風切
「いいかレイ、さすがのアタシも複数相手にすることになったらお前の事は気にかけてやれねぇぞ?自分の身は自分で守れよな?」
「分かってます。僕の事は気にしなくて大丈夫なので好きなようにやってください。ただ、押し引きの判断だけは僕にさせてください」
「ええ~、好きにやらせてくれるんじゃねぇのかよ?」
「タルタロスさんとも連携取ったりしなきゃいけないので、そこをなんとか……」
「しゃあねぇなぁ。だったらその前に全部ぶっ飛ばしてやるぜ!」
意気込みは良いが、そう簡単に行くものでもないだろう……。
僕が偉そうに言えた立場でもないけど……。
基本的な戦略としてはカノンと組んでいる時と同じく、ミザリーさんが前衛、僕が後衛に回る感じでいいはずだ。
初めて組むミザリーさんとうまく連携が取れるかは怪しい所だがとにかくやってみるしかない。
「……索敵魔法に反応がありました。」
「よっしゃ、アタシらは先行くぜ。タロちゃんたちは間空けてついて来な。アタシらが敵とどったんばったんし始めたらお前らはその隙に潜入ミッション開始だ」
「どったんばったんって……」
「おお!せんにゅーミッション!なんかかっこいい!」
「カノン、言っとくけど遊びじゃないからな?」
「わかった!」
「……本当に分かってるか?」
「まかせろ!ちゃんとせんにゅーミッションしてヴアルを助けてくるぞ!」
変にテンション上がっちゃったな……。
暴走しないか少し心配だ。
まあでもおかげで目が覚めただろうか?
ここからがついに本番だ、僕も気を引き締め直し、意気揚々と先に行こうとするミザリーさんの後に付いて行く。
「じゃあカノン、タルタロスさん!そっちは任せました!」
「おう!」
「ああ」
そうして僕は2人と別れ、ミザリーさんと一緒に敵本陣へと走り出した。
いつでも敵が現れていいように準備はできている。
剣も魔法も魔術も、秘策として用意した瘴気の爆弾も、いつでも取り出せる状態だ。
そして数十メートル置きに索敵魔法を発動し状況の把握をする。
感知した熱源はまだ先の方だが、ようやく遺跡の建造物の残骸のようなものがちらほらと現れ景色が変わり始めた。
それとほぼ同時に、何か違和感を感じて僕は足を止めた。
そんな僕に気付いたミザリーさんも立ち止まる。
「どうしたんだレイ?敵はまだ先なんだろ?靴紐でもほどけたか?」
「違います、ちょっと静かにしててください」
「あぁ!?……っ!!」
ミザリーさんもそれに気付いたようで、僕と同時に回避行動を取った。
間一髪回避に成功し、ズドンと重い音と共に一瞬前まで僕が居た場所に土が舞い、その場所に何かが飛来してきたことが分かる。
違和感の正体は音だったようだ。
聞こえるのは自分たちの足音と、禿げた木の枝先が風を切って鳴らす鋭い音だけだったこの閑散とした森の中に、それとは違う鈍い風切り音が混じって聞こえた。
威力はメメントさんの時ほどではないようだが、それでももし直撃していたらタダでは済まなかっただろう……。
僕は何が飛んできたかも分からないまま反射的に戦闘態勢を取った。
特に得意とかではないんですけど、数式を見るのが好きなんですよねぇ。
なのでYoutubeとかで数学系の動画をよく見てます。
おかげで素数とかの事ばっかり考えたりして仕事が滞ってしまったりします。
ていうか数学に限らず雑学系が大好きです。




