな相手なのかも知っておきたい。
「うーん……騎士団長的にはちょっと許可できるものではないけれど……。そうだなぁ……、例えば僕が君たち指名で依頼を出して、目的地にたまたま騎士団に討伐依頼が出されている魔族が居た場合、魔族との戦闘になるのは不可抗力かもしれないねぇ」
「い、いいんですか!?」
「いいとは言っていないけどね。ただ僕たち騎士団も魔族討伐には毎度全力を尽くす。夜中だろうと報告があれば討伐に出る。そんな僕たちより先に魔族と遭遇しなきゃいけない。ある意味魔族を討伐するより難しいかもしれないよ?」
立場上正式に許可はできないみたいだが、機会をくれるだけで十分だ。
それに騎士団より先に遭遇できて戦ってみて、もし手に負えなそうだったらルブルム王国方面へ逃げれば後から到着する騎士団に助けてもらえるという保険付きだ。
「わかりました!それでお願いします!」
「私としては本当に、魔族と交戦するのは推奨しないけどね……」
日常がマイクラに侵食されていく……。




