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338/424

役者

 ここまで来て女性に守られるという不甲斐ない状態だが、事実これ以上戦闘を行うのは死に直結しかねない。


 貧血でフラフラするし小突かれただけで倒れる自信がある。


 アリオーシュさんはそんな僕に足並みを揃えてくれている。



「私が姿を見た魔族は今ミザリーと戦っている魔人とレイが戦っていた魔族の2体だ。それに加えてここへ来る途中南西の方に嫌な気配を感じた。ひとまず近付かないよう迂回してきたのだが、その気配が件の呼び戻したという魔族のものだというのなら警戒しておかなければならない」

「嫌な気配……?」

「ただの勘だ、真に受ける必要は無い」

「い、いえ、勘も馬鹿にできないので……」



 ずっとカノンの勘に付き合ってきた僕だ、カノンのはちょっと並外れていると思うが、それでも実力者のそういう判断には耳を傾けた方がいいと知っている。


 つまり皇帝は遺跡より西側で戦っていた訳か。


 皇帝レベルの人を足止めできるほどの実力、あるいは能力の魔族が弱いわけがない。



「西から来ると想定するのならば東に退路を確保しつつ相手をすることが重要だろう。あの馬鹿はそのあたり言ってもすぐ忘れるだろうが、元々私が戦術的な面を補佐するために組まされている。レイはミザリーではなく私の判断を優先して動ように」

「はい、分かりました」



 しばらく進むと、連続する金属音がより明確に聞こえてくる。


 やはりというか、まだミザリーさんと魔人との戦闘は続いていて、ミザリーさんは物量に物を言わせ攻撃を続けているものの、相手もそれを刀一本で捌き切っている。


 使い物にならなくなった武器は即座に捨てられ新しい武器が出現する。


 あの空間に割り込むのは……僕なんかには至難の業だろう。


 しかしアリオーシュさんは歩みを止めずに、背中に背負っていた盾と矛を手に持ち、僕に「離れないように」と指示する。



「アリオーシュさん、あの魔人の刀……鉄くらいなら簡単に斬ってくるので、盾が機能するか分からないですよ」

「見れば分かる。だが、いくら物理的に切断力のある太刀筋だろうと、私はその太刀筋諸共貫く」

「た、太刀筋諸共ってどういう……」

「それについてはまあ、ひとまずこの場を切り抜けたら話すとしよう」

「あぁ……はい、そうですね。それとあの魔人、斬撃を飛ばす技も使ってくるので気を付けてください」

「そうか、承知した」



 アリオーシュさんはそのまま歩調を変えず、魔人にゆっくりと近づく。


 魔人も僕たちが近づいて来ていることに気付いているだろう、おそらく向こうも警戒している。


 ミザリーさんも気付いているようだが、言葉を交わすことなく戦い続ける。


 そしてアリオーシュさんはおもむろに矛を突き出した。


 僕には決して威力のあるような突きには見えなかったのだが……いや、僕が矛という武器の強さを知らないだけなのかもしれないが、魔人はその矛を刀で受ける事無く身をよじって躱したのだった。


 そしてミザリーさんの追撃はこれまで通り刀でバッサリと両断された。


 一体何の違いがあるというのだ……?



「……三人目、か。まあよい、いくら数が増えたとて問題ではない。こちらも丁度役者が揃ったところだ」



 その言葉の直後、どこからか足音が複数聞こえてきた。


 いや、複数なんてレベルではない、軍団と言って差し支えないくらいの数に聞こえる……!



「お待たせしましたテオ様」

「遅い。我が呼んでいるのだ、もっと急がぬか」

「いや……あの男止めるのどれだけ大変か分かってますか?今も俺を追って最後尾が潰され続けてるんでむしろ助けてくださいよ」

「実際そのために呼んだのだ。貴様は我と替わり、奴らの相手をしろ」



 現れたのは複数の……全く同じ容姿の男だった。


 異様なのはそいつの右腕、ぬいぐるみの腕をもぎ取ってそのまま縫い合わせたかのような、機能性の悪そうな右腕だった。


 そしてその右腕以外であれば、僕はあの魔族に見覚えがある……。



「「お、お前……あの時の!」」



 相手と目が合ったと同時に同じ言葉を発した。


 そう、あの分身する能力、切り落とされた右腕、間違いなくケント村襲撃の時にカノンが斬った魔族だったのだ。

桜花賞はコナコーストに賭けてました。

最後の最後にリバティアイランドに差されちゃいましたが良い走りでした。

次走もコナコースト買います。

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