閑散
「よし、着いたぞ」
僕たちは3日目にしてようやく目的地に着いた。
僕の後ろに隠れていたカノンは恐る恐る周囲を確認する。
「ふぅ……、水の中潜るなんて二度と御免だな!」
「残念ながら帰りもだぞ」
「あ゛~~っ!」
カノンは絶望の形相で頭を抱えた。
こればっかりは仕方ない……。
攻略するとショートカットが開通するようなRPGじゃあるまいし。
帰りも同じように目を伏せながら歩いてもらおう。
「まあ今は帰りの事は忘れて依頼に集中しようか」
「う~、わかった、とにかくここの魔物全部倒せばいいんだな?」
「いやそんな単純な事じゃ……」
いや、そんな単純な事なのか?
何かしらの原因で魔物が増殖してるなら、魔物を全部倒してから原因調査でもいいんじゃないか?
仮に原因が何かの魔物の仕業だったとしても、討伐してしまったならそれで原因解決だ。
カノンの負担がとんでもなさそうだが、カノンなら普通に全部倒して帰ってきそうではある。
この島の敷地もそこまで大きくはなさそうだし、割と現実的な策かもしれない。
「……よし、全部倒す方針にしよう。ただ何があるか分からないからちゃんと二人離れないように行動しよう。……ってもう居ねぇ!!?」
カノンは答えを聞く前に颯爽と魔物狩りに行ってしまったようだ。
まったく……せわしないったらないが、これがいつものカノンだ。
調子が戻って来たようで良かった。
僕はとりあえずカノンを探しながら外周をぐるっと回ってみることにした。
もちろん魔物の集団が出て来た時、すぐに水の中に逃げるために。
意外と魔物に遭遇すること無く外周は見て回れた。
川岸から5mくらい内側からは森林になっており、おそらくこの島全体が森林に覆われているんだろうことが窺える。
時々中の方からカノンの掛け声が聞こえる事から、少なくとも森林の中には魔物が居るのだろうが、魔物の発生源と言われて来たこの場所で全然魔物に会わないのは少し違和感がある。
僕は意を決して森林の中に突入することにした。
森林の中は閑散としていて、所々魔物の死骸が落ちている以外何の異常も見当たらなかった。
死骸も全部首を斬られているので、ほぼ確実にカノンの仕業だろう。
想像以上に何もない。
まあゆっくり調査できるならそれに越したことはないが。
「……ん?今何か居たような……?」
一瞬だったから見間違えかもしれないが、木陰で何か動いたような気がする。
小動物か何かか?
一応魔物が襲ってきても大丈夫なように構えていたが、一向に襲ってくる気配がないので、ゆっくりと近づいてその場所を確認する。
「……やっぱ気のせいか」
そこにはやはり何もなく、僕は早々に踵を返した。
その後も魔物が居ないか、あるいは依頼の件の何か手がかりがないか探しながら歩いていると、相変わらずどこでも走っているカノンと鉢合わせる。
ズザザザザと僕の前でブレーキをかけ、僕の靴に砂がかかる。
「首尾はどうだ?」
「私は攻撃一筋だ!」
「その守備じゃなくて……」
順調か?と。
「なんか魔物居るはずなのに探しても全然居ないんだけど!!?」
「うーん、それなんだよなぁ」
ギルドに「全然魔物居なかった」って報告して依頼成功扱いになったりしないだろうか?
なんて頭をかしげていると……。
「ひゃっ!?」
カノンが聞いたことの無いおかしな声を上げた。
今日コロナワクチン打って来たので、体調次第ですが明日の投稿は休むかもしれません、ご了承くださいませ。