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寝床

 日差しに刺激され目を醒ます。


 いつもの窓から差す朝日ではなく、天から直接顔面に直射日光が当てられている。


 あまり気分は良くない。


 今思えば土や虫を我慢して木陰で寝た方が良かったのかもしれない……。


 鬱陶しい日差しに背を向けたくて寝返りを打とうと思ったが、どうも体が重くて思ったように動けない。


 やはり昨日の過度な運動が堪えられなかったのだろうかと思ったが、原因が違った事にすぐ気付いた。



「あっ……、えっ……!?」



 僕の体の上に目を向けると、青髪ツインテールが覆い被さるように乗っかっていた。


 身じろぎした拍子に、押し付けられている胸の感触が、寝息に合わせて動く細身な腹部の感触が、体勢を維持するために僕の腰回りを挟み込んでる筋肉質な太ももの感触が、驚きで覚醒した脳に鮮明に伝達される。


 もはや言うまでもなく、カノンが僕の上で俯せになって寝ていたのだった。


 ……まずい、……構図がこの上なくまずい、この状況が誰かに知られた場合の社会的地位とか僕のアレとか色々まずい!


 こちとら思春期の男子高校生だぞ!?


 そして退かそうにも寝起きで力が入らないしカノンが踏ん張り強いしで上手く行かない。



「か……カノン!ちょっ、カノン!カノンさーん!!?」



 カノンを起こそうと右手で肩を揺するが、ちょっとこの揺らし方は僕にとってよろしくない……。


 カノンには悪いが背中をベシベシ叩いて起こす。



「ん゜あ゜あ゜あ゜あ゜あ゜ァ゛…………」



 叩いた振動に合わせて妙な唸り声を上げながら顔を上げる。


 寝惚け眼を擦り、下敷きになっている僕を見る。



「め……目が覚めたか?」

「ふあぁ~~~…………おはょ~~……すやぁ……」

「二度寝しないで!!!」

「んん~……、ん、起きた……」

「おい!僕の服で涎を拭くな!!!」



 その後もカノンを退かすのに四苦八苦し、ようやくちゃんと目を覚ましたところで退いてもらえた。


 朝から心身ともに疲れた……。


 カノンはおそらく僕の気なんか知らずに隣で背伸びをしている。


 そんな無防備さで本当に今まで大丈夫だったのか……?



「カノン……、人の上で寝るのはやめてくれないか……、色々大変だったんだぞこっちは……」

「いやぁ、夜起きたら地面が冷たくて、温かい所探してたら丁度そこにあったから」

「僕は敷布団じゃないんだぞ……」



 せめて荷物の上とかにしてくれ。


 これからカノンと旅をするために寝床をどうにかするのが最優先課題かもしれない。


 あまり続けられたら僕の理性が危うい。


 自分の事だから分かるが絶対いつか魔が差す。


 カノンの反応を見る感じ単純にそういうのに無知なだけだ。


 一般常識的な部分もこれから教えていってあげないとか……。



「そうだ!夜中に食料とれたから焼いて食べるぞ!」



 カノンは木々の生えた方を指差した。



「夜中にとれたって……?」



 カノンが示した方を見てみると、そこには動物の頭が3つ転がっていた。


 妙に発達した牙を持ったタヌキのような生物だ。



「魔物……か?」

「うん、夜中に襲ってきたやつ、レイも1個食べていいぞ!朝はちゃんと食べないと力が出ないからな!」



 僕はその時、食料が増えた喜びよりも後悔が勝った。


 夜襲を全く考慮に入れず僕だけぐっすりと寝てしまっていた。


 そもそも街を探していたのも魔物から身を守るためだったのに、どうして頭からすっぽ抜けていたのか。



「……すまん、夜中に襲撃があったなんて全然気づかなかった」

「なんで謝るんだ?たまたま起きたら襲って来てたから斬っただけだぞ?」

「いや、僕も警戒しておくべきだったなって」



 カノンに世話になってるだけじゃ良くない。


 冒険者なんていう危なそうな職業になったんだ、気を引き締めないとそもそも自分の身すら守れないかもしれない。


 カノンを守りたいと思ってパーティーを組んだのに、カノンに守られてたら元も子もないじゃないか。


 過ぎたことは反省するしかない、今はカノンの働きに報いるためにできることをしよう。



「じゃあ肉の下処理とかするからから、カノンは……薪になりそうなもの探してきてくれるかな?」

「分かった!!木をいっぱい集めてくればいいんだな!」



 元気よく返事すると聖剣を担いで森林の方へと走って行った。


 多分何か仕事あげないと落ち着いてられないだろうし、めんどくさい下処理は僕がやって体力の要る薪集めはカノンにやってもらう事にした。

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