時計
魔法と剣を組み合わせた戦い方を学び始め3日経った。
今日は昼からの稽古は休みで、いつもの図書館に行く予定だ。
以前頼んだタルタロスさんの本の件で王宮の方に呼ばれているらしく、一旦図書館に寄ってから従業員の付き添いと一緒に王宮に行くことになっている。
最低1ヶ月と聞いていたからもう少しかかるものだと思っていたのだが、意外にも早く話が通ったようだ。
まあ実際本を見せてもらえるかどうかはまだ分からないが、本の事を知っている人と話ができるだけでもいいだろう。
「どうもノイルさん」
「あっ、レイさん、こんにちわ……」
図書館で出迎えてくれたのはノイル・マーキスさんだった。
あれから何度か交流し、お互い下の名前で呼び合うようになった。
ノイルさんは色々と本の事について教えてくれるので非常に助かっている。
「ところで、ノイルさんが出迎えてくれたって事は、今日の付き添いはノイルさんって事ですか?」
「は、はい……、まだ時間には少し早いですけど……、もう出発しますか……?」
「あ~、あんまり早く行っても困らせるかもしれないので、少しここでゆっくりしてから行きますか」
なんせ王宮と図書館とは物理的にかなり近い。
徒歩数分で着く距離だし、約束の時間のちょっと前に出れば全然間に合う。
ノイルさんは「ではこちらに……」と従業員用の部屋に通してくれた。
時間が来るまで僕たちは軽く談笑して過ごしたのだった。
「───あ、そろそろ時間ですね……」
ノイルさんは壁に掛けられた、直径40㎝くらいの円盤を見ながら言う。
今更だが、この世界にも日時計以外の時計もしっかりと存在していて、この銅製の円盤がそうらしい。
どうやら魔術で動いているらしく、円盤には複雑な魔法陣が描かれており、中心を軸に一日で一周円盤がまるごと回るので、魔法陣の回転具合で時間を測るようだ。
図書館のそれは、円盤の周囲に24等分の目盛りが追加で描かれていて、円盤の方の目印さえ分かれば今が何時なのかがすぐに分かるようになっている。
時間が分かるのは便利なので僕も買おうと思ったのだが、取り扱っている店が少ないし、単純に高額で手を出すことが躊躇われた。
たかが魔法陣の描かれた銅板が金貨3枚で取引されているのだ。
小金貨換算で6枚。
タルタロス埋蔵金でお金に少し余裕はあるとは言えど、そんな豪遊ができる程財布の紐は緩くない。
しかもこの銅板、サイズが小さくなるにつれてどんどん値上がりをしていく。
腕時計レベルの大きさになったら大きめの屋敷が1件くらい建てられるんじゃなかろうか。
まあそんな愚痴はさておき、僕たちは約束の時間に遅れないよう王宮へ向かうことにした。
嗚呼、黄金週終了早杉……。