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会議

「さて、皆揃ったかな?」



 宿舎に着いた僕たちは、ひとまず情報の整理と題して大部屋に集まって会議をすることになった。


 この宿舎には世話係としてリミエラさんも含め何人かの使用人が常駐するらしいが、その人たちは一旦建物外で待機してもらうようお願いした。


 特段悪だくみをするからとかいう理由ではなく、まだ信用が低い相手への情報漏洩を防ぐためだ。



「望月さん、さっきの話のまとめを教えてくれる?」

「はい、私たちがこの場所に連れてこられたのは魔王を討伐させるため、私たちにはユニークスキルというものが付与されていて、それを行使しなければ魔王を討伐できない、同じ状況が500年ごとに発生しているため私たちが初というわけではない、魔王の外観や強さなどの情報は不明、私たちが元の世界に帰るための提示された方法は現状1つのみ、魔王を討伐し魔星石を奪い、その魔力で帰還魔術を行う、これについての考察として帰還する方法がもう一つあるとすれば、必要量の魔力を自前で用意して帰還魔術を行う方法ですね、ただその帰還魔術というのを相手方に教えてもらわなければいけないので、素直に教えてくれる可能性はほぼゼロですかね、最後に、協力関係が構築されるまで外出不可、おそらく外の世界がどうなっているかや、ユニークスキルがどういうものかなどの指導もされないと思うので、実質的に生殺与奪の権が握られてる状態ですね、以上です」



 望月さんなりの考察を交えて解説してくれた。


 相手はこちらの首を縦に振らせるために色々と情報を絞ってるというわけだ。



「ありがとう望月さん、正直魔王討伐なんてやりたくないけど、現時点だと相手の要求を呑む方が安全だと思う、皆はどう思う?」



 望月さんは手帳をぱたりと閉じ、大役を終えたかのように静かに目を伏せた。


 まあ要求断った事で王国に置いてもらえなくなって敵の近くに放り出されるなんて事態になったら目も当てられない。


 もし手を切るにしてもある程度は協力したふりをして、色々と情報を聞き出してからじゃないとリスクが高い。


 それまではこの国や人類のために戦うことになるが、僕たちは戦闘経験なんて一切無い素人だ、最初のうちはあまり危険な事はさせられないだろう。



「はいはーい、質問いいですかー」



 手を挙げて発言したのは遠野さんだった。


 中性的な容姿の女性で、入学当時は男かと思ってた。



「はい、なんでしょう」

「僕戦うのとか絶対無理なんだけど、もしかして魔王たおすぞーってなったら全員強制参加なの?」

「いや、強制はしないよ、戦闘部隊は戦えそうな人と参加したい人だけで構成しようと思う、その代わり待機組は情報収集だったり魔王を倒す以外の帰る方法を調べて欲しい」

「どっちにしろ働かなきゃいけないのかぁ~めんどっち~」

「申し訳ないけど、状況が状況だからあんまり妥協はできないんだ」

「まあ君がそういうならそれでもいいさぁ、ただ僕に期待はしないでくれよ~」



 遠野さんはグデっと机に身を預けた。


 めんどくさがりな彼女は自分に仕事が回ってきそうになるとよく駄々をこねるが、なんだかんだ言いつつそれが必要なことなら協力してくれる、根は良い人だ。



「俺は賛成だ!現状他の解決策が無いのであればまず行動するべきだ!戦力になれるか分からんが俺も戦闘班に入れてくれ!」

「ありがとう関君、討伐隊が編成されることになったら僕も参加するつもりだから、その時はよろしくね」

「勿論だ!」



 次に声を上げたのは関君だった。


 彼は運動部でこそないが、バイタリティ溢れる体育会系の系列の人だ。


 いい学校に進学するために、ほぼ毎日のように塾に通っているらしいけど、悪いが正直そこまで頭は良くない……。


 ただ実直で常に元気な彼はクラスのムードメーカーのような存在でもある。



「俺は嫌だね、アレ、絶対何か裏があるだろ、そんな顔してたぞ」



 そう不満を露わにしたのは浦木君だった。


 彼はなんていうか、慎重派というか、まず相手を疑ってかかる節がある。



「うん、浦木君の言いたい事も分かるよ、ただ今はどうしても主導権が向こうにあるんだ、なら今は相手の思うように動いて隙を探すしかないと思うんだ、それにまだ相手が悪い人だと決まったわけではないしね」

「随分と楽観的でいられるな、相手は誘拐犯なんだぞ」

「だからこそ反抗的な態度を示してより状況が悪化する可能性だってあるだろ?」

「相手は魔王より弱くて俺らは魔王より強いんだろ?葛木も居るし武力でねじ伏せればいいだろ」

「おい、俺をアテにするんじゃねぇ」



 葛木君が不服そうに割り込む。


 実際剣が本職ではない貴族相手ならまだしも、国の兵士相手に葛木君一人で突破しようとするのは無理があるだろう。



「厳密には魔王を倒せる素質があるってだけだと思う、それに僕たちはその力がどんな物かさえ分かってないんだし」

「仮に素質があるってだけだったとして、お前は勝てるかも分からない相手に挑もうっていうのか?ここはゲームみたいな世界かもしれないが、ゲームみたいに何度もリトライできる世界かは分からないんだぞ」

「分からない事ばかりだから相手方に色々教えてもらおうってことだよ」

「だからそれ自体相手の仕組んだ事だろ、根本的に相手の掌の上ってのが気に食わないんだよ」



 どっちの言い分も正しい、とは思う。


 ゲームみたいにリトライできるか分からないっていうのはその通りだ。


 危険に身を投じて取り返しのつかないことになる可能性だってある。


 だけどもし国と敵対する行動をすれば魔王云々以前に僕たちの身が危ないかもしれないんだし。


 そしてその後もいくつか問答が続き、最後まで浦木君は対立したまま、初日のクラス会議は幕を閉じた。

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