重量
「こんばんわ~」
「あら~、いらっしゃ~い。えっと、たしかカノンちゃんのお付きの人?」
「パーティーメンバーの篠原励です……」
「カノンちゃんはちょっと前に宿に戻っていったから、今日はお一人で夕食かしら?」
「はい、席空いてますか?」
僕はマーレラさんに案内され席に着く。
昨日と同じ席だった。
隣の席には昼間と同じくダイアンさんが座っている。
「あらぁ、おかえりなさいレイちゃん」
「ただいま……って別にここに帰ってきたわけじゃないですけど。どうでしたか?カノンは」
心なしか疲れているようにも見える。
やはりカノンに振り回されて帰ってきたのだろうか?
「少しだけ魔物との戦闘を見せてもらったわ。正直型も何もあったものじゃないけれど、あの子の強さは本物ね。体の柔軟性やバカみたいな体力もさることながら、あの細身からは考えられない膂力まで全てを戦闘に活かしてる。相当なセンスの持ち主よ」
ダイアンさんからしてもバカみたいな体力と言わしめた。
「一瞬騎士団に推薦でもしようかと思ったのだけど、統率が求められるような所はあの子に向いてないと思って考え直したわ。魔物をすべからく抹殺せんと突っ走るあの子は、冒険者という稼業でこそ力を発揮するタイプだわ」
「まあ僕もほとんど付いて行ってるだけですしね。ただ、自分だけではどうにもならないって時だけは、割と素直に助けを求めたり言うことを聞いたりしてくれるんですよ。ゴーレムの時とか川渡りの時とか」
「あらそうなの?意外とちゃんとしてるわね」
まあそういう石に躓くまで突っ走り続けるのが悪い所なんだが。
いつか躓いて転んで、大怪我をするんじゃないかと、僕が一番心配している部分だ。
「ところで、岩は砕けるようになりました?」
「結論から言うと無理そうね……。岩を砕くほどの破壊力には相応の質量とスピードが必要なの。極論、大剣を振り回せるパワーがあれば条件としては十分なのよ。あとは一番速度が乗る切っ先を上手く当てればいいだけ。ただ……」
「ただ?」
「カノンちゃん、何故かあの聖剣?しか使いたがらないのよね……。なんでも、あの子にしか扱えない聖剣らしいのだけど、あの剣じゃあ長さも重さも足りないわ」
「あぁ、カノンしか動かせないから重さも分からないですしね」
カノンが手を離した瞬間その場に固定されるんだから、実質重さゼロと言ってもいいかもしれない。
「いいえ、重さを量る方法はあるわ。剣を持ったカノンちゃんごと量ればいいのよ」
「あぁ、そうか」
「あるいは鞘に収まった状態ならアタシでも動かすことができるみたいだから、その状態で量るとかね」
「何でパッと思いつかなかったんだろ……。別にそこまでして剣の重さを量りたかったわけじゃないけど……」
「女の子の体重を量るなんて紳士としてあるまじき行為だものね。アタシは紳士じゃなくてオネエだから量ったけど」
「いやまあ、正直あいつそもそもそういうの気にしないタイプだと思いますけど」
「ついでにスリーサイズも測ったのだけど、知りたいかしら?」
「いやいやいやそれこそダメでしょ!?」
「あらあらあら、冗談よ冗談♡」
「そういう冗談はよしてくださいよ……」
今後カノンを見かける度に、カノンと共にその数字が網膜に映るなんてことになったら確実に今後の活動に支障が出る。
皆して僕の理性を試すテストか何かしてるのか?
まったく勘弁して欲しい。
小説のネタになりそうな夢を見たのでいつか物語にして投稿したいなぁ……。