牢屋
裏世界と表世界の出入りを二度繰り返すと、牢屋のような部屋が並んだ通路に辿り着いた。
タルタロスさん曰くこのあたりに強い瘴気が見えたらしい。
直線距離ではそこまでの距離は無かったらしいのだが、地下の通路が入り組んでいて何度来た道を戻った事か。
スピネもヴアルさんに近付くことは許されていなかったらしく道を知らなくて、文字通り暗中模索というか、この場所を見つけるのに思いのほか時間がかかってしまった。
「おそらくこの牢のどこかに幽閉されているのだろう。どの牢かは表世界に出てから探すしかない。探し出してスピネ君の目の届く場所へ連れ出すのは……カノン君、君の仕事だ」
「おう」
「何で私も留守番組なんだよ。濃い瘴気なんて魔族の私たちにとっては御馳走でしかないんだが」
「それは知っているが、できればこの作戦が終わった後にして欲しい。瘴気は魔族を根本的に強化させるものと知られているが、それ以外にも魔族の能力を強化させたり変化させてしまう事もあると言われている。……まあかなり昔の調査結果ではあるが。ともかくこの状況では君の能力が肝心要だ。変に強化されて使い勝手が変わってしまい、能力が上手く制御できないなんて事態になるリスクは避けたい」
「……まあ後で喰わせてくれるならいいや。準備がいいなら表に戻すけど」
「行けるか?カノン」
「うん、すぐ助けて戻って来るぞ!」
スピネの能力を解除した合図とともに、カノンは牢の並ぶ廊下を走り出した。
僕も今は「ステータスリセット」を存分に使えるから一応ヴアルさんに近付くことはできるし、カノンと一緒に行きたいのは山々なんだが、歩くので精一杯な僕は足手まといになるだけだ。
痛みはもはや麻痺してきているし、それ以上に今は猛烈に眠い。
「ようやく腰を落ち着ける事ができそうだし、ボクは今から術式の開発に取り掛かる。時間がかかるからレイ君はその間に睡眠を取るといい。スピネ君、裏世界に連れ込むのは起きているか寝ているかは特に関係ないだろう?」
「ああ、そのあたりは関係ないな。私の仕事はちゃんとするから安心して寝てな」
「……ありがとうございます。でも、外に出るまではまだ……」
「少しでも休んで気力だけでも回復させておいてくれたまえ。ボクの体では二人掛かりでも君を担いで斜面を登るのは厳しい」
そうだ、カノンはヴアルさんの方に付くから、救出後はカノンの手を借りることはできない。
変なタイミングで倒れるより今倒れておいた方がいいか。
そう思って僕は横になり目を瞑った。
……目を瞑って間もなく、石製の床から僕の体に振動が伝わって来た。
重い瞼を開いて周囲を確認する。
「おい、メメント様がこっちに気付いたのかもしれないぞ」
「スピネ君、今すぐカノン君を連れ戻して裏世界へ入るんだ!奴は道順を知っているはずだからすぐに追い付かれるぞ!この際瘴気で能力がどうこう言ってる場合ではない!」
「わ、分かった!」
スピネは返事をしながらカノンを呼び戻しにバタバタと走って行った。
途中ドザーッと盛大に転んだような音がしていた。
本当に運動能力皆無なんだろうな……、タルタロスさんの体……。
まあとにかく、ここまで来たが、メメントに気付かれてこっちに来られているならもう中止せざるを得ないのは確かだ。
牢に閉じ込められているなら外に出すのにも時間がかかる可能性が高い。
カノンには悪いがここは一旦撤退するしかないな。
ヴアルさんが無事なら後でまた来れる。
牢の位置はだいたい分かったんだし、ここから脱出する方法と逆の事をすればいいだけだ。
ヴアルさんの体調の事を考えると早く救出したいが、焦って全滅しては元も子もない。
とりあえず、まだ少しだけ眠るのは我慢しておくか……。
久々にマイクラがやりたくなってマイクラやったらマイクラやめられなくなりました。
定期的にマイクラに人生を捧げています。




