司教
「レイ、この一件が終わったら貴様の事も聞かせてもらおう。可能ならば司教様にも面会してもらいたい。司教様はステラから出る事は無いから国に来てもらう事になるが」
「面会ですか、しかも司教様とって……。そもそもステラ神治国って余所者をあまり快く思わない国だって聞いてたんですけど……」
「それもこれも司教様の影響によるものではあるのだがな。司教様は基本的に他者とはあまり関わりたがらないお方だ。それが何故か今回に限って、レイに限ってご興味を示された」
「僕に限って……」
「実際私もレイの、魔物化を克服したその力については興味が無いといえば嘘になる。回りくどいのは好かないから言ってしまうが、司教様にも、ミザリーと行動を共にしている男の異能を詳しく聞き出すようにと仰せつかっている。私がこうやって恩寵や神器についてペラペラと情報を吐き出しているのも、交渉は私の判断で行っていいという特権を賜っているからだ。わざわざ私がこんな所まで来たのも交渉のため。馬鹿の回収はついでだ」
「ミザリーさんの方がついでなんですね……」
異能……というのはつまり僕のユニークスキル「ステータスリセット」の事だろう。
恩寵もいわゆる異能のはずだが、分けて呼称しているのは何か区分だったり線引きみたいなものがあるのだろうか?
「……ていうかその、司教様って方……僕と面識無いはずですよね?」
「おそらくな」
「それなのに何で僕の事をそんなに知ってるんでしょうか……?僕がこの……異能を持ってる事を知ってる人物ってごく少数のはずなんですけど」
「そのあたりは私にも分からん。直接会って聞くといい」
僕が異世界人である事はまた別として、この「ステータスリセット」がどういう能力であるのかを知っているのはカノンとタルタロスさん、後はグランブルクに居るクラスメイトたちくらいだ。
それにこの能力は基本的に外見に変化の出るものではないし、唯一変化の生じる魔物化の解除に関しては、保持者の僕でさえつい先日知ったばかりなのだ。
その場にステラのスパイのような者が居たのか、あるいはその司教様とやらが、例えば千里眼のような恩寵でも持ってたりするのだろうか。
実際千里眼を持っていると仮定するのならば、アリオーシュさんがミザリーさんとはぐれた時に一度ステラに戻って居場所を探し出してもらいに行ったという話とも辻褄が合う。
となると、今現在も覗かれていると想定していた方がいいのだろうか……。
……いや、想定したところでもう手遅れではないか?
ダメだ……貧血であんまり頭も回らないし、タルタロスさんの助けが欲しい……。
そう言えば、あっちの方は上手くやってくれているだろうか?
今のところタルタロスさんからの連絡は無い。
連絡が無いという事は順調か最悪の状況かの二択だが、こればっかりはもう祈るしかない。
あの二人ならきっと大丈夫だ……。
アリオーシュさんもこの一件が終わったらと言ってるし、とにかく今はあまり受け答えをしない方が得策だろうか……?
「……分かりました。今別行動している僕の仲間と合流できたときに話しましょう」
「ああ、助かる」
「ステラの司教様と会ってほしいっていうのはその時に決めさせてください。僕だけの問題ではないので。……もし行くってなったら仲間も連れて行くことになると思いますが」
「仲間を連れて来るぶんには問題無い。ただ、おそらく司教様と直接面会できるのはレイだけだろう」
行くとなったら少なくともカノンは付いて来るはずだ。
そうなったらハインリーネ様やリーヴァ様にも確認を取らなきゃいけない。
なんてこと考えていると、倒木の山の向こうからミザリーさんが慌てた様子で戻って来た。
……分身の魔族を大勢引き連れて。
「うおおおおい!二人ともヤベーのがこっち来てるぞ!!?」
「敵を引き連れて戻ってくるな馬鹿者!」
「それどころじゃねぇって!」
「とにかくその魔族はそこで食い止めろ!やべーのとやらが目視できてから次の指示をする!」
そう言われミザリーさんは倒木の山で戦闘を再開する。
討ち漏らしたやつはアリオーシュさんが片付ける。
そして、しばらくしないうちに森の奥の方から、本当にヤバそうなものが顔を覗かせたのだった……。
shapezというゲームを発見し衝動買いしてしまい、またしても時間を溶かされまくってます。
モンハンのアプデも気になるし、自分も100人くらいに分身したいものです。




