急所
「その姿勢のまま試しに片手でウォーターショットを撃ってみてちょうだい。あっ!顔はやめてよね!お化粧が崩れちゃう!」
「こんな感じですかね?……ウォーターショット!」
僕はなるべく姿勢を崩さないように左手だけをダイアンさんの方に向け、最小限の威力でウォーターショットを放った。
いつもと違う姿勢で魔法を使ったせいか、狙った位置から少し下にズレてしまった……。
水弾はダイアンさんの股間目掛けて飛んでいく。
「あぁン♡」
「ぶふっ……いやすいません……狙いがズレちゃって……」
「ぜんぜんいいわよ!もっとちょうだい!!」
なんて言いながら腰を振るもんだから吹き出してしまった。
ダイアンさんは時々こんなしょうもない下ネタをぶち込んでくる。
しょうもないと分かりつつも笑いは込み上げてくる。
男子高校生の生態なんてそんなもんだ。
「まあ冗談抜きに急所への攻撃は実戦では有効だから、狙えそうだったら積極的に狙っていった方がいいわ」
「でもなんか、ちょっと気が引けません?」
「命のやり取りに情けなんて必要ないのよ。サクッとドタマかち割ってやりなさい」
ドタマって……、いや意味的には頭の事なんだが。
言葉選びに意図的なものを感じざるを得ない……。
とはいえ、思い返せばカノンが首ばかり狙うのも歴とした急所攻撃か。
「まだ上手く当てられるかも分からないですけどね……」
「まあとにかく練習よ!ダンサーだって最初から上手く踊れるわけじゃないわ。まずはゆっくりでいいから感覚を掴んでいきましょ」
「まあ、それもそうですね。もう一回お願いします」
「じゃあ次はアタシにウォーターショットを撃ち込む動作まで入れて流しでいくわよ!」
再び間合いを取り、さっきまでの動作をもう一度行う。
次は狙い通り腹部に命中する。
「あぁン♡」
「ふっ……あの、喘がないでもらえます……?」
なんてやり取りを何度か続けながら、この日は受け流しから魔法攻撃をする練習を続けていった。
まだいまいちコツを掴めてはいないが、次第に魔法発動までのタイムラグは縮めていけたと思う。
実戦で使えるくらいの技量には達していないからまだ剣を使う許可は下りないが、稽古が段々と身になっていってる事は確かだ。
少なくともカノンに頼りきりではなくなるまで頑張ろう。
明日もしかしたら投稿間に合わないかもしれません……。