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示談

 どこかしらに突然現れる魔族を探し当てて、すぐに倒しに行かなきゃいけないってのは結構大変そうだ。


 ハインリーネ様はどうやら超広範囲の探知魔法が使えるらしいが、それでも24時間体制でずっと見張っては居られないだろうし、夜中に現れたら対処も遅れそうだな……。


 この前はそんな中、僕が監禁されたのを見かねて助けに来てくれたのか。


 改めて感謝しなければ。



「そういえばオーフェンさんとノイルさんってあの後どうなりましたか?」

「どうにか和解できたそうだよ。この前のようなことは二度としないってさ。オーフェン君が妹煩悩なのは両親が不在で、ずっとオーフェン君が親代わりをしていたからなんだ。小さいころからこの国の魔術研究機関で働き続けて、今や27歳という年齢で魔術解析部の部長を務めている。彼の実力は確かな物で、こちらとしてもあまり大々的に処分はしたくないんだ。だから今日はその件の示談も兼ねて呼ばせてもらったというわけなんだ」



 ハインリーネ様は申し訳なさそうに綴る。


 できるだけ内密に済ませたいから食事の誘いという名目で自宅というプライベートな空間を選んだわけか。



「あれ?じゃあカノンを呼んだ理由は……?」

「それは単純に女の子とお食事をしたかったからさ」

「さっきまで策士な感じだったのに急に動機が不純!?」



 あらゆる行動に裏がある感じだったのに急転直下じゃないか。



「とまあ冗談はさておき」

「冗談かい」

「実は君たちの話はちらっと小耳にはさんでいてね。その件はオーフェン君の件とは別物だから、カノンちゃんが戻ってきたら話すとしよう。ところで示談の話だが、私のできる範囲であればできるだけ工面しよう。何か要望はあるかな?」



 要望と言われても……、グランブルク王国に居るみんなを助けてくれっていうのは無理があるし……、そもそも契約があるから簡単には連れだせないだろう。


 グランブルク王国そのものが無くなれば、「この国を守る」という条件はほぼ無効化されるだろうが、それはそれでさっき聞いた魔族侵入のリスクが伴う。



「うーん……」



 そう頭をひねっていると、コンコンコンと部屋の扉がノックされた。


 ドアが開かれ、ジニーと呼ばれていたメイドの人が入ってくる。



「ご歓談中失礼致します。お食事の用意ができますので食堂へどうぞ」

「うん、ありがとう。レイ君、続きは後にして、カノンちゃんも待ちわびているだろうし食事にしよう」

「わかりました」



 ジニーさんに連れられ、1階の食堂へと案内された。


 中に入るとカノンが既に席に座っていて、ボウルに入ったサラダをモルモットのようにモシャモシャと食べている。



「カノンお前……家主を差し置いて何先に食っちゃってんだ」

「おおレイ!この草甘じょっぱくて美味いぞ!」

「草ってなぁ……、てかそれサラダじゃなくてドレッシングの味の感想だろ」

「あはははは、頬を膨らませて可愛らしいじゃないか」

「最初だけですよ。食い意地張りすぎてて段々呆れてきますから」

「でも可愛らしいという部分は否定しないんだね?」

「う……、ま、まあ……」



 軽く図星を突かれてしまった。


 いや正直可愛いといえば可愛いのだが。


 この歳の近さで本人の前でそんなこと言うのは憚られるというかなんというか……。



「さて、僕たちも食べようか」



 ハインリーネ様に促され席に着くと、サラダやスープ、メインディッシュやら何やらが次々に運ばれてくる。


 どれも作りたてで、3人で使うにはには広すぎる食堂が良い香りで充満していく。


 マーレラさんのお店とはまた違った、高級感のある料理がずらりと配膳された。



「じゃあ私たちも、命の恵みに感謝して、いただきます」

「い、いただきます」

「いただいてまーす!」



 そうして僕たち3人での晩餐会が始まった。

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