換金
正直まだ図書館で調べ物をしてても良かったかもしれないが、なんか雰囲気に流されて退館してしまった。
日は結構傾いているが、まだ夕飯には早い。
「適当に街中散策してから帰るか……」
今日もライアンさんのところに泊めてもらおう。
風の向くまま気の向くまま、広いルブルム王国の街中をうろつきながら時間を潰す。
王宮から離れるにつれて建物の大きさは徐々に小さくなっていき、民家が多くなってくる。
西側の外周付近に辿り着いたが、ここはほとんどの面積が畑だった。
畑を見て回っても僕には何の収穫も無いので、次は北側を見て回ることにした。
北側は商業が盛んのようで、宝石だったり家具だったり、色々な種類の店が立ち並んでいる。
ふと思い出し、僕はとりあえず目に付いた質屋に入った。
店内には骨董品や貴金属のアクセサリなんかが置いてある。
奥の方まで進むと店員が一人、いらっしゃいませと迎えてくれる。
小太りで、鼻下の髭を綺麗に整えた、柔和な雰囲気のおじさんだ。
僕は荷物から小金貨を1枚取り出してその人に見せる。
「古い小金貨なんですが、これっていくらで買い取ってもらえますか?」
小太りのおじさんは掃除の手を止め、僕の方へと向き直る。
「ふむ……、ちょっと見せてもらってもいいかな?」
小金貨を手渡すと、鑑定台的な場所で備え付けの拡大鏡や、よく分からない魔術なんかを使って本物かどうかを鑑定してくれた。
「刻印は正規のもの、金の含有率も約600年前に作られたものとほぼ一致……。どうやら2世代前の小金貨で間違いなさそうだね。そうだな……、ウチで買い取るとしたら、汚れとかの品質も加味して……小金貨3枚でどうだい?」
「小金貨3枚……3倍か。とりあえずそれで換金お願いします」
「まいど。しかしこんな珍しいものどこで見つけて来たんだい?そんな歳でトレジャーハンターだったりするのかな?」
小太りのおじさんはゴソゴソとお金を用意しながら聞いてくる。
「いえ、冒険者やってます。いや、職種的には似たようなものか?」
「へぇ、冒険者か。苦労してるんだね。でもこんなお宝を見つけるなんて運が良いじゃないか」
そんな感じでとりあえずの取引は終了した。
それにしてもまさか3倍の値が付くとは……、ライアンさんには結構ぼったくられたな。
まあいいか。
とりあえず残りの4枚も売りに行くことにしよう。
小金貨3枚を基準にして、それより低ければ他の店へ、高ければ1枚売ってその値を再び基準にする。
前の店ではそれより高く見積もってくれた、と言う作戦は案外通用する。
そうして5枚の旧小金貨は最終的に小金貨17枚へと姿を変えた。
全部調べて一番高く買い取ってくれるところに全部売るのでも良かったが、冷やかしみたいになるのもなんか嫌だったし、その店の人とコネクションを作っておくのも悪くない。
これで当面は資金に困らないだろう。
そして換金が終わる頃にはいい感じに日も落ちていた。
今日もマーレラさんのところに夕食を食べに行くことにしよう。
飽き性なものなので、まさか2ヶ月も投稿続くと思ってませんでした。
読んでくれてありがとうございます。
拙作ですが、今後ともよろしくお願いします。