魔物
それから何事も無く3日間の時間が過ぎた。
その間僕たちはこの世界の法律や魔法などについて勉強をしたり、剣の訓練なんかをしていた。
この世界のシステムについて、聞けば聞くほどゲームなんじゃないかと思えてくる。
特にこの世界においての魔法の習得方法だ。
魔法はレベルが上がった時に取得できるスキルポイントを割り振ることで使えるようになるらしい。
ただ魔術と呼ばれるものだけは別で、魔術に対する理解と魔法陣と供物と呪文、それらを揃えてようやく実現する特別なものだ。
つまり帰還魔術はそう簡単にパクれないらしい。
……というのはさておき、もう一つ判明したのがステータスの変動についてだ。
これについても単純で、レベルが上がることで得られるステータスポイントを割り振ることで任意の能力値を上げることができるらしい。
ちなみにこの能力値は本人の元々のスペックに上乗せして発揮されるらしく、本人の筋肉量は数値に影響しないらしい。
筋トレの件は徒労となったが検証なんてそんなものだ、まあ完全な無駄というわけではなかったし良しとしよう。
こんな世界だし素の筋肉はあって困らないだろ。
そんなこんなで僕たちが召喚されたことを国民に発表する講演もつつがなく進み、僕たち7人は王国軍へと配属された。
この日は初の王国外へ遠征する日だ。
試験的に外の弱い魔物と戦ってみて感覚を掴め、とのこと。
いやいきなり実戦かよとも思ったが、レベルを上げる手っ取り早い方法でもあるらしいので、僕たちは王国軍から選ばれた人たちで小隊を組み国外へと出たのだった。
「ではこれより、実践訓練を始める!勇者諸君、ここ一帯は瘴気が薄いため強い魔物は発生しない!10才の子供でも簡単に狩れるような魔物だ!衛生兵も待機している、安心して戦ってほしい!」
僕たちの前に立ちそう言ったのは小隊長のクレフ隊長、関君に似て随分活力のある男性だ。
王国近辺の哨戒部隊所属で、このあたりに詳しいという事で配属されたようだ。
この辺の魔物が強くないというのは、軍の人たちが軽装なのを見れば嘘ではないことが分かる。
僕たちも動きやすい軽めの防具にバックラーと長剣といった装備だ。
「あそこに居るのが瘴気の影響を受け魔物化したウサギだ!手本として一度私が討伐して来よう!」
そう言ってクレフ隊長は抜刀し歩きだす。
目指すは角の生えた大きめのウサギだ。
野生のウサギが瘴気に蝕まれる事で変異し、狂暴化して人を攻撃するようになるのだとか。
瘴気は魔界に近づくごとに強さを増し、それに比例して魔物も強くなるそうだ。
魔物は基本あまり知能が高くないようだが、完全に瘴気のみで形成された魔族と呼ばれるものはある程度の知能を持ち、時には人語を理解する魔族も現れるらしい。
なんか対話できる相手とかになってくると一気に討伐する難易度が上がりそうだが、まあその辺は今は考えなくてもいいだろう。
これからやる仕事はチュートリアルのように簡単な敵を倒していけばいいだけだ。
「あのウサギは獲物を見つけるとまず一直線に突進し角で攻撃してくる習性がある!その一撃を盾で弾きッ!反動で転がったところに剣を叩き込むだけだッ!」
クレフ隊長はそう説明しながら実演して見せた。
すごく慣れた動作でウサギの首を切断し討伐が完了した。
「とまあこんな感じで慣れれば楽勝だ!ちなみに首を狙わなくても胴体に叩き込むだけでも倒せるぞ!さあ、魔物狩りの開始だッ!」
「オォーッ!」
拳を突き上げたクレフ隊長に呼応したのは関君だった。
やっぱりどこかシンパシーを感じるところがあるのだろうか。
そんな感じで魔物狩りが開始し、僕たちは魔物の捜索に出た。
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