南門
今までにカノンとパーティーを組んだ人は何人もいるとのことだったが、あの場にはガランさん以外にもカノンとパーティーを組んでいた人がまだ何人か居たのだろうか。
ちゃんと調べたわけじゃないから断言できないが、あの場で二人組以上ではない人たちは見かけなかった気がする。
やはり冒険者という職業は危険が付きまとう以上、もしもの事があった時のために誰かとパーティーを組むのが普通なのだろう。
そんな中勝手に突っ走るカノンはパーティープレイの根底が崩れるしやっぱ長続きしないんだろうなぁ……。
ガランさんとしては「カノンは一人でもなんとかなるし、はぐれた僕が危険な目に合う可能性もあるからパーティーに入れてやろう」みたいな考えだったのではないだろうか?
それを無下にしてしまったのは申し訳なかったのだが、僕もカノンに付いて行くと決めた以上やれるだけはやらなくてはいけないと思う。
リッテさんにカノンの事をお願いされたりもしたし。
「さて、カノンは南の村の方に行ってるって言ってたけど……、そういえば南ってどっちだ?」
元の世界なら日が東から昇って西へ沈むわけだが、異世界でもその通りなら日の位置で方角は大体分かる。
今更ギルドに戻って方角を聞くのも面倒だし、そこら辺の人に話を聞くのが手っ取り早いだろう。
僕は昼飯の用意も兼ねて適当な店に寄ることにした。
「いらっしゃいませ~」
いい香りに誘われて、レンガ造りのパン屋に入店した僕を、店員らしき黒髪ポニーテールの女性が笑顔で歓迎してくれた。
フランスパンのような細長いパンが何種類か、他にもバターロールや果実入りのドーム状のパンなど、日本のパン屋ほどとは言えないが色々な種類のパンが揃っている。
僕はその中でも保存がききそうなパンを5つほど選んで会計をお願いした。
ついでに南門の位置も聞けたので元の目的も達成した。
どうやら日の出方も元の世界と一緒のようだ、分かりやすくて結構。
5つ買ったのはパンの香りで食べたくなってしまったので、今食べる用の1つと、残りは昼にカノンと分けて2つずつ分けるためだ。
食料も用意できたことだし、そろそろ本格的にカノンを追うことにしよう。
ちょっと行儀が悪いが、僕はパンを食べながら軽い駆け足で南門を抜けた。
ざっくりした位置しか聞いていなかったが、南門からまっすぐ30分くらいジョギングした程度の距離に森林を見つけた。
依頼の内容はオオカミの魔物を30体以上討伐してくることだ。
森林に少し入ったあたりで、種類を問わず何体もの魔物が首を切られ絶命していた。
この倒し方は十中八九カノンだろう。
僕はその痕跡を追いかけ森林を進むと、魔物の呻り声と地を揺らす足音が聞こえてくる。
その方向へ駆け寄るとやはりカノンが魔物と戦っていた。
カノンを探し出すのも慣れたものだ。
「調子はどうだ?カノン」
「お!レイも来たのか!私は元気だぞ!」
「聞いたのはカノンの体調じゃなくて狩りの進み具合なんだが……」
まあ主語が無かった僕が悪いか。
「せっかくパーティーなんだから僕も連れてってくれよな」
「いやぁ、寝てたからサクッと終わらせて次の依頼で一緒に行く予定だったぞ」
「でももうじき日が天辺に昇るぞ?」
まあ日が天辺に昇ったら正午というわけではないが。
意外と苦戦してるのだろうか……?
「サクッと終わらせるつもりだったんだけど、何討伐すればいいのか忘れちゃってな!30体倒すのは覚えてたからとりあえずこの森に居る魔物全種類30体倒してるところだ!」
「また依頼書ちゃんと読まなかったのか……。討伐するのはオオカミの魔物だよ。ってか全種30体討伐ってゴリ押しすぎるだろ」
この世界の住人ってゴリ押し好きばっかなのか?
「そうだ!オオカミだ!それならもう終わったぞ!」
そう言ってカノンは腰に付けた麻袋を僕に見せる。
そこに入っていたのは色々な動物の耳の切れ端だった。
魔物の討伐数のカウントは、倒した魔物の右耳を切り落として数える決まりらしい。
……耳の無い生物はどうやってカウントするんだ……?
「……まあいいか、終わったならそろそろお昼だし、パンを買ってきたから森を出たあたりで食べてから帰ろうか」
「おお!気が利くじゃないか助手君!!」
「誰が助手だ」
と、僕の出番は無かったが、カノンと一緒に森林から出た草原でちょっとしたピクニック感覚の昼食を取った後、いつも通りダッシュでルブルム王国に帰るカノンを追いかけ、僕も王国へ帰った。
相変わらず食後なのによくあんなに走れるもんだな……。
久々にデジモンの曲聴いてたんですが、やっぱりどれも名曲で燃えますね……。
デジモンアドベンチャー録画したVHSまだ残ってるかな……?