習性
「チッ!どこ行きやがったあのヤロー!!!」
葉の無い木々だらけで閑散とした森の中にミザリーさんの声が響き渡った。
そのせいで他の魔族やら魔物やらが寄ってきたら面倒なので、声を抑えて欲しいとジェスチャーでミザリーさんにお願いする。
「逃げられましたね。……しかし何で突然また現れたんですかね?」
「知らねぇよ、おちょくりにでも来たんだろ?」
「意味も無くそんなことしますかね……?ていうかそんな事より、メメントさんたちに何も言わずに来ちゃいましたし早く戻らないと。どうだカノン?近くに魔族は居そうか?」
「ん~、たぶんいない」
「そうか、眠かったらまた少し寝てていいぞ。僕がおぶって行くから」
「や、ヴアル助けるまで頑張る」
そうは言うもののもうだいぶ眠そうだ。
既にうつらうつらとし始めている。
まあカノンなら敵が近づけばしっかりと覚醒するだろうから心配はない。
もはや目を閉じながら歩いているカノンの手を引きながら、さっきまで居た焚き火の所へ向かって歩く。
「それよりレイ~、メメントって味方なんだろ?なんで敵のとこにいたんだ?」
「僕にも理由は分からないけど、あの人敵味方とか関係なくあんな感じで接する人だから、友達作りに行ってたとか遊びに行ってたとかじゃないかな?」
「そうなのか」
「あいつは人が居る場所に群がる習性があるからな」
「そんな蛍光灯に群がる蛾みたいな言い方……」
「あん?ケーコートーってどういう意味だ?」
「あー……いや、なんでもないです」
「なんだよぉ、教えろよ~」
「光る刀みたいなやつですよ」
「光る刀ぁ!?だはははは!刀が光ってどうすんだよ!」
そうだった、この世界には電気を使った機器が無いんだった。
迂闊な事言って僕が異世界人だとバレると面倒くさい。
一応僕たちより前にも異世界人は何度も召喚されているらしいし、もしかしたらその人たちがそういった道具の情報だったりを残しているのかもしれないが、魔術が電気の役割を担っているこの世界ではなかなか発達しない技術なんじゃないだろうか。
おかげでコンピューターゲームの無い世界なわけだが。
……魔術でゲームとか作れたりしないんだろうか?
僕も多少魔術は習ったけど、少なくとも僕には無理だ。
「とにかく戻りましょうか。せっかくメメントさんが会いに来てもらってるのに悪いですし」
「おう」
「うん」
何故か再び僕たちの前に姿を現した仮面の魔族、アルケーを追うミザリーさんをさらに追ってここまで来てしまったが、メメントさんたちを待たせてしまっていたら申し訳ない。
森の中をあっちこっち駆け回ったが、戻る方向なら分かる。
地属性魔法「グラウンドディテクション」で焚き火の位置を特定すればいいだけだ。
なんだかアルケーのせいで変に時間を食ってしまったな……。
「こっちです」
僕は焚き火の方へ2人を先導して歩き出した。
あ~パーカー姿のIA超かわいい