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「ラドラ!何故ここに居る!地下で待機と命令したであろう!」

「す、すみませ……うぅ」



 皇帝はその間に落ちた腕を拾い間合いを取り直した。



「……万神、不知火」



 ぼわっと浮遊する青白い炎が現れ、それは皇帝の左腕の傷口へと近づく。


 傷口を焼いて止血しているようだ。


 応急手当としてよく使われる手段だが、判断が早いというか迷いがないというか。


 普通の人間は腕が落とされたこと自体に多少なりとも動揺するものだが、さすがは武力で王を決めるというリベルグの皇帝なだけはある。


 禄存の巫女であるフェシィの恩寵であれば切断された腕でも治せるはずだが、焼いてしまったら切断面が引っ付くかどうかは分からないな……。


 まあリベルグの皇帝に対してフェシィを駆り出す程の義理があるかと言われれば特にそうでもないし、司教様も許可されない可能性が高いから考えても仕方がないか。



「ふむ…………。思った通り食い付きおったな。なるほど、どういった力を持っているのかが見えてきた。とはいえ腕一本、高く付いたな」

「……強がりを」

「元より左の攻撃は避けるつもりが無かっただけの事。何故か教えてやろう。蕗下衆への対処を見て、刀を使わずして斬れるのなら何故我に対してもそうしなかったのか。考えられるのは、斬れるものに限度があるか、それが回避可能な攻撃であるか、射程距離か、あるいは何か使用に条件が存在するか」



 刀を振る素振りも無く見えない斬撃を飛ばせるのなら、回避は不能と言って過言ではない。


 だが皇帝にそれをしないという事は、できないという事だ。


 しかしそれでも小人に対しては見えない斬撃を行った。


 たしかに、その差は一体何なのだろうか。



「ひとまず射程距離では無いだろうな。既に接近戦は行った。使用するに条件もあまりないように見える。そこで我は左腕を差し出したわけだ。左のみ回避を捨てるという手段を取った事で、我の回避の意思がない時のみ攻撃を受けることが分かった。……言っておくが多少目隠しをされたところで太刀筋を読めぬ我ではない」

「あの状況でも左腕への攻撃は回避できたと?」

「無論。そもそもあの状況、一歩引けば間合いから外れたであろう?その上魔人とは言えど餓鬼の腕力程度で我の剣が止められるわけあるまい。ただつまらん芝居を打ったというだけの事だ。貴様はそれに思った通り食い付いた」

「……くどい。さっさと結論を言え」

「どうも言葉にするのは難しいのだがな、分岐を作り出しているとでもいえばいいのか?そして分岐で発生した現象を此方へ持ち込むことができる。踏み潰したはずの貴様が生きているのも、分岐側で回避を行った事で、踏み潰されなかったという結果を持ち込んだのだろう。ただ分岐が発生したとて、我と貴様の実力差が埋まるわけでもなし、起こりえぬ事は依然起こりえぬ。という訳だ」



 ……つまりどういうことだ?


 分岐とはどういうことなんだ……?



「……これは素直に驚いたな。予め当てをつけて左腕を犠牲にしたと言うのか?」

「でなければあのような迂闊な行動はせん」

「いいだろう。概ね推察通りだ。認めたくはないが皇帝に成り上がるだけはある。我の能力は簡単に言えば同時に二つの行動ができる力だ。貴様は分岐と言っていたが、訂正するなら並行世界というものだ。もし自身がこうしたら……というものを一つだけ現実に投影できる。故に貴様の言う通り、起こりえぬことはまぐれでなければ起こり得ぬ。絶対に見抜けぬと高をくくっていたが、よもやそこまで辿り着くとは」

「伊達に魔族や魔人と幾度も戦ってはいない」



 分かったような分からないような……だな。


 メルカあたりなら皇帝の発言で瞬時に理解できるのだろうが、並行世界なる単語を出されても、そもそもそれがどんなものなのか自体知らない。


 とはいえ同時に二つの行動が可能というのは分かった。


 なかなか便利な能力では無いだろうか。


 つまり一人で二倍の仕事をこなせるという事だ。


 サボり魔で巫女として半人前なミザリーやナッシュに付けてほしいものだ。



「…………ラドラ、いつまでそこに居る。命令を守らなかった説教は後だ。さっさと地下へ戻れ!」

「て……テオ様……それ……が、……力が、入らなくて……」

「何っ……!?もしやこの剣か!……おい貴様、何をした!」



 魔人は少女に突き立てられた剣を引き抜き怒声を上げた。

秋ですねぇ……。

秋が一番好きです。

……これ去年も言いましたっけ?

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