無双
「見たかレイ!この森のボス倒したぞ!!!」
カノンは茂みに隠れていた僕にそう声をかける。
ひっそりと観戦していたことはバレていたようだ。
「お、おう……、なんか思ってた以上に凄くて驚いたよ……」
「えへへぇ、そうかぁ?」
と、照れくさそうに頬を掻く。
ゴーレム戦の時から相当な身のこなしだったが、ちゃんと戦うとここまでサーカスじみた動きができるのか……。
それに道中あれだけの敵と戦って、傷一つどころか返り血一つ浴びていない。
どんな戦闘経験を積んだらあんな戦い方ができるようになるのか見当もつかない。
なんて思考の結果、凄いという語彙力の足らない言葉しか口から出なかった。
「どれだけステータスを上げたらそんな動きができるんだ……?」
「わかんないけどいっぱい頑張ったらできるぞ!」
カノンも語彙力が足らなかった。
「まあでも、今回の目的はボスを倒すことじゃなくて調査だから、まだ依頼が終わったわけじゃないぞ」
「じゃあ私は次何すればいいんだ?」
「うーん……」
魔物の大量発生の原因を調査するにあたって、必然的に魔物の多い場所に行く必要がある。
それまでの魔物の掃討をカノンにやってもらうのがいいだろうか。
現在地はまだ目的地から少し離れている。
この場所でこれだけの量の魔物が居るならこの先さらに多くなっていくわけだ。
多分僕の手には負えない。
反面カノンはまだまだ余裕そうだし、とりあえず戦いは任せて進もう。
僕はその代わり引き際を誤らないようにしなければ。
「ここから目的地まで多分3㎞くらい、それまでもっと魔物が出てくると思うから、とりあえず出てきたら全部倒していってもらえる?」
「わかった!」
「疲れたら休憩にするから言ってくれよな~」
なんて言ってる間にカノンは既に走り出していた。
仕方なく僕も小走りで追いかける。
正直普段歩かない結構な距離を歩いてるせいで多分僕の方が疲れてるが、今後カノンと行動を共にするならこれに慣れておく必要もある。
まあダメそうだったら残りのステータスポイントをVITに割り振ってドーピングすればいい。
いやはや便利な機能だ。
この世界を作った神様か何かはゲーマーなんじゃなかろうか。
カノンは道中の魔物を次々と薙ぎ倒しながら進む。
どれも急所を的確に狙い一撃で仕留めている。
森の中を縦横無尽に駆け回るその姿は無双といって差し支えないだろう。
リッテさんは金等級の実力はあると言っていたが、ともすれば白金等級はさらにすごいのだろうか……?
ていうかこんな人たちが居ながら異世界人を召喚しないと魔王に勝てないって、魔王どんだけ強いんだよ。
そもそも僕たちはカノンより強くなれるのか自体疑問でもある。
いくらステータスで強さを上乗せできると言っても、既にこの世界で何年も生きてる人に追いつくことができるのだろうか。
目安程度にあとでカノンのレベルを教えてもらおうか。
これだけ魔物を倒してるならレベルも相当なものだろう。
ちなみに戦闘に参加してないと経験値は入らないらしく、カノンのおこぼれに与れるなんてことはなかった。
次の依頼はレベル上げも兼ねたものでも選ぶことにしよう。
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