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宿屋

「おっちゃん!ごちそうさま!」

「ごちそうさまでした」

「おう」



 僕たちはミルクを飲み終えギルドを後にする。


 まだ日は落ちていないが、空は少し赤みがかってきている。


 生活習慣が日の位置基準になっているカノンとしては、夕飯にはちょうどいいタイミングだろう。


 どこか適当な店を探そう。



「カノンはどこかいい店知らないか?僕はまだこの国の事あんまり知らないからさ」

「私もわからん!ご飯はいつも宿屋で食べてるから、そこしか知らないぞ!」

「あー、宿屋かぁ、そういえば僕も寝泊まりする場所どうにかしないとだなぁ」



 先にそっちを済ませておくか?


 宿の人に良さそうな店を教えてもらうのも手だ。



「よし、じゃあ先にその宿屋のところに連れてってくれないか?」

「わかった!こっちだぞ!」



 と言ってカノンは走り出した。


 僕もいつものようにそれを追いかけて走った。






 そうして連れて来られたのが、街の端にあるあまり大きくはない建物だった。


 一応看板で宿屋という事は分かるが、看板が無ければ普通の民家と区別がつかないだろう。


 カノンはその扉を開き中へ入る。



「ただいま~~!!」



 室内に入るカノンを出迎えたのは、布巾を握る赤みがかった髪の小さな女の子だった。


 7歳くらいだろうか。



「あっ!カノンおねぇちゃんだ!おかえりなさーい!」



 カノンに負けじと元気に応えた。


 その声を聞きつけ、奥の部屋から顔を出したのは、無精髭を生やした大人の男性だ。


 歳は30代から40代くらいに見える。


 髪色が女の子のと似ているし、親子だろうか?



「おかえりカノンちゃん。リッテさんから聞いてたけど、数日帰ってこないとやっぱり心配だったぜ。……ところで後ろの兄ちゃんは?」



 男性の視線が僕の方へ向く。



「あ、あの、冒険者としてカノンとパーティーを組むことになった、篠原励っていいます!今日泊まる宿を探してるんですが……」

「へぇ~、兄ちゃんが件の……。俺はこの宿の店主のライアン・バークレイだ。そこらの宿は埋まってるだろうがウチなら空きがあるぜ、一日銀貨1枚だ!」



 空き部屋があるようで良かった……。


 銀貨1枚がどのくらいかは分からないが、とりあえず小金貨出しておけばいいか。


 と、荷物袋の中ををまさぐっていると、低い位置からライアンさんへの抗議の声が上がる。



「もう!お父さん!初顔の人だからって吹っ掛けないのっ!……えっと、レイさん?私はあの人の娘のアイラ・バークレイです。本当は小銀貨1枚なので騙されないでくださいね!」

「なんだよアイラちゃん……、リッテさんも居ないしカノンちゃんはお金とか興味ないからいけると思ったのに~」

「リッテおねぇちゃんが居なくても私が居る限りお客さんを騙したりはさせないんだから!」

「はっはっは!こりゃ参ったな~、立派に育ってくれてお父さん嬉しいぜ!」



 仲の良さそうな親子だ。


 それにしても見た目の幼さからは想像できないくらいしっかりしている子だな……。


 正直銀貨と小銀貨の差がどのくらいあるのか分からないが、僕はタルタロスさんから貰った小金貨を1枚取り出して渡した。



「じゃあこれでお願いします」

「わわっ!?金貨!?」



 と、アイラちゃんは両手で受け取る。



「おっ……?そいつぁ小金貨だぜアイラちゃん。それにしても旧型の小金貨なんて珍しいもん持ってんなぁ兄ちゃん、遺跡発掘でも行ってきたのか?」

「え、旧型って事は使えなかったりします……?」



 それは困る……!


 そうなったら一気に一文無しじゃないか。


 タルタロスさんに文句を言いに行かなきゃならない。



「いやぁ、本当は使えねぇんだけどな、もう作られてねぇ硬貨な上に、古いやつは新しい金貨に再鋳造されちまって希少だからマニアなんかに高く売れんだ。この硬貨しか持ち合わせがねぇなら特別に現小金貨と交換してやるぜ?」

「あ~もうお父さん!またぼったくろうとしてる!」

「まあまあそう言うなって、こんな時間じゃ質屋ももう戸締りしちまって換金できねぇんだ。だからって俺は鑑定して正確な値段付けるとかできねぇし、兄ちゃんも今日泊まる場所がねぇと困るだろ?なら本来の価値で今使える硬貨に交換すればウィンウィンってやつだろ?」

「まあ僕もとりあえずその方がありがたいですね……」



 まだあと5枚あるし。


 ここまで来て野宿は嫌だし、背に腹は代えられない。



「よし!交渉成立だな!アイラちゃん、宿代差し引いたお釣り持ってきてくれ!」

「はーい。まったく、お金の話の時だけよく口が回るんだから……」

「これが交渉術ってやつだぜ!」

「はいはい」



 アイラちゃんは呆れ顔で奥の部屋へと姿を消していったのだった。

【硬貨の価値ざっくりメモ】

板金貨:1,000,000(円)

大金貨:500,000(円)

金貨 :100,000(円)

小金貨:50,000(円)

粒金貨:10,000(円)

大銀貨:5,000(円)

銀貨 :1,000(円)

小銀貨:500(円)

粒銀貨:100(円)

大銅貨:50(円)

銅貨 :10(円)

小銅貨:5(円)

粒銅貨:1(円)

って感じ。

粒は小よりさらに小さい硬貨。(なくしやすそう……)

板金貨は金の延べ棒みたいなやつ。

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