親切
「お、メメントもタロちゃんももう戻ってんじゃねぇか」
「すみません何も言わず離れちゃって」
「そうそうそれがよ、アルケーのヤローが何しに来たのかまた現れやがってよ、さっきまで追っかけ回してたんだ」
「タルタロスさんの方の話も終わった感じですかね?」
2人並んで焚き火の前に居るし、初めて顔合わせした時の警戒度は解消されたのだろうか?
それにしてもタルタロスさんの様子がおかしいような……。
膝を抱え、目も俯きがちだ。
やっぱり解消されてはないのか?
「……タルタロスさん?」
「あ、あぁすまない……考え事をしていた。大丈夫だから、気にしなくていい……」
「本当に大丈夫です?」
「さっきまでわしと大事な話しとったからの!その事じゃろう。のう?」
メメントさんはタルタロスさんの肩を寄せてそう言う。
タルタロスさんは突然肩を組まれたことに一瞬ビクリとしていたが、最初と違って避ける様子も振り払う様子も無いし、そのくらいの仲にはなったという事か。
「ほれしっかりせいタルタロス、これから本拠地に乗り込むんじゃろう?」
「……」
「タロー大丈夫か?」
タルタロスさんは何か言おうと口を開けたように見えたのだが、返事などはせずにそのまま口を閉じたのだった。
同じ魔族でもメメントさんとリタさんで結構対応が違うな。
瘴気の濃度を視覚的に知れるできるタルタロスさんだからこそ、やはりまだ警戒心が上回るのだろうか。
カノンは少し心配そうに近寄り、同じように膝を抱え並んで座った。
「……わしはそろそろお暇しようかの。おぬしらがあやつらに挑むと言うなら止めはせん。わしの友人同士での争いなぞ珍しいものでは無いからの。何故か知らんがアルケーが警戒しとったおぬしらなら、この作戦を任されとるあやつと殺り合って勝てる可能性もあるかもしれんじゃろうな」
「あっ、帰っちゃうんですか?」
「おいおい、もうちっと情報置いてってくれよメメント~」
「なんじゃあ欲しがりじゃのう。わしはどっちの味方をするつもりもないんじゃが……。とはいえ、どうせアルケーのやつがおぬしらの話を既に持ち帰っとるじゃろうし、アルケーが来たのもわしのせいでもあるしの。そのあたりはフェアにしとくべきじゃ」
「おっ!ってこたぁ敵の事教えてくれんのか!」
「まあアルケーが許すじゃろう範囲での」
「そいつぁ助かるぜ!さすがメメちゃん!」
「ありがとうございますメメントさん!」
やっぱりメメントさんは良い人だ。
顔が広い分立ち位置とか見極めるの大変そうだけど……。
そんなメメントさんの親切で僕たちはいくつかの情報を教えてもらった。
まず、敵の総数は二十数人だそうだ。
ケント村襲撃の時よりはかなり小規模だ。
それと、現在兵のほとんどが皇帝のために駆り出されていて現在本陣が手薄らしいが、これはアルケーが僕たちの事を知らせてしまっているのであれば、おそらく一旦兵を引き上げるだろうからそのつもりで動かなければならない。
最後に、今回の作戦のリーダーがレオという名の、大きな牙を持ち高身長でもっさりとしたブロンズカラーの長髪の男だという。
さすがに相手の能力とかは教えてくれなかったが、大将首を事前に知れたのは非常にありがたい。
僕たちはメメントさんに礼を言い、また今度一緒に食事をしようと約束した後、メメントさんは僕たちに背を向けどこかへ去ってしまった。
その背中が見えなくなるまで、僕たちは手を振って見送ったのだった。
良いステーキ食べたい。
2ポンドくらいの。