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再現

「……貴様まさか……」



 魔人は何かを察したのだろうか、私にはまだいまいち今の発言の全貌を掴めていない。


 勝つ事ができない……つまりは強い召喚獣であるという意味意外に何があるのだろうか?


 人型になった召喚獣の姿が次第に鮮明になっていく。


 ……それを見た瞬間、私の意に反して体が動いてしまっていた。


 過程を見ていたのだからそれが本物ではないと頭では理解していたはずだったが、衝動を押し止める間もなかった。



「──廉貞・七殺穿閃(しちさつせんせん)!」



 刑剋の矛を力任せに豪速で投げ飛ばす。


 単純だが、これが私の数少ない遠距離攻撃法。


 奥義ほどの消耗は無いが、物理的に連射の難しい技だ。


 矛は一直線に飛んで行き、目標の頭部を正確に貫き、その先で廉貞の効力が切れ地面に落下して止まった。


 ……これは完全に利敵行為だ。


 いくら怒りが先行したとしても許される行為ではない……。


 たとえその召喚獣が変化した姿が、先代のメグを殺害した主犯である仮面の魔族であったとしても。



「……なんだ、こやつは貴様とも所縁のある奴なのか?」



 しかし皇帝はそれを意にも返さぬ様子で、魔人から目を逸らすことなく私に声を掛ける。


 なぜなら私の行為は全く戦況に何の影響も及ぼす事は無かったからだ。


 刑剋の矛は間違いなく仮面の魔族……の姿をした召喚獣の頭部を貫いたはずだった。


 しかし、幻覚だったのか実体が無いのか、あるいは再生したのか定かではないが、召喚獣は何事も無かったかのようにそこに居た。


 ……駄目だ、実物ではないと分かっていてもまた手が出そうになる……。


 私は一度目を閉じる。



「申し訳ない、後に改めて謝罪する」



 と告げ、一度深呼吸をし気を落ち着けた後、正座になり再び目を開けた。


 災悔の盾は傍らに置き、これ以上手を出す意が無い事を示す。


 皇帝は淡白に「そうか」とだけ答えた。


 先ほどの皇帝の口振りから察するに、皇帝はあの仮面の魔族の事を知らないのか?


 そんなものを召喚獣として使役して大丈夫なのか?


 ……もしや「調伏できるか分からない」というのは「何が出るか分からない」というのと同じ意味なのではなかろうか?


 中身を知らず魔術を使う事は一般的には少なくない事だが、まさか皇帝ともあろう者がそんな事はあるまい。


 あの仮面の魔族の事は私と、反応からして今皇帝と戦っている魔人も知っているはず。


 他人の知識から姿形の引用でもしたのだろうか。


 やはりまだ私の魔術の知識ではあまり難解な魔術は解析が難しい。



「…………所詮紛い物だろう」

「我にはこれが何者か、どのような力を持っているかは知らぬが、貴様の思う勝てぬ相手であることはどうやら確かなようだな。魔族も強者が上に立つと聞くが、つまりこれが貴様らの上に立つ者という訳か。……さて、御託も程々に、そろそろ終わりにするとしよう」



 その言葉と同時に両者と召喚獣が動く。


 勝負は一瞬だった。


 まず召喚獣が距離を詰め、魔人がそれに応戦。


 召喚獣は懐から短剣を取り出し攻撃を仕掛け、それは簡単に刀に弾かれる。


 そのまま刀を返し召喚獣を袈裟斬りした。


 確かに召喚獣は肩口から斜めに真っ二つになったはずが、何事も無かったかのように気付けば無傷に戻っていた。


 私は以前仮面の魔族と交戦しているから分かる、これは奴の能力によるものだ……。


 残念ながらどういった能力であるかは暴けていない。


 治癒の能力にしても頭を吹き飛ばされても再生できるなんていうのは異常すぎるし、まるでダメージを負った事自体を掻き消したかのような現象を引き起こしているのだ。


 いやそれよりもあの召喚獣は姿形だけでなく能力まで再現できるというのか……。


 そして弾き飛ばされたはずの短剣もいつの間にかその手中にあり、再び突き刺しにかかった。


 振り切った刀では間に合わず、致命傷を避けるため魔人はそれを手で受ける。


 最後に、いつの間に拾ったのか、魔術で作ったグラディウスで、召喚獣の陰から召喚獣ごと魔人を突き刺したのだった。


 魔人に腕を落とされた時の意趣返しのような決着だ。


 先ほども見た通り、あのグラディウスに突き刺されれば魔人も魔族ももう死を待つのみ。


 皇帝は、苦しませるつもりは無いとばかりに、力なく膝を付いた魔人の首を取り、最後までその魔人が消えゆくのを眺めていたのだった。

今期観るアニメ多すぎてガチめに大変なんですが!

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